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女子の着替え場は聖域だ。

「もー!ちょっとやめてよー!ハヒっ!くすぐったいー!」

「へへへ。こんなレアなタイミング、逃しちゃいけませんからねぇ!逃がしませんよ~!」


俺は今、教室の外に出されている。

それは俺に限ったことではなく、男どもは全員である。

「なぁ...俺たち、こんなところでこんな声聞いてて良いのかよ.........なんか、罪悪感というか、そのーー何か、こみあげてくるものがないか?」

「うろたえるな、木原。ここで狼狽えてたら、立派な僧侶にはなれないぞ。」

「お前が一番落ち着けよ、佐々木ィ!?」

何故、俺たちが罪悪感もとい背徳感を冷や汗に変えながらここに突っ立っているのか。

理由は結構、単純明快である。


「んー。帽子とかも小さいのは作り終わったみたいだし、もうそろそろ服の部分も作らないとね。」

「それじゃあみんな、放課後いつ残れるの?良いなら今日計測とかやっちゃおう!」

ザワザワと教室がざわめく。

結局、新たな意見が出ることは無かった。

「じゃあ、今日で決まりね!」


まぁ、そういう感じである。

男子の計測の時には普通に女子は入っていたのに、女子の計測の時には外に放り出される。

分かっていたことだが.........仕方ないだろう。

というか、ここでそうではないという発想が思い浮かんでしまうことがいけないのである。

もっと集中するのだ......もっと集中...


「じゃあ、こんどは、バストの計測ですねぇ~。竹内サーン、手を挙げてくださ~い。」

「......チェンジで。」

「そんなっ!キャバクラの女の子を気に食わないからって、違う娘に変えちゃうみたいに冷たい目をしながらっ!そんなこと言わないで~。」

外から聞く限り、計測しているのは稲原さんだ。

その稲原さんがちょっかいを出し続けているのだ。

噂好きなだけでなく、女好きでもあったか......

うらやましいという訳ではない...が、こちらの気持ちも考えて欲しい。

「大体、稲原さんがこんなことやってるのがおかしいのよ...」

「こんな、女の子にイイこと出来ちゃう機会、逃すわけないじゃないですかー。」

「頭の中がおっさんなのよ......」

へっへっへ、という奇妙な笑いが漏れて聞こえてくる。

あれが変態オヤジと何が違うのだろう。


「ふぅー。疲れたぁ...何であんなにサイズの計測だけで疲れるのかしら......」

「あっ、竹内さん!......どうだった?」

真っ先に聞きに行ったのは木原だった。

どうだったって......何がだよ...

「どうだったって......すごかったわよ。」

何がすごかったんだよ!!

「だってさ!佐々木ィ!すごかったんだって!」

「もう、勝手にしてくれよ......」

もう大体想像がつく。

何故、廊下に立ちながら中から漏れ出る嬌声を聞き続けなければならないんだろう。


「次...私の番......?」

「そ。雨姫ちゃん、こっち来て。」

「こういうの...あんまり、慣れてない......」

「まぁまぁ。お姉ちゃんが優しくしてあげるから。ん?同い年だからお姉ちゃんじゃないのか?」

雨姫に向かって自分はお姉ちゃんだといったのか。

確かにアイツは見た目的には小学生でも通用するような見た目だが、戸籍上の実年齢は32歳だ。

まぁ、精神年齢で言えばお姉ちゃんで良いのかもしれないが......

「まぁ良いや。ウエスト測っちゃおう!.........うわ、すっごい細い。えー...そっかぁ。」

「......どうかした?」

「いや...なんでも...私、実のところ、最近太っちゃったから...」

「...そうは見えないよ?」

「どこ見て言ってんのよ!」

雨姫がとてもデリカシーのないことをしている気がする。

なんだか自分まで申し訳ない気持ちになってしまう。

「ほら!腕上げなさい!!バスト測るわよ!」

ちょっと声を荒げている。

今度、会ったらすまないと言っておこうと思ったが、逆に失礼である。

先に気づけて良かった。

「んぅ。あぁふ。ちょっと......くすぐったい。」

「...結構、エロい声出すわね......」

「......ごめんなさい......。」

「良いですよ~。もっと出しちゃってくださ~い。」

「あっ...んぁ...ちょ、んふぅっ...やめてぇ...」

あの、エロオヤジィ...!

同情するのはやめだ。

次会ったらシューズのかかと踏んで躓かせてやる。

「ふぅ!やっぱり雨姫ちゃんには負けてなかったか!そりゃそうか!!」

「...何が?」

「気にしなくていいから!いやー焦ったぁ!じゃあ次はヒップだね!」

「それもやるの...?」

「もちろん!」

「でも稲原さんじゃないけどね。」

ん?

いきなり違う声が...?

あの声は......

「小日向ちゃん!?」

「ダメですよー。そんなに雨姫さんをいじめちゃ。」

「ゲッ!?」

何か女の子が出してはいけない声が腹の底から出ていた気がする。

小日向さんは柔らかい物腰だが芯のところがかなり強い。

時々...というかかなりの頻度で突拍子もないが、ほとんどの事が正しい。

「では、稲原さんはあっちに行って下さい。」

「...はーい。」

小日向さん、中々キビシイな。

「じゃあ、ヒップ測るから、じっとしててね。」

「......うん。」


ガラガラ、と音を立てて稲原咲希が出てくる。

すかさず、足を横に出す。

もちろん表情は動かさない。

カンッと俺の足に引っかかる。

「あだっ!」

突っかかってバランスを崩して危うくコケそうになる。

「……何するの……佐々木くん。」

「調子に乗りすぎです。」

「……へーい。」

そのまま肩を落として廊下の向こう側にトボトボ歩いて行った。


稲原さんは俺たちと共に開かずの間に行ったので雨姫について本当の事を話している。

気を使わずに明るく接してくれるのは有難いが、今はまだ少し気を使って欲しいというのもある。

まぁ、程々に……というやつだろう。


そこから目立った事は起きなかった。

欲を言えば、本当に欲を言えばの話だが、小日向さんの着替えの様子も聞きたかったが、そこからは聞かせてくれなかった。

小日向さんが手際良く済ませたらしい。

「でも俺たち的にはもうちょっと聞いてたかったよなぁ!佐々木ィ!」

「うるさい。」

軽く腹パンする。

「お前ェェ……」

やはりこれがあるべき姿である。


「お、衣装出来上がったんですか!」

「そうなんです!」

数日後、衣装が出来上がったという報告を聞いて放課後に残るとそこにはメイド服姿の小日向さん達が居た。

「どうです?」

「良く似合ってると思うよ。」

口から零れでるように言葉が出てきた。

「そうでしょう!」

小日向さんがこちらを振り向きながらそう言った。

黒い下地に白いフリルのついたロングスカートがふわりと揺らぐ。

「ええ、とても。」

思わず見蕩れてしまう。

こんな時に良い言葉が出てこないのが俺の悪いところだと心の底から思ってしまった。

文化祭の準備もとても順調ですね!

このままトラブルが起きなければ良いのですが……(フラグ)

小日向さんのメイド服姿……誰か書いてくれないかなぁ……(勝手な願望)

まぁ、それはそれとして。

次の投稿は来週の水曜日!

1週間にいっぺんくらいは短編書きます。

そちらもどうか暖かく見守って下さい。

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