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チーターはいわゆる『災害』だ

 学校が始まって2週間も経った。

 習うペースなどはとても変わったがついていけない速さではないことも少しずつ分かってきた。

 多分、これが『慣れ』という奴なのだろう。

「佐々木ィ!これ、教えてくれ!」

「なんで今から苦手があるんだよ...」

 この男は、木原真司。

 何かと馴れ馴れしくしてくる同じクラスの男子生徒だ。

 だが、不思議とうっとうしくはなく、親近感も感じられる男だ。

 ちなみに高校になってから顔を合わせた仲である。

「で、どこが分からないんだ?」

「んー。どこが分からないっていうより全体的に分からないんだよ~。頼むって~。」

「それ、どうやって教えればいいんだよ。」

「俺にも分からないです~。」

 ヘラヘラとしている。

 そう簡単に学力が上がるのなら苦労はしていないだろうに。


「ここと、ここと、ここ。あれもだな。ここができるようになれば、大体できるようになるだろ。」

「多いよー。もうちょっと減らせないの~?」

 俺はニコリと作り笑いする。

「うん、無理だな!」

「デスヨネ~。」

 あは~と言いながらフラフラと帰っていく。

 仕方ないことだ。

 もう少し言い方がある?

 多分、こんなもんで良いだろう。

 そんなことよりも今日は大事なことがある。


 正直、通常の高校であればもう少し早いだろう。

 今日の5、6時間目は上級生との顔合わせ、すなわち対面式である。

「新入生の入場です。拍手で迎えましょう!」

 気前のいいアナウンスとともに入場すると、何となく予想はついていたが大量の人々が居た。

 凄い。

 こんなに多い人が並んでいるのを見たのは、子供のころに野球観戦に並んだあの時以来かもしれない。

 当然だ。

 自分たちの学年だけで何百人といるのだから、人は多くて当然だ。

 これを壮観と言うのだろうか...

「すげぇ......」

 思わず声が漏れる。

 かなり大きめの体育館なのにびっしりと人で埋まっている。

 座ってくださいというアナウンスが流れ、新入生は用意してあったパイプ椅子に座る。


「それではこれから対面式を行います。ではまずは新入生代表からの挨拶です。」

 はい、という声が少し離れた場所から聞こえる。

 その声と同時に女子が一人立った。

 凛として歩みを進めると肩までで切りそろえられた髪がフワりと揺れる。

 あれは確か同じクラスの女子だ。

 名前は確か...

「それでは新入生代表、新浜香奈さん。よろしくお願いします。」

 そう、新浜香奈だ。

 新入生代表ということは、成績はかなり優れているということだ。

 確かに見た目からして...なんかそんな感じがする。

「はい。新入生代表、新浜香奈です。上級生の皆さん、よろしくお願いいたします。」

 しっかりとした口調で物事をしゃべる人だ。

 それにこの状況でも、顔一つ赤らめることなく堂々として話している。

 俺なら多分、ああいう風にはできないだろう。

 それにこうして見ると......と言ってしまうと失礼に当たるかもしれないが普段はそんなに人に注意を払う方ではないのだ......結構、美人だ。

 足も長く、くびれも目立つし、スタイルが良い。

 顔も整っている。

 二週間も経ってようやくこんなことに気が付くとは、よほど人のことを見ていないらしい。

 そういう自分に少し腹が立つのだ。

「これを、もちまして新入生からの言葉とさせていただきます。」

 内容は突出したものではなく極めて平凡な内容だった。

 まぁ、こういう場面ではそれが妥当である。

「では次に生徒会長からの言葉です!よろしくお願いします。」

 向こうでも一人の男子生徒が立ち上がった。

 スラっとした長い脚、180cmはあるかというような高身長、黒縁眼鏡の似合う端正な顔立ち。

 カツカツと、音を鳴らしながら切れ長の目をこちらを見てくる。

 鋭くて冷たい目だ。

 ほっそりとしていてイケメンなのに、それがくすんでしまうような冷たいオーラが辺りを支配する。

 司会の人が名前を読もうとしたのを遮る。

 マイクを司会の人から奪い取るように持ち替えてトントンとマイクチェックをしてからスゥっと息を吸い込む音が聞こえる。

「聞こえているかぁ、諸君。」

 にやりと口の端を上げる。

 何だ、この嫌な感じは。

 瞬間、()()()()()()()()()

 そして、人々の色がどんどん赤くなっていく。

 頭の中がかき回されるように熱い。

 意識が.........消される!!

 少しずつ人の色が赤く変わっていく。

 そして俺も少しずつ赤色になっている。

「諸君、ひざまずけ。」

 嫌な予感が背中を走る。

 反射的に言われた様にひざまずく。

 すると、周りの皆が足並みそろえてひざまずいた。

 パイプ椅子が倒れる音がする。

 間違いない、コイツはチーターだ!!!

 それも、質の悪いチーター!

 理不尽で、利己的で、自分のために特別な力を持つ奴ら。

 自分だけが特別だと思っている奴ら。

 だが、特別なのはお前だけではない!

 タイマンでは負けるが、せめて一人だけなら...!

 隣の人間に意識を集中させる。

 スッと少しずつ青く色が変わる。

 行ける!

「小日向さん!ストップしてください!」

「え...あ...はっ!何です?!これ!」

 今は説明している暇はない!

「チートを使って!!!」

「ス、ストップ!」

 パァン!

 掌が合わされる音がはじけて、響き渡る。

 ひと時の静寂、与えられた猶予。

 ......どうする?

生徒会長はなんとチーター!?

それも性格がねじ曲がった理不尽なチーターです!

理不尽に立ち向かえ、ダメチーター!!

明日も連続投稿です!

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