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経験を多く積むから年をとるのだ

毎日が充実していると感じる時がある。

それはどんな時か。


毎日やることに追われている時だ。


「ふぅ。終わったぁ...」

宿題の量が中学の時よりも確実に多くなっている。

にもかかわらずやる内容も着実に難しくなっている。

まぁ、たぶんこういうのは慣れだ。

筆記用具を置いて椅子から布団に潜り込む。

もう、このまま眠り込んでしまいたい。

まだ夜7時で夕飯も食べていないけれど、そんなことは何か...どうでもよくなってしまった。


バンッ!

唐突にドアの開く音。

「おにーちゃん!来たよ!」

「ドアを...開けるときは......ノックを...しろと...」

「ぐーさんが来たの!おーきーてー!!」

「ぐーさん……ぐーさん!?」


「こうして会うのは久しぶりだな。」

「ご無沙汰しております。ぐーさん。」

俺の目の前には初老に見える男性が座っていた。

実際にはそんなに年はとっていないらしい。

あくまで全て噂の話だが……

『この御老公は誰じゃ?主。』

『ああ、この人は俺の恩師?のような人だよ。』

「ぐーさん!お茶持ってきたよー!」

「ん?あぁ、有難う。やっぱり友里ちゃんの煎れたお茶は美味いなぁ!」

「それ、冷蔵庫から出したの温めたのだよ?」


しばし沈黙。


「コホン!まぁ、それはそれとしてだな、今日は宗利の顔を見にやって来たんだ!どうだ?高校は楽しいかね?」

「まだなんとも言えないけど、とりあえず楽しいですよ。」

またもや沈黙。

この人は話すのがあまり得意では無いのだ。

それは皆の暗黙の了解であり……今のは俺の返し方も悪かった。


「ぐーさんは今何をしてるんですか?」

ぐーさんと会うのはこれで実に1年ぶりぐらいである。

その当時は色々とお世話にはなったのだ。

だが何をしているのかはほとんど分からない人だった。

その当時は色々な事に挑戦していると言っていたが……よくよく考えてみると何かに挑戦するような歳だろうか……?

「あー、まぁ、色々だな。」

こうやってすぐにはぐらかす。


「色々って何ですか?」

「そう……だな……強いて言うなら……武術を教えたり……とか……」

「それは前も趣味でやってたじゃないですか。」


「後は……そうだな……言える範囲なら…主夫かな?」

「はぁ、そうですか。」


この人は色々と謎が多い。

俺の恩師ではあるが、あの頃は人に興味が無かった頃なので深入りして聞くことは出来なかったのだ。

しかし、何か引っかかる。


「ん?主夫?ぐーさん......まさか、結婚してるんですか!?」

「え?知らなかったのか?お前と出会った時にはもう結婚してたぞ?」

呆れた。

ぐーさんにではなく自分にだ。

まさかここまで何も知らなかったとは……

「というか奥さん見た事無いですよ!」

「あるよ!これを見なさい。」

そうやって誇らしげに取り出したのはスマートフォンだった。

ぐーさんはかなり機械オンチだ。

「あぁ、やっと買ったんですね。」

あからさまに肩を落とす。

「なんだ!師匠に対するその態度は!」

と言いつつも半笑いで冗談混じりだ。

だが、威圧感だけは半端ないので慣れていなければ冗談だとは思えないだろう。


「これだ。」

「あぁ、この人。……この人が奥さん!?」

若い!

そして正直釣り合いが取れてない!

そして金髪!

洋風の顔!

何処の人と結婚したんだ?!

確かに見覚えはあるが、誰もこの人の奥さんだとは思えない!

「そんな人の妻見てそんなに驚くことはないだろう?」

「はぁ……」

何だか突っ込む気力がなくなってしまった。

何なんだ、この人は。


あれは小学生の頃の冬の日だった。

俺のダメチートがいつものように誤作動を起こして、学校では一時期話題になった。

『あの子の周りにいると変な事が起こるわ。あの子には近づいてはいけません。』

『きっと、あの子は呪われているんだ。』

その頃には自分も自分の特異体質に気が付き、人と距離を置いていた。

あの子に近づくと呪いが伝染る、と噂されていたことも相まって俺の生活圏には限られた人間しか居なかった。

それ自体に不満はなかったし、誰も俺の近くに居てほしくなかった。

そんな時だ。

ぐーさんに出会ったのは。

彼はその当時から異様な雰囲気をまとっていたが、不思議と話しかけやすかった。

自分と似たところを感じたのだろうか。

今となってはそれさえも分からない。

でも、俺はそれからぐーさんに連れられて色々なところに出かけるようになった。


俺は彼をいつの間にか師匠と呼ぶようになっていた。

『お前は、何においても奥手だし多分それが変わることは無い。だから、俺がやる気の出し方を教えてやる。全ては気力の入れ方でかわるのじゃ!』

彼は教える時には語尾がおじいさん口調に変わる。

そして俺は小学校を卒業するとき『免許皆伝』という分かりやすい称号をもらったのだった。


昔を思い出すとなぜか体が熱くなる。

要は恥ずかしいのだ。

だが、俺にとってそれは大切な思い出である。

「じゃあな!元気でやれよ!」

「バイバイ、師匠。」

ニッと笑ったぐーさんの顔は俺を祝福してくれているようだった。

宗利の師匠であるぐーさんが登場いたしました!

ぐーさんとは一体何者なのか?

後々......分かるんでしょうか...?

幕間の物語ぐらいで楽しんでいただけたら幸いです。

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