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運が良いかは結局のところ結果論

俺はあまりクラス分けでどんな人と一緒になっても一喜一憂しないタイプだった。

他人に対しては良い意味でも悪い意味でもほとんど無関心。

チーターに振り回される人間を全て救うなんて事は出来ないし、自分が見捨てても変わらない物は変わらない。

だから見ないフリをする。

フリは本当になり俺はほとんどの事に無関心になった。

不満もない。

知らない方がむしろ楽だ。

それは俺の変えようのない昔からの性格である。


靴箱に貼ってあるクラス分けの紙を見る。

本来、上手くいっていればここに名前などなかったのだろうか。

丸文字のフォントで『ようこそ!高校1年生!』と書かれており、少し煽られているような気分になる。

もちろん、自分の心が沈んでいるからだというのは分かっているのだが、少しケチを付けたくなるような気分だった。

そんな例年とは少し違う感慨深い思いをしながら自分の名前を探す。

1年1組11番。

1がこんなに並ぶことなんて珍しい。乾いた笑いが漏れる。

そんな時、後ろから声がかかった。

「あっ、佐々木さん。」

「小日向さん!」

この街の公立高校は色々な場所から人が集まるが、まさか小日向さんもこの高校とは……まぁ…想像がつかなかった訳ではないのだが。

「小日向さんのクラスは…俺と同じだね。」

「出席番号まで前後だなんて何か運命めいたものを感じますね!」

「え……ああ、本当……ですね。」

今回のクラス替えは大当たりだったようである。

驚きと嬉しさで胸が踊っているのを悟られないように、ゆっくりと深呼吸する。

言葉が中々浮かばない。

本当に驚いた時には声が出ないらしいというのをどこかで聞いたことがあるが、本当に自分が体験することになるとは思わなかった。

「これから1年よろしくお願いします!」

にっこりと笑って手を伸ばされている。

「よ……よろしくお願いします……」

伸ばされた手を両手で包み込むようにして繋いで、深くお辞儀をする。

慣れない反応だと思われても仕方ないが、今の自分にはこれが精一杯だった。

再び目を通したクラスの紙に書かれた『ようこそ!高校1年生!』という文字は、自分の新しい始まり対する祝福の言葉なのだと心から思えるような気がした。


2人揃ってクラスに到着すると、まだ時間が早い事もあってか、人は数人しかいなかった。

よくよく考えてみると、可愛い女の子と一緒に教室に入るというのは微笑ましい事ではあるが、気恥しい。

沢山人が来ていたら、妬まれるという可能性もあった……というのはただの気恥しさを誤魔化す理由にしかならない。

周りも自分に不信感を抱いている様子はない。

少しホッとした。


見知った顔はまだいなかった。

数人しか来ていないという事もあるが、改めてこの街の広さを思い知る。

この高校には一学年1クラス40人で8クラスあるが、この規模の高校が町内に3つもあるのだから驚きである。

周りの町の分も賄っているとはいえ、なにもこんなに密集させることも無かったのではないだろうか。

自分は近いから良いが、彼女の様に困っている人も少なからず居るのではないだろうか。


そんな事を考えながら席に座る。

7×6の配置で机が配置されており、自分の席は後ろから2番目だった。

彼女が自分の前の席にカバンを置く。

自分より頭一つ分背が低い。

席替えをするまでの間、この後姿を見ていられるのだと思うと、少し心が晴れやかな気持ちになった。

彼女はすぐにウロウロと教室を見渡した後、他の女子の所に話しかけに行った。

俺は自分の席に座ったままその様子を横目で見ながら、する事も無いという風に机に伏せた。

ああ、多分こういう所が自分の悪い点なのかもしれない。


最初は少し沈んでいた心が、今は大分浮かれている。

今年は結構良いことがあるかもしれない。

人付き合いが悪いのは元からであり、高校に入ってからは自分と話の合う人も見つけられないのではないかと思っていたので、ある程度覚悟はできている。

でも、今年はかなり運が良い。

少し楽しい気分だ。


不意に肩を叩かれる。

嫌な予感がした。

背筋に冷たいものがツツーッと走る感じだ。

慣れているが故の経験則。

後ろをゆっくりと振り返る。

「よぉ!相変わらず不機嫌そうだな!トシ!」

前言撤回。

今年もあまりいい年にはならないみたいだ。

高校生活始まりました!

主人公の運の良さには驚きです。一体どんなご都合主義が働いているのか……

兎に角、気にせず行きましょう。

ご都合もチートも良いじゃない!

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