秘密は明かされるものだ
「......」
この場所に来るのは久しぶりだった。
実に二年ぶりである。
「しかし......」
記憶と照らし合わせる。
位置としてはここで間違いない。
周りの風景もあっている。
念のため住所検索もしてみたがここで間違いない。
「何だこれ。」
見知らぬ立派な木造の建物が鎮座していた。
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「よぉ。宗利。いきなり気絶した時は驚いたけどあれから元気か?」
「修業時代は結構良くあったでしょう。今更珍しいわけでもありません。」
「普通、戦い終わってすぐ気絶したら勝ってもとどめを刺されるのは自分なんだからな?自分の安全が確保できてから気絶するんだぞ?」
「えぇ。気を付けるようにしています。」
その辺は気を付けるように口うるさく言われていた。
「......というか何で全部戦闘で例えようとするんですか。」
「え......いや、それはだな......アレだ。男の子は喧嘩するから......だよ。」
目線を逸らしながら冷や汗をタラタラに垂らして呟いている。
「嘘ですね?」
「やっぱり俺って嘘吐くの下手か?」
「色々な人に言われるんじゃないですか?」
「おう。」
はぁー、と長いため息を吐く。
別に本当の理由を問いただすつもりはないが男の子は喧嘩をするから戦っている時に気絶をしてはいけないという理論自体は間違っていない気がする。
そんな理由でないのなら何が理由なんだろうか。
......まぁ、深く考えないようにしよう。
「とりあえず中で話そう。」
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立派な建物の中は板張りの一間になっていた。
「こっちだ。」
奥には障子があり中は和室になっている。
ここに来たことは無いけれどなんだか懐かしい感じがする。
ちゃぶ台の横に置かれている座布団によそよそしく座る。
「今日来たのは昔話をしに来たからじゃありません。」
「知ってる。」
ぐーさんはずずーっと音を鳴らしながら持ってきたお茶を飲んでいる。
「単刀直入に言います。あの帽子の男はどこに行かされたんですか?」
「そう......だな。」
「嘘ついても分かりますからね。」
「本当のことを言おう。秘密警察だ。チーターを対象とした専門の諜報機関でありこの日本の秩序と平和を守る政府直属機関であり、国民には存在すら知られていない機関で武力行使も許されている。なんでもその存在を知ったものは存在を消されるとかなんとか。」
「............へ?」
嘘はついていないように見える。
こんな子供の思い付きみたいなものが本当に存在するのか!?まさか本当に見せかけた嘘なんじゃないか!?こんな子供騙しみたいな設定で納得すると思っているのか!?
「ちなみに最後のは......嘘だ。」
嘘じゃない!この反応は最後のも嘘じゃない!!
口をポカーンと開けたまま目を瞬かせているのをぐーさんはお茶を飲みながら見つめていた。
「いや、おかしい!それはおかしい!それではぐーさんがその存在を知っていることがおかしい!ぐーさんは存在が消されていてもおかしくないはずだ!」
「俺は特別だ。」
「まさか......秘密警察なんじゃないですか?」
「それはない。」
本当にそれはないみたいだ。ぐーさんはこんなにはっきり嘘を言い切れる人間ではない。
小日向さんからぐーさんのことを信用しすぎているのではないかと言われたが、確かにそうかもしれない。でも自分はこの人のことを信用してしまう。恩師だからと言うのもあるがそれとは少し違う。
この人の言葉には信念があるのだ。
この人は本当のことを言っている、本当のことしか言えないような気がするのだ。
あくまでそんな気がするだけなのだが。
「俺に話したら俺は存在消されるんじゃないですか?」
「別に大丈夫だろ。他に漏らさなきゃ。」
「そんなもんですかねぇ。」
なんだか毒気が抜かれてしまった。
......
「ぐーさんは今何やってるんですか?」
「前にもその質問された気がするんだが。」
「気のせいではないですよ。だって秘密警察を知ってる人でしょ?何やってるんですか?」
「この道場をやってる。」
「それだけじゃないですよね?」
「......」
本当に分かりやすい人だ。こんな人に何か大きな仕事が務まるとは思わないのだが、でも何かをやっているのは本当みたいである。
「この人、なんとかかんとかっていう『けんきゅーきかん』?に居るみたいなのよね。まぁ会社の秘密だか何だかで仕事の内容までは話してくれないんだけどね。」
その瞬間にぐーさんが大きく目を見開いて素早く声の方を振り向く。
そこに立っていたのは金髪の女性だった。
ぐーさんは座布団からスッと立って早足で金髪の女性に近づいて何やら耳打ちする。金髪の女性はそんなぐーさんをもろともせずグイッと押しのけると、無駄のない動きで押入れから座布団をもう一枚取り出しちゃぶ台の横に置くと俺の隣に座った。
「うちの主人に何か聞きたいことがあるなら話しかけてくれればよかったのに。どうせこの人、人と話すの上手くないんだから仲介役も必要でしょ?」
「あのなぁ......今、大切な話をしていたところだったんだ。二人きりにしてくれないか?」
「そんな女の子に告白するような調子で言わないの。それにどうせ二人きりで話進んでなかったんでしょ。何て言うのこういうの。『こみゅしょー』?なんだから。確か宗利君もそうだったよね?」
「そんなコーヒーの好み聞くような聞き方しないで下さい。今日はやる気出してきたんです。別に大丈夫ですから。」
奥さんが居た方が話が速そうだが、逆に話の腰がおられてしまいそうな気もする。
「あら、そう。」
ぐーさんの奥さんはどこからともなくせんべいを取り出して見せつけるように食べていた。サクサクとせんべいが砕ける軽い音が畳に吸い込まれていく。甘辛い香りが鼻腔をくすぐる。最後に食べ終わると指についたカケラをそっと舌で舐めとった。
他の種類のお菓子も出てきた。
思わず喉が鳴る。
「茶菓子、いるでしょ?」
「............はい。」
「ふーん。この人の正体ね。この人、今はこんな感じだけど昔はすごかったのよ。もうホント敵なしって感じでズンズン進んじゃうの。」
「お前もすごかったよ。全然人の話聞いてなかっただろ。それに自分勝手だった。」
「そうかしら?」
「そうだ。」
「あのー、すいません。」
この会話がいつまで続くのだろうと考えながらついつい口を出す。
「この人の正体でしょ?そんなに凄い人じゃないわよ?そのなんとかっていう所に行き来してて道場もやってるってだけ。」
「まぁ、簡単に言うとそうだな。」
「フーン。」
それが本当の事なのだろう。
その研究機関がどのようなものなのかは分からないがそれが政府の秘密警察とつながりがあるのかもしれない。
だとしたら......
「ぐーさんって頭良いんですか?」
「全然良くないわ?」
「おい。」
「ぐーさんの本名ってなんて言うんですか?」
「ぐーさんで良いだろ。今更、」
「田熊っていうのよ。だからぐーさんって名乗ってるみたい。知らなかったの?」
金髪の女性が首を傾げている。
こう見ると本当に若い。
ぐーさんは......何歳か分からないけれどこの金髪の女性は多分20代だと思う。
年の差が二倍ぐらい違うんじゃないかとも思ってしまう。
「人の秘密を漏らすのはいけないって思わないのか。」
「あら、これは私の名前を言っただけよ!それはいけないことじゃないわ。」
ぐーさんが呆けている。
少し可哀そうになってきた。
その時、古い掛け時計がボーンと音を鳴らした。
かなり時間が経ってしまっていたみたいだ。
「今日はこの辺で帰りますね。」
「あら、もう帰っちゃうの?もう少しゆっくりしていけば良いのに。」
「いや、これ以上居られるとマズイ気がする。」
俺はそそくさとその場を後にした。
「おい。」
後ろから声がかけられる。
「何かあったら頼れよ、遠慮せず。きっと力になってやれる。」
ぐーさんが真剣なまなざしでそう言った。
そんな機会などない方が良いのだが。
「昔から頼ってきたじゃないですか。」
「......そうだな。」
ぐーさんはニヤリと笑って戻っていった。
俺はその背中を見ていた。
ぐーさんは一体どれだけのことをしてきたんだろう。あの眼差しにはそこはかとない何かを感じた。だがその疑念に不信感は無かった。あるのはただ単純に興味のようなものだった。
――――また機会があったら聞いてみよう。
今回の幕間はぐーさんでした。
ぐーさんは三回目の登場ですが少しずつ人となりが分かってきたのではないでしょうか?
ぐーさんは信頼できるのか、それとも......?
来週の水曜日も幕間です。
梅雨の時期をふんだんにチートしましょう!




