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守るための力

「トシ、お前は逃げろ!」

「......ああ、分かった。」

こういう時の傑の言うことは絶対だ。

何故なら傑は......ダメチーターではなくて本物のチーターだからだ。


--------------------


俺は襲い掛かる幾本もの円柱を無理矢理弾き飛ばしていた。

「トシ!全速力で走れ!俺の能力使えるだろ!?」

「もうやってる!」

幸い敵よりも俺の方が近い。

トシの能力は、トシから近いチーターの能力が優先して使えるようになる。

俺たちが何回も試行錯誤して得た結論だ。


それにしても襲い掛かってくるこの円柱は何で出来てるんだ......?

こんな柔軟な動きしてくるクセに、クソみたいに硬ェ!!

「そうはさせない!」

「しまッ......!!」

相手が米粒大の何かを投げた。

跳ね返すことができず自分の脇を通り過ぎていく。

地面に落ちた瞬間に相変わらずの速さで伸びた円柱のようなものがトシを含めた俺たちを取り囲む。

枝分かれするように伸びた電柱は格子状になり俺たちの行く手を阻んだ。

「『鉄格子の監獄(アイアンプリズン)』」

「なかなかそう簡単に逃げさせてはくれないみたいだな。」

「当たり前だ。何のために人が来ないところに呼び出したと思う?」

「告白か?悪いが男には興味がないんだ。すまないね。」

「ほざけッ!!」


次から次へと襲い掛かる円柱。

今さっきの鉄という言葉から想像するにこれも鉄製だろうか......?

常人ならひとたまりもねぇ。

殺しに来てる。

「しかしこの攻撃を受け続けるとは貴様もなかなかの異能力者だな。」

「ハッ!俺はまだまだこれが本気だなんて言ってねぇぜ?」

帽子男はムッとした顔をした。

「ほう。俺も本気を出していると言った覚えはないッ!」

これまで現れていた円柱が砂塵となって掻き消えると同時に、帽子男はまた米粒大の何かを投げる。

円柱が形成され、また俺を潰そうと襲い掛かってくる。

同じ手は通用しねぇっての!


束の間の衝撃。

目の眩むような反動に視界が反転する。

「クッソォォォォォオオオオオオ痛ェェェェェエエエエッ!!!

さっきよりも材質が硬ェ!!

アイツ、鉄を増やすだけがチートじゃなかったのかよ!

一つの悪い予感が脳内をよぎる。

噴き出すような冷や汗と共にその考えは言いようのない恐怖に変わる。

............アイツ、もしかして、何でも増やせるんじゃねぇのか?!

いくら何でも......いや、チーターならあり得る。

「まだ本気を出しているとは言っていないぜ?」

俺の真似をして帽子男がニヤリと笑った。

俺だって。

ここで屈するわけにはいかない。

「トシ、ちょっとだけ使うぞ。」

「ああ、でも()()無理はするなよ?」

「分かってる。」

反動でピリピリとしびれる腕を抑えながら深呼吸する。

筋肉増強、筋繊維硬化、前面皮膚硬化、骨格進化。

長く、深く、息を吐く。

骨格ごと自分の体が変わっていく。

成長痛に似た痛みが体を襲う。

クソみてぇに酷い痛みだ。

体中が悲鳴を上げながら無理やりに自分の体を強化していく。

「モードチェンジ:phase2」

体中の関節をはめる。

こっちの痛みの方がテメェの攻撃なんかよりもずっと痛ェんだよ。

王の盾(ロイヤルナイト)

「......何だァ?その姿は?」

「嫌でも分かるようになるぜ。......ここから先は一歩も行かせねぇ。攻撃も通さねぇ。そして、」

笑う。

偽りの威勢。

全神経を奮い起こす。

「俺はお前を殺さねぇ。」

「随分となめられてるみてぇだな!?」

襲い掛かってくる円柱をかち上げる。

やっぱりクソみてぇに痛ェ......が、どうってことないじゃないか。

軌道を曲げる。

円柱を折る。

円柱どうしをぶつけ合う。

この体なら多少無理がきく。

そして守ることに特化したモード。

機動力をほとんど捨てたモード。

俺に攻撃を集中させるためだけのモード。

王の盾。

「......人間業かよ?」

「俺はチーターだ。これぐらいならどうってことねぇんだよ。」


帽子男がニヤリと笑う。

冷徹な笑み。

間違いなく悪だくみしている時の顔。

言い知れぬ危機感が全身を駆け巡る。

「『金棒』!!」

その瞬間。

円柱が円柱ではなくなった。

円柱からは無数のトゲが生え、まるで鬼が持っている金棒のように進化する。

これは......少しまずいかもしれない。

「これでも受けきれるかッ!!?」

帽子男の顔はこれ以上面白いことがあるかと言う風にニヤついていて、見るだけで無性に虫酸が走る。

殺し合いを楽しむなんて。

まるで昔の俺みたいじゃないか。

軌道を変えようと無理やりに力をかければ俺の腕も無事ではいられない。

それではこれからのことに支障が出る。

「シールド、局所硬質化!」

さらに硬化のレベルを一つ上げる。

「こんなんでェェ!傷を負わせられと思うなよォォォォオオオ!!!!」

ブチブチブチと鈍く低い聞きなれない音が響く。

「馬鹿なッ!?金棒のトゲが潰れた!?」

「押し切れェェェッ!!!」

金棒が真っ二つに折れた。

「俺のやる気が分かってもらえたか?」

「人間なのに炭化チタン合金をたたき割るとはな。いや、異能力者の能力だ。それもありうるかもしれん。オマエの異能力は肉体を強くするものらしい。まさかここまで硬くもなれるとは本当に驚いた。出来ることなら仲間にしたい。」

「仲間か!良いねぇ!でもこの能力が有効に活用されるときなんてこんな時しかないからな。......どうせ人も殺すんだろ?」

「何を馬鹿な事を言っている。俺たちの力を示す為なら多少の犠牲など問題にはならないよな?」

「おこちゃま。」

「は?」

困惑する帽子男。

耳を疑うと言ってもいいかもしれない。

「おこちゃまだって言ってるんだよ。そんなんじゃ誰も認めてはくれない。ただのテロ組織か反抗勢力だ。やり方が分かってないから盲目になってしまう。」

「なッ!?オマエらに何が分かる!?」

「分かるさ。誰にだって子供の時はある。」

そう言うと降りかかる金棒を勢いに任せてすべて叩き割る。

一回コツさへつかんでしまえばこんなものは簡単だ。

「口をパクパクさせてどうした?空気吸って吐いて深呼吸の時間が欲しいか?」

帽子男は顔を真っ赤にしていたがフゥッと短く息を吐き出していった。

「俺はお前達を甘く見ていたみたいだ。少し熱くなりすぎた。我ら『人理の開拓者』にとってお前達は脅威となり得る存在だ。この場で絶対に消しておかなければならない。」

「人理の開拓者?大それた名前だぜ!」

煽る。

帽子男のチートがはっきりしていない以上、俺たちは相手の判断力を奪わなければいけない。

そして俺たちの今の勝利条件はただ一つ。

この場から立ち去ること。

トシの力ではこの格子は破れない。

トシのチートでは俺のようにはできない。

だから。

「俺が守る。そんでもって助ける。」

「きこえねぇなぁ!?」

帽子男がイライラした顔でそう答える。

当たり前だ。この言葉は誰に向けて言ったわけでもないのだから。

グッと握りこぶしを固めた。

三浜柳祭編で不穏な感じはしていましたがまさか戦闘が始まってしまいました......

本当に逃げるだけで終わるのか?

佐々木はダメチートを役に立てられないまま終わってしまうのか?

傑が主人公より圧倒的にイケメンで良いのか!?

......まだまだ目が離せません。

今週の土曜夜をお楽しみに!

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