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ここが賭けをする時だ。

 唐突に切れたと思ったモニターが再点灯する。


『さぁ、ランキングの発表も済んだところでこれから大切なお知らせだ!』

「何?」

『これからマップが狭くなるぞ!』

「それを先に言え、それを先に!」

 

 仕切り直しの様に男が語った言葉は信じられないものだった。

 俺は届くはずもない声で頭上のモニターに文句を言う。

 持っている携帯端末のマップに円が刻まれ、その円の外が真っ赤に染まる。


『あと十分で赤のエリアに居る人は消滅してしまうぞ!』


 確かにゲームで、そういうシステムがあるのは知っている。

 それが今のゲームの主流だ。

 時間が経つ事にエリアの範囲は少しずつ狭くなっていき、最後は逃げ場もないほどにエリアが小さくなる。

 理由はプレイヤーがプレイヤーを見つけ出せないということを封じ、待ち伏せという圧倒的有利を発生させないためである。

 だが、初見で説明なしにそれをやるのは違うんじゃないのか!?


『検討を祈る! 傭兵諸君!』


 ぶつりとモニターが切れる。

 俺には時間が無いが、これで考えることが山積みになってしまった。

 時間が無いと俺は上手く物事を考えて組み立てることは出来ない。


 どうする?


 とりあえず円の外に出るか?

 それとも敵が去るまで待った方が......?


「おにーちゃん! こんなところで考え込んで何やってんの!?」

「......今は進むしかない」

「確かにそうではある。そうではあるが」


 ここで進むのは早計である。

 そもそもこの局面で早計などということがあるのか?

 この情報が発された時点で皆中心に向かったと考えるのが自然だろう。

 であればどのようであれ、相手とぶつかることを避けることは出来ないのではないか?


「佐々木君。引っ張りましょうか?」


 小日向さんの声に俺は顔を上げる。

 彼女は俺に手を差し伸べていた。

 思えば何度もこれまでに手を差し伸べてくれていた。

 何度も何度も助けてくれた。

 だから俺はそれに報いるように彼女を、彼女たちを助けなければいけない。


「お願いします。とりあえず真ん中に進んでください。情けないですけど」

「元からですよ?」

「へ?」


 俺は引っ張られるようにして進んでいく。

 小日向さんの言ったことで少し引っかかることはあったが、それは別に良いだろう。

 とりあえず今は最善策を考えよう。


 まず引っかかるのは10分という時間。

 冷静になって考えなければ分からないが、これは移動するにはあまりにも長い時間だ。

 おそらく、まだ鍵を取っていない人間も居るだろうということでこの時間が与えられたのだろうが、今回は一回目だ。この状態で鍵を取りに行けなんて無理がある。


 次に俺はどうすれば敵に合わないのかを考えなければいけない。

 相手は間違いなく俺達を殺そうと出張ってくるだろう。

 なぜなら、雨姫のランキングが相手の部下の方の男を上回っているからである。

 そもそもどうやってランキングを着けているのかは分からないが、仲間がキルされた状態で終わるとかなりスコアが落ちると思われるのは明白だ。

 だが、ランキングが高いからと言って真正面から戦って勝てるかと言われるとそうでは無い。

 雨姫よりも強いと思われる人間が二人。普通に考えて無理だ。

 だが、エリアが狭くなるごとに正面衝突は避けられなくなる。

 もしも勝てるとすれば、それは奇襲が成功した時だけ。

 奇襲には準備が必要だ。


「マップ見せて下さい」

「どうぞ!」


 残りの鍵は二本。

 両方とも端の方にある。

 取りに行くのが間に合わなければ俺達は消滅してしまうだろう。

 そこまでのリスクを背負わせて良いのだろうか。


 確かに鍵を取りに行くならルート変更をすることによって、相手から逃れながら取りに行くことは可能だ。

 そもそもここの場所から鍵を取りに行くなんて馬鹿なことを考えている人間が俺の他に居る訳が無い。

 ましてや、そこの鍵の場所から俺達が居るルートを通っているなんてことはあり得ないと考えられる。


 10分。

 ギリギリだ。


「今からここを目指します。計算が合っているならギリギリ間に合う」

「ここって......まさか今からもう一本鍵を取りに行くって言うんですか!? 無茶ですよ!」

「10分は短いように見えて意外と長いです。ここから鍵の距離まで直線距離で約800m。経路をたどっても約1.2kmしかありません。そこからエリア外に抜けるのに、計1.5km。10分で走れない距離ではありません」


 確かに女の子には辛いかもしれないが、ギリギリイケる。


「......私、無理」

「走るのはちょっと......」


 加えてこの重装備である。

 やはり女の子には難しかったか。


「私は行けるよ、おにーちゃん」

「小日向さん。武器は預かっておいてもらえますか?」

「まさか二人で行ってくる気なんですか!? 大体、他の人がまだ鍵を取ろうとしている可能性だってあるんですよ!」

「それはそれです。失うものは何もない」


 小日向さんは呆れたような顔をしていた。

 そんな顔をされると......困る。

 だが、小日向さんは長いため息を吐いてにこりと作り笑いをした。


「分かりました。どうせ止めても行っちゃうんだから早く行ってきてください」

「ありがとうございます」

「その代わり」


 小日向さんがぐいっと顔を近づけてくる。

 俺の顔が一気に上気するのが肌で感じられた。


「ちゃんと無事に帰ってきてくださいね。じゃないと、次会った時、許してあげませんから」

「分かっています!」


 俺は背筋を伸ばす。

 シャツの後ろを由香に引っ張られた。早く行こうということだろう。俺が小日向さんとイチャイチャしているのが気にくわないらしい。

 雨姫が何かを放り投げた。


「それ、もしもの時に」


 それはリボルバーだった。

 どこで手に入れたのか、はたまた最初から持っていたのかもしれない。

 俺は雨姫に頭を下げて道を走る。

 中距離走が始まった。

まさかサバゲで中距離走をすることになるとは......驚きです。

ちなみに筆者は中距離走も短距離も長距離も苦手です。

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