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参謀の居ない作戦会議

「傑さん! どうでしたか!?」

「トシが......トシが食われた!!」


小日向さんが驚きで物も言えないという風に口をパクパクさせていた。顔から血の気が引いていくのが見ていて良く分かる。


「だ、大丈夫! まだ死んで無い......はずだから!」

「そ、それって大丈夫なんですか!? 早く助けないと死んじゃうかもしれないってことですか!? というか食べられたってどういうことですか!? ど、どど、どうすればいいんですかっ!!」

「落ち着いて! 俺もだけどいったん落ち着こう! 場所変えよう! ここじゃちょっとまずいかも!」


周りが少しずつこちらが慌てているのに気づき始めている。ここでしていい話ではないような気がして場所を移すことにした。


--------------------


俺達は体育館裏に移動した。前にここで帽子をかぶった男と対決したのを思い出す。


「食べられたってどういうことですか?」

「あー、それは一種の比喩表現で......」


俺は今までにあったことの詳細を話してトシが渡してくれた手帳を二人で確認する。

と言っても書いてあることは

・紫の能力は吸収と放出

・紫の中に収容されても形状は変わらない

・ワカメ女の能力は放出か空間断絶か(要検討)

の三つだけだ。

トシのネーミングセンスに小日向さんが文句を垂れていた。何でも女の人の容姿をいじるのはいけないとか。でもそんなことを気にしている暇はないと自分でも言っていた。


「にしてもこれだけの情報でどうにかしろって、無理だろ。トシじゃないんだから。」

「でもしなきゃ助からないでしょう。」


小日向さんが苛立っているのを見て、自分が苛立っていることに気づいた。自分に余裕がなくなっているらしい。


「何か書いてあるみたいですよ! ページの端の方です!」

「マジ!?」


小日向さんが指さしている方を見ると『あめひ』とページの端に崩れた文字で書いてあった。おそらく咄嗟に書いたことなのだろう。だとしたら重要なのか?


「あめひ、って何でしょう。」

「雨の日とか?」

「それはどうしようもないでしょう。」


即答でばっさりと意見が切られるのは結構辛い。咄嗟に思いついたことなので普通に否定されても仕方ない。


「そもそも助けるためにはどうしなきゃいけないんでしょう?」

「相手の中に入り込んで助け出すとか?」

「どうやって出てくるんですか。」


確かに言われてみればそうである。相手を殴ったら吸収したものが出てくるという訳でもなさそうだし、能力の発動を止めればもとに戻るのかもしれない。でも発動の止め方が分からない。


「相手の中に入ってるってことは相手の能力を発動してるってことだろ? ということはトシはあの紫色の塊に変身してるってことなのか?」

「その可能性が高いですね。中側から中の物を吸収しているってことになるんですかね? ん?」

「なんだかよく分からなくなってきたね。」


小日向さんが首を傾げている。ちょうど俺も良く分からなくなってきたところだ。トシの能力がどうなっているのかはトシにしか分からない。だからそのことを考え始めるといろんな結果が予想出来て余計頭がこんがらがる。


「私たちの能力さえ発動させてしまえば、それは関係ないんじゃないですか?」

「それもそうだね。」


どんなことが起きているのかは知らないけれど、問題なのはそこではない。何かこうやって考えているとトシのポジションを奪ったような気になってしまうけれど、トシだったら多分もっとすばやく思いついているのだろう。


「自分たちが出来る事って何でしょう?」

「えっと......俺は戦うことかな?」

「もっと色々です!」


もっと色々か。トシの能力を書き換えることは小日向さんにも出来るし、俺だけができることと言えばやっぱり戦闘しか思い浮かばない。


「ごめん。やっぱり思い浮かばないや。」

「佐々木君ならまずそこから考え始めるかもって思ったんです! 自分たちの持っている駒はどうとか言いそうですし!」

「トシなら言うかも。」


自分達が駒扱いされていると思うと、なんだかトシが悪役の様にも思えてくるが、戦略的に言えば多分正しいのだろう。


「もしかしてこの『あめひ』って雨姫さんのことじゃないか?」

「うたかちゃんですか? 可能性はあるけれど、でもどういうことでしょう? うたかちゃんのチートは確か......」

「空間にこもるチートだっけか。で、トシはあの時一緒に閉じ込められていたんだったよな?」


あの時というのは雨姫さんと会った時のことだ。実際に遭遇したのはトシだけだったが、あの後てんやわんやしていたのは俺達も同じである。


「もしかして雨姫さんの能力ならあの中から救い出せるってことなのか?」

「あっ!!」


小日向さんが何かを閃いたように大きな声を発した。


「もしも雨姫さんのチートを発動できれば、佐々木さんはその中に取り込まれるのであの中から救い出すことが出来ます!」

「そっか......」


言われてみればそうだ。問題はどうやってトシに発動させるか。いや、そもそも......


「そもそも雨姫さんって任意でチート発動できたか?」

「佐々木君がコントロールできるように指導してるって聞きましたけど、どうなんでしょう。」

「......できる。」


その声は俺達の視線の少し下の方から聞こえた。


「びっくりした! いつからいたの? 雨姫さん!!」

「......むねとしが食べられたところから。」

「最初からじゃん!」


相変わらずツッコミどころが多い子だ。


「チート使えるようになったの?」

「......落ち着いてやれば出来る。......やればできる子なの。」

「偉いなー、雨姫さんは......って俺はお母さんか!」


盛大なノリツッコミである。雨姫さんがドン引きした表情を見せている。小日向さんは苦笑いだ。なんで俺がトシのやるべきことをしているのだろう? トシは大変だったんだな。


「とにかくやってみよう! 俺達はトシじゃないから、全部考えてから行動するなんてことは出来ない!」

「そうですね。早くしないと死んじゃうかもしれませんし。」

「......行こ。」

「あ、そうだ。雨姫さんはここでチートを発動しておいてくれるかな? その後は俺達が何とかするから。」


雨姫さんにそう指示を出すと了承しながら地面に座禅を組み始めた。

何をしているのかと思い始めた瞬間に姿を消してしまった。あれがあの子の言う、落ち着いた状態だったのかもしれない。


「トシ......どんな訓練させてんだ?」

「さぁ。でも発動できるようになったんですね。凄いです。」

「なんかもうツッコむ気力すらなくなってきたよ。」


その時、敵の姿が現れた。あの時見た女の姿だ。


「さぁ。ここが正念場だ!」

「頑張りましょう!」

果たしてそう簡単に計画が上手くいくのでしょうか?

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