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面白く『する』んだよ!

なぜ山を登るのか。

そこに山があるから。

有名な言葉だがこれは厄介な記者を振り払うために言った言葉である。


なぜ俺達は山を登っているのか。

それは『宿泊研修の醍醐味だから』だ。


「ハァハァ……ゼェゼェ……」

「トシ、昔はもう少し体力あったよな?まだ歩き始めて1時間だぞ。」

(すぐる)がこちらを向きながら後ろ向きに歩く。

俺が遅いと言いながら追い抜かして話をしながら歩いている。

いつかコケるぞ。

「周り見てみろ。皆ヘトヘトじゃねぇか。チート使ってんじゃねぇのか。」

「トシが1番分かってるだろ。俺がチート使ってない事。だって使ってたらお前も使えるんだもん。」

俺に使わせないために自分も使わない。

良い趣味してんじゃねぇか…

「トシ。」

「ハイハイ、分かってる。これぐらいは頑張るさ。宿泊研修が如何に楽しいかは知らんが、楽しい事をする為には苦労が必要なんだろ……まぁそんなに楽しい事があるとは思えんが……」

「そんな考えでは楽しめるものも楽しめませんよ!」

「小日向さん!?」

よく考えると驚く程のことではない。

小日向さんは俺の前に居たんだ。

今は傑が前に入っているが会話は聞かれているだろう。

少し驚いてしまったのはいきなりだったと言うだけではないようだ。


「知ってますか?その事を楽しめるかどうかは楽しもうとしているかどうかが鍵なんですよ。」

「良い事言うじゃん。小日向さん。」

傑がそう相槌を打った。

コミュ力高ぇなぁ……

「楽しもう……かぁ……」

「楽しいから楽しいと思うんじゃなくて、楽しくしようと思うから楽しくなる。要は気持ちの持ちようです。」

近頃、楽しいことなんて思い出そうと思ってもなかなか無い。

今日ぐらい張り切ってみるか。

顔を上げて前を向く。

道はまだまだ続いている。


「ハァハァ……ヒィヒィ……着い…たぁ……」

「結構歩きましたねー」

「片道2時間ぐらいって先生も言ってたから想定通りと言えば想定通りだな。」

何が『想定通り』だ。

こんなに歩くなんて誰が想像出来ただろうか。

ペースはいつもより遅いがずっと坂道。

これは疲れるだろう。

道端にへたり込むように座る。

「……てか、お前は…なんでそんなに……元気なんだよ。」

息を切らして言葉をかけるがなかなか途切れて言葉にならない。

「まぁ……慣れだな。普通に鍛えてるし。お前みたいに家に篭もって無かったからな。」

「それは…受験勉強もあっただろうが……」

ヲタク丸出しみたいに言うんじゃない。

「元気出してください。手、引っ張りましょうか?」

「いえ!自分で立てます!」

何か、はっきり言葉が出てしまった。

少し恥ずかしい。

「良かったです。あっちで整列するみたいなのでそろそろ行きましょうか。」

「是非行きましょう。」

「すっげぇ。トシがやる気出してるぜ。」

「うるさい。」

こうして俺達の宿泊研修の幕が上がった。


長い校長の話と結団式を終えるともう昼時だった。

先生の引率でキャンプ場みたいな所に着く。

確かここでするのは『カレー作り』だ。

……定番だな。


自分は料理が苦手な訳では無い。

大抵の料理は自分で作れるし、レシピがあり難しい工程さえなければ結構美味しく作れる……と思う。

カレーなんて初歩の初歩。

具材を切って鍋に入れルーを溶かしてちょっと煮れば完成。

正直、班で手分けしてやるようなことでは無い。

普通に作るのであればの話だが。


「えー、皆さんには、これから『借り物カレー作り競争』を行ってもらいます!」

は?

クラスの皆もポカーンとしている。

「この宿泊施設には、えっと、紙が散らばってるんですけど、あ、こんな感じの。」

先生がポケットから出したのは1枚のメモ用紙だった。

それを1回だけ折りたたんで皆に見せる。

「この中に食材の名前が書かれています。これを取って来てここのカウンターに持ってくれば食材と交換します。食材の紙には限りがあるので注意して下さいね。」

正直に言ってとても面倒臭そうだ。

この宿泊施設に、なんて一言で言うがこの施設相当デカい。

他クラスの生徒は違う場所に居るのでそれぞれのクラスの接触でゴチャゴチャにならないために範囲の指定をされている事は予想がつく。

しかしここに来るまでに紙は見かけていない事からそう簡単には見つからなさそうだ。

闇雲に探せば複数個は見つからないんじゃないのか……?

「あ、ルーとお米は用意してあるので安心して下さいね。」

先生がニッコリと笑う。

俺も引き攣った顔でニッコリと笑い返すがこの皮肉は先生までは届いていないだろう。

「12時までに作り終えて下さいね!でないと私が作ったカレーを食べる事になりますよ。」

ふっふっふっという不敵な笑みを隠すことなく表に出している。

……どうやらルーとご飯だけの方がマシらしい。

今は10時半、約1時間半の制限時間。

「それでは『借り物カレー作り競走』スタートです!行ってらっしゃ〜い!」

宿泊研修編スタートです!

何が起こるか分からないから人生は面白い!

明日も夜6時に連続投稿です。

気に入って頂けたなら)ry


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