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黒歴史は心のトゲみたいなものだ

人間関係というのは周りに良い人だけが居るという訳ではない。

時には望まない関係が根強く残っていることだってある。

例えば......こんな風にだ。


「フハハハハ!またここでも会うとは、これはもはや偶然ではなく必然!いや、神の道導べというべきか!」

「ちげぇよ。お前がこのクラスに訪ねてきたんだろうが。」

「さぁ、なんのことだか?」

白々しい。

教室に入ってくるときは、『すみません、佐々木君いますか?』と小声で聞いていたにも関わらず、目の前に来た瞬間この調子である。

「それより聞いたぞ!貴君の噂を!」

思わず眉をしかめる。

おそらくそれは悪い噂だろう。

それもとびきり悪い奴だ。

「貴君、ドロップ・ハイ・ジャンプを使ったらしいな!俺は感動したぞ!!」

「その話はもうするな!」

クラスメイトの視線がキツイのだ。

昔は何でもなかったことが、今では心にダメージが入るのだ。

「何を言っている!これはとても素晴らしいことだぞ!貴君の存在を世に広めるチャンスではないか!」

「こんなことが世に広まるなら、もう街中歩けねぇっての...」

「我ら、黒狼団の誓いを忘れたか!!」


黒狼団。

それは俺たちが中学時代に立てた...まぁ、簡単に言ってしまえば中二病の集まりである。

そしてコイツは田中太一。

右目を長い前髪で隠している。

そして中二病の沼にどっぷり浸かって抜け出せない男だ。

自称、『魔王の13番目の落とし子、オルクス=ルシフェノン』である。

そして誓いとは、『この世にチートの存在を示すこと』である。

...今更ではあるが、冷静に考えてみると、中学生の奴らが言う変なことを大人が信じるはずはないのだが。

しかし、予想以上に黒狼団の存在が知られていたのも事実だ。

頭のおかしい奴らとして知られていたが、それ以外の側面もあった。

何かと色々な時に変な目立ち方をし、呆気なく消えていく。

そんな風に人々の記憶の中にぼんやりと出てきては忘れ去られる。

はっきり言ってパッとしない結果しか残していなかった。

...大体『黒狼団』なんてクサい名前、誰も良い目でなんて見ないだろうに...


「流石、うちの頭脳は違うな!一発逆転も軽々とやってのける。それでこそダメチーターだ!」

ちなみに俺は昔、仲間内で『ジャッジマン』と呼ばれていた。

何事も公正公平を謳い、いつも達観した目線で話している。

そしてうちの団でも頭脳として色々なアドバイスをしてきた。

なんか...自分のことこうやって言うのは恥ずかしい。

こう...なんか黒歴史を自分で勝手に掘り返している感じがして...控えめに言って非常につらい。

「なんか、お前といると...思い出したくないことまで思い出しそうだ。」

「......まさかあの話か?」

「...いや、ゴメン。そっちじゃない。」

あの件というのは、また違う話だ。

コイツと親しかった頃、一度話したことのある苦い記憶の話。

思い出すのも吐き気がするあの時。

だから俺は絶対にこの記憶を外に出してはいけない。

少なくとも今は。


黒狼団はチートの存在を知らしめすことが目的だが、その実、チートの存在を本当に信じていた者はメンバーの中でも少ないんじゃないかと思う。

大体、俺たちは中二病だったしそれらの行為も行動的ではあったのだが、チートを持っていない人間にとってそんな能力は現実味がない。

普通の人よりはちょっと信じやすいし、ほかの人には認めてもらえれば自分も認めてもらえるという欲求のためにメンバーになっている奴のほうが多かったので...どうとも言えない。

それとは違って中二病でもないけれどメンバーに加入した者もいた。

純粋なチート能力者である。

二人居たが、田中はそれとは違う。

チートは持っていない中二病患者であり、しかし本気でチートを広めようと思っており、チートの存在を単純に凄いと思って尊敬している。

そういう意味では、俺の立場的には感謝しても良いのかもしれない。


チート。

悪用しようと思えばどんなことでもできる。

例えば小日向さんの能力なら強盗など盗みの類ならどんなことでもできるだろう。

生徒会長は...もう何かやってしまったかもしれない。

傑は普通は壊すことができないものが素手で壊せる。

これだけ聞けば何ができるのかわかりにくいが、警察の捜査などの事を考慮に入れるとこれほど混乱に陥れられる能力も珍しい。

そういう意味で言えば俺の能力はダメチートだ。

何かしようと思って一人でできることなど何一つ無い。

その癖、しようとも思っていない時に勝手に発動する。

振り回される。

巻き込まれる。

俺はダメチーターだ。


「どうした?顔色が悪いぞ?『ジャッジマン』」

「追い打ちのつもりか?」

「フッ!貴君に追い打ちなど無粋だろう?なぜなら貴君は『無敵』なのだから!」

「.........無敵。」

「そう!貴君が『やる気』を出したとき、それは誰にもできないことを可能にする!!不可能に可能性を見出すのがチートなのだからな!!」

言い返そうとしても言葉が霧散してしまう。

言葉になる前に頭に思い浮かんでそして自らその反論をかき消してしまう。

「ありがとう。素直に受け取っておくよ。」

「何だ、貴君らしくないな。貴君ならここで『うるさい、馬鹿。』と一言付け加えるだろうに。」

「うるさい、馬鹿。」

「その意気だ。さらば!我が戦友よ!」

制服のブレザーを翻し走り去る。

走りながらブレザーのボタンを留めているところが彼らしい。

何故か、自然と頬が緩んだ。

今回も幕間です。

いわゆる説明回?まとめ回?みたいなものです。

次回から新しい編に突入...するんでしょうか?

それは明日のお楽しみです!

では明日も連続投稿!

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