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チーター達が語り合うことはない

「でもどうやって探すんだ?」

「周りを良く見るんだ。何か違和感があるはずだ。例えば体の一部が無い人が来客ようの場所に居るかもしれない。」

「でも攻撃じゃない可能性が高いんだろ? 敵意が無いのに見つかるのか?」

「見つけるんだ。」


俺はキッパリとそう言い切った。

チート使いの位置を探し出すだけなら、傑に少しずつ距離を取ってもらいながら発動のタイミングを調べればいい。常時発動型ならそれが出来る。

だが相手の能力がまだ何なのか分かっていない。それは少しリスキーすぎる。あの時は腕だったが次はどこが消えるか分からない。


「それに相手がもしも敵だったとしたら相手から近づいてくるはずだ。」

「あー、前の時もクラスまで来てたしなぁ。」

「何らかの方法で俺達の場所を探査しているという可能性が高い。」

「だったら不意打ちを受けないように気をつけなきゃいけないのか。」

「それが最優先だ。」


不意打ちを受ければひとたまりもないだろう。傑よりも近くに相手が来てもダメだ。すれ違うふりをして近づかれたらその瞬間にダメチートが発動する。相手から近づいてくるということは何か攻撃方法も持ち合わせているはずだが、あいにく俺はこのチートの悪い面しか見ることが出来ていない。

だから俺は今のままでは相手の能力を使いこなすことは出来ない。近づくことすら許されない。


「これだからダメチートは。」

「そのチートを使いこなせるのはトシしか居ないもんな。」

「まだ使いこなせてない。」


使いこなせたらこんなに苦労をするわけがない。小日向さんみたいに時を止めたり、傑みたいに体を強く出来たり、雨姫のチートは......あまり使いこなせる自信がないけれど、それでも俺のよりは使い勝手がいいはずだ。何せ使いたいときに発動できるのだから。


「トシ。」

「......何だ。」

「見つけた。」


緊張感が一気に張りつめる。近くに居るという情報と一緒だったので気取られないように動揺を表に出さないよう気を付ける。


「どこだ。」

「アレだ。確証はないけど多分そうだ。」


傑が目線で対象を伝える。

その先に居たのは黒髪の女だった。ワカメのような髪質でかなりべったりとしている。体から異様な雰囲気を放っている。だが部位欠損はない。

カバンを大事そうに抱えている。決定的ではないが明らかに怪しい。何より警鐘が俺の中で鳴り響いて止まない。


「あ。」


目が、合った。

ワカメ女がニィッと笑う。おぞましい。とてもおぞましい。背筋が凍るなんてものではない。動けない。

威圧が俺を動けなくさせて居る。おぞましい殺意が俺の体から動く気力を奪ってしまった。

こんなことで動けなくなってしまっても良いのか?


カツカツとピンヒールが音を鳴らす。

土の上だというのに感覚が鋭敏になっているせいか、妙にピンヒールの音だけが耳に届く。

俺は一歩後ずさりした。

相手が何をしてくるかもわからないのに立ち向かう力なんて俺にはない。


「殺害 対象 発見」

「ダメよ。捕獲だって言ったじゃない。」


カバンの中からソフトボール大の何かが顔をのぞかせた。いや、あれが顔と呼べるのかを俺は判別できない。

青紫と赤紫の絵の具を無造作に塗りたくったようなムラのある地肌に、人間が持つソレと同じような眼球と口がまるで福男でもするかのように無造作に貼り付けられている。

そのソフトボール大の物体からは細長い触手のようなものが生えていた。あれを操ってカバンの中から顔を覗かせているのか?


あれがチートの使い手なのだろうか。

俺の腕が消えたのは能力の一部だとは思っていたが、俺はアレになる寸前だったのか?急に吐き気がした。見てはいけない深淵を覗き込んだようなそんな気がした。


phase(フェーズ)2『王の盾(ロイヤルナイト)』」

「あら、すごいわね。貴方。やっぱりここに来て正解だったわ。すごく楽しめそう。」


傑の体が人間ならざるサイズに膨らむ。周囲の人の中にはこちらの様子に気がつく人も居るみたいだが気味悪がってここまで近寄ってこない人が大半だ。

事態が大事になる前に片付ける必要もあるし、それよりもまず自分の身の安全も守らなければならない。

……考えがなかなかまとまらない。


「トシはゆっくり考えてろ!! 時間稼ぎはこっちに任せろ!」

「いや、傑、狙うならアイツだ。」


俺は紫の玉を指さす。


「でもアイツに攻撃を当てるのはかなり難しいぞ。」

「でも女を狙うよりはマシだ。」

「どうして?」

「まだチートが全く分かってないからだ。」


傑は眉を顰めた。それがどうしたと言った感じなのかもしれない。

だがこういう勝負においてはそういう事が一番重要なのだ。


「紫の能力は十中八九自分の体を操作する系のチートだ。自分で自由に操作出来るのかは知らないし、もしかしたら自分の体以外も操ることが出来るのかもしれないが、多分物理攻撃は有効だ。」

「敵のチートが分かったのか?」

「そうではない。けど、これまで以上に用心した方が良いってことだけは分かる。」


あの紫もワカメ女も相当に危険だ。俺の勘がそう言っている。


「対象 制圧」

「そうよ。偉いわね。」


紫の触手が傑に一直線に飛んでくる。先端がキラリと光った。傑は触手の中腹を蹴りあげて軌道をずらし、触手を握り潰した。触手は真っ二つになって地面に落ちるかと思われたが、まるでカタツムリの触覚のように一瞬で肉の塊に吸い込まれていく。

傑が一瞬の攻防を終え自分のいる場所まで戻ってきた。傑が背中越しに何かを伝えようとしていた。


「手のひらの皮が剥けた。」

「は?」

「硬度が高いから剥がれた訳でも、引くスピードが速かったから剥がれた訳でもない。あれは間違いなくチートの影響だ。もう少し長く持ってたら多分、体ごと全部持っていかれてた。」


その瞬間自分の中で何かがストンと落ちた。断片的だった情報が全て一つになった気がした。

俺は急いで手帳を取り出すと情報を整理し書き留める。

多分今回は肉体で戦術を組むのは無理だ。

それを踏まえた上で相手に対抗するためのチャートを書き出す。


「傑! 逃げよう!!」

「は、はぁ!? りょ、りょりょりょ、了解ッ……だッ!!」


傑は敵との攻防を無理やり中断し、敵の攻撃を片手間に避けながら逃げる算段を整えていた。普通の人間ならこんな状況で俺の言うことなんか聞けないだろう。


「逃げ――」

「トシ危ねぇ!!」


しくじった。俺の肩にぬるりとした感触が這った。

自分の頭が目まぐるしく回転し、どうにかこの現状を抜け出す方法を考える。

時間の流れがとてもゆっくりに感じられたが、全く方法は思い浮かばなかった。


体が触手に吸い込まれる。俺は残った半身で手帳を放り投げると自ら触手の中に飛び込んだ。

手帳を受け取る傑の姿が目の端に映り込む。

そして泣き叫ぶ声は完全に姿が見えなくなった後でくぐもって聞こえた。

いきなりピンチ!?

佐々木はどうなってしまうのでしょうか!?

というか相手の能力が佐々木には全て分かったのでしょうか?

果たして運命や如何に!?

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