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6月は雨の時期

俺は雨は嫌いじゃない。

雨は濡れるから嫌だ、とか色々な事が言われているが、俺はそうは思わない。

ある日の学校の帰り道、ゲリラ豪雨のような土砂降りにあったことがある。

傘も持っていなかったので走って帰ろうかとも思ったが、自宅まではまだ距離があった。

......というのは言い訳である。

実はとても疲れていたのだ。

走る気力もないぐらい。

俺は叫んだ。

人通りも少なく雨脚も強かった。

だから、誰にも聞こえることはない。

本当に何回も叫んだ。

むしゃくしゃしていたあの日の気持ちを吐き出してしまいたかった。

大人はむしゃくしゃした時に飲んだお酒が一番ウマいなどと言うが、大雨は俺にとってのソレのようなものである。

家に帰るころには、風邪をひいてしまうくらいにザブザブに濡れてしまっていたが、頭だけは変に興奮していて発火したように体が火照っていた。

今でも土砂降りの雨が降ると、あの日の事を思い出す。

雨は嫌いじゃない。


そして、季節は梅雨の時期に移り変わろうとしていた。

すなわち6月がやってきたのである。

そして6月と言えば、学校の中でも二大行事とされるあの行事が開催される季節だ。

そう、文化祭だ。

文化祭の名前は市の名前にちなんで『三浜柳祭(みはまやなぎさい)

略して『さんさい』である。


「ねぇー、文化祭の出し物どーするー?」

クラスの女子が昼休憩の時間にワイワイガヤガヤ騒いでいる。

休憩時間は盗み聞く訳ではないが、自分で話をすることが少ないのでこういう形で人の話に耳を傾けてしまうことが往々にしてある。

「そうだね...男子が女装するとか!」

「面白そう!」

一発目からとても不穏である。

「やっぱり、お客さんに楽しんでもらうものにしたいよね。」

「でも、自分たちも楽しまなきゃだし......難しいよねー」

「ほんとそれなー。」

できれば女装はしない方向でお願いしたい。

「やっぱり、喫茶店とかお化け屋敷とかになるのかな...?」

「お化け屋敷は何個もあったらいけないから、いっつも上級生が作るカンジになってるらしいよー。」

「へー。」

そうなのか、知らなかった。


でもそうなると、結構絞られてくる。

お化け屋敷や、演劇などは被ると中身は違えど同じような印象を抱かせるかもしれない。

喫茶店の類は個性が出せそうだし、お客さんに何かを遊ばせる出し物はそうそう被らないから大丈夫だろう。

とにかく、考えれば割となんでもできるらしい。

監督者が居れば火器の類も使って良いので調理もできる。

予算は学生の出せる範囲内であれば、学校から出された費用と合わせて使って良し。

申請があれば学校の備品も使って良し。

だいぶ自由が利くらしい。

中学校の頃は文化祭とは名ばかりで、各文化系の部活が展示をしていてそれを見回るだけだった(別にそれが面白くないから批判しているのではなく、単に当事者意識に欠けるのでそういう言い方になってしまうだけである)が高校からは流石にそうでは無いのだろう。

少し、面白そうじゃないか。

チャイムが鳴る。

「あー、またあとでー。」

「バイバーイ。」


掃除の時間も終わり、5・6限はHRの時間である。

今回のHRはもちろん三祭についてである。

「えっと...今回の出し物を何にするかについて決めていこうと思います!意見が合ったら遠慮なく言うようにしてください!大切なのはあなたたちが何がしたいかという気持ちです!色々な意見が飛び交うようにしましょうね!」

城崎先生は午後一発でも元気である。

その体力は一体どこから来るのか...


ご飯を食べた後なのに何か考えるというのは間違っていると思うのだ。

血糖値が収まるまで待つか何かした方が良いのではないかと思うのだ。

これが言い訳であるということも知っているのだが...

「ちなみに、先生は来場者が満足できる出し物にした方が達成感が大きくなるので良いと思いますよ!」

そんなワンポイントアドバイスみたいに言わなくても...

「はい。私は喫茶店が良いと思います。これならお客さんを喜ばせられるはずだし、ほかのクラスを見てからメニューを考えれば違いはつけられます。それに火器がつかえるのであれば普通ではできないことをやった方がいいですよね。」

そう言ったのは新浜さんだった。

流石、秀才だけあって説得力が違う。

「おー!良いですねー!喫茶店。私はコーヒーは苦手だけど喫茶店の甘いスイーツとか好きなんですよねぇ...!」

凄く私情が絡まっている。

今さっき話していた女子が手を挙げた。

「はーい!私は、男子も女装して店員をするのが良いと思いまーす!」

その時、爆弾が投下された。


討論は激化する。

主に男子のブーイングによって始まった。

「何で俺たちが女装なんかしなくちゃならないんだよ!」

「スカートとか履くのか!?スカートとか履いちゃうのか!?」

「衣装なんて誰が作るんだ!女子の私服でも着るのか!?それはそれで問題だろ!?」

「僕は...別にいいけど。」

「大体そんなのどこに需要が在るんだ!?」

「女子も男装しろ!」

様々な意見だ。

人それぞれに思うところがあるのだろう。

女子も反論する。

「だって面白そうじゃない!」

「衣装なら多分全員分作れますよ。うち、服屋だから材料費もそんなにかからないと思うし。」

「私、料理できないから...喫茶店かぁ...フロントなら出られるんだけどね。」

「男装...それも面白そう。」

なんだか否定的な意見ばかりではない気がする。

このままでは俺が女装するという羽目になってしまう。

それだけは避けたい。

どうすれば避けられる...?

今、手を挙げながら話している奴はあまりいないが、とりあえず手を挙げてみる。

「は、はいっ!佐々木君!」

先生が俺を指し示す。

途端に教室が静かになり俺に目線が集まる。

「あのー。冷静になって想像してみてください。」

皆、困惑したような顔になる。

「俺が女装しているところを想像してみてください。」

暫しの沈黙。

そして苦い表情。

悲しいかな、凡人の男が女装なんかしても単に気持ちが悪いだけなのである。


結局、落ち着いたところは男子が執事姿で、女子はメイド服だった。

俺たちの文化祭が始まる。

ダメチーター『三浜柳祭』編に突入致しました!

そして今日で連続投稿も終了!長かったねー!

そしてこれからは週二日水曜日と土曜日の夜18:00に投稿します。

明日は...水曜日...連続投稿じゃないか...

そして少しだけ暇ができるなら短編とかも書いてみたいと思ったりしなくもない。

短編は不定期で投稿しようかなと思っています。

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