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これはゲームか現実か

テレビ画面が切り替わり、屈強そうな図体の男が姿を現した。男は銃を構えながら目つきの悪い瞳で火の粉の飛び交う中を歩いていた。

何だか重苦しそうなゲームだな、と思いながらゲームスタートのボタンを押す。


その瞬間、ヒビが入った。


テレビの周りの空気がまるで壁の様に変質してその中にヒビが入った。現実が割れるとでもいうのだろうか。これがチートによる効果だというのに気づくのに珍しく時間がかかった。

何故なら()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。


「何が起こってるんだ!?」

「わかんないよ! おにーちゃんがやってるんじゃないの!?」

「違う! 俺にそんなチートがある訳ないだろう!!」


ヒビは大きく広がり、向こう側には屈強そうな図体の男が立っていた。

銃声が何発も聞こえた。煙くさい匂いに思わず鼻をつまむ。煙が目の中に入ってきて目を瞑ると涙が流れた。


「伏せろ」


目の前に立っている男が静かにそう言い放つ。

俺達は最初は何事かと思ったものの、その男の荘厳な雰囲気に従うほかなかった。

伏せた瞬間に頭上を弾丸が掠めた。呼吸が止まった。弾丸が飛んで来た方向に男が銃を向けて打ち返す。呼吸をすることも忘れてソレを黙って見ていた後、慌てて呼吸を再開する。


「来い」

「どど、どうやってですか?」


聞き返しても返事はなく、真正面に歩いて行ってしまう。人間を相手している気がしない。

俺達は仕方がないので匍匐前進で着いて行った。前の男は普通に歩いているのに自分達だけこんな着いて行き方をするなんて......


「って雨姫さぁん!?」


雨姫は普通に立って歩いていた。撃たれるかもしれないと思い、慌ててズボンの端を掴んだ。


「......銃声、聞こえなくなった」

「へ?」


そう言われて耳を澄ますと確かに銃声が聞こえない。

後ろを見てもどこを見ても見えない人影に、先程見えた光景は錯覚だったのかと目を擦る。


「一体何だったんだ......?」

「......これはチート」


雨姫が自分を見ながらボソリとそう告げる。

俺の頭の中にその事実が入り込み、ゆっくりと反芻することで頭の中に浸み込んでいく。


「そうか。そうだったな」


これはチートだということをすっかりと忘れていた。チートを発動した時、特有のゾゾゾっという寒気が来ないから現実感が沸かないのだろう。

どんなチートか分かっていないということは何が起きても不思議ではないということだ。

一緒になって屈んでいた由香も恥ずかしそうに立ち上がった。


男に連れられてやって来たのは訓練場のようなところだった。そこには何人か人が集まっていた。

一つ一つグループが出来ており、そのグループを率いているのは屈強な男だった。顔も全く一緒である。何と面妖な......


「これを持て」

「は、はい?」


そう言って渡されたのは重量感のある銃だった。替えの玉が入った入れ物のような物も貰う。

銃の種類について詳しいわけではないのでなんと言って良いのか分からないが、これでも男の端くれだ。こういうものを持つことが出来るとは夢にも思わなかったことも相まって高揚感がある。


「これは?」

「あそこの的に向かって撃ってみろ」

「はぁ......」


俺は黙って的に向き合った。

これがゲームだとするならチュートリアルと言ったところだろうか。

ここはかっこよく決めて......


「うおぁっ!?」


引き金を引いた瞬間に何発もの弾が連射され、予想以上の衝撃に手が離れてしまう。

結局的に掠った弾は一発だけでほとんどは天井に風穴を開けていた。

周りから苦笑が聞こえてくる。


「初めては皆そんなものだ。一人前の傭兵になるにはまだまだ時間がかかりそうだ」


もうそろそろこのおじさんは一体何者なんだと聞き返したい。

普通に考えればこの現象を引き起こしているチーターと考えるのが妥当なのだろうが、なかなかそうは考えられない。

と言うのも俺のチートが発動していないということは、近くに発動者が居ないということだ。複数人居る時点で本体は別にいるとも考えられるが、こういった分身の場合の発動条件は全員がチーターとして認識される場合の方が多い。

おそらくこの男はチーターではないのだろう。チーターでは無いのに複数人同じ顔で存在しているというのは何だか納得がいかない。

由香が銃を重たそうに持っている。当たり前だ。この俺でも重たいと思いながら持っていたんだぞ?


「うりゃ!」


轟音と共に放たれた銃弾は的に掠った。当たったところは良いとは言い切れないが、ちゃんと一発だけ撃てている。当たった場所は自分のよりも内側だ。

なんだか由香の方が上手いのは納得がいかない。


「初めては皆そんなものだ。一人前の傭兵になるにはまだまだ時間がかかりそうだ」


俺にかけた言葉と全く同じ言葉を発している。

もしかしてこれは......


「NPCなのか?」


NPC、ノンプレイヤーキャラクター。

ゲームの中に出てくる住民などの人間の事である。

そんなものがまさか目の前で見られるとは思ってもみなかったが、チートの効果だと言われれば分かるような気がする。

雨姫も銃を渡されるが、銃を受け取ることは無かった。


「これを持て」

「......あれ」


雨姫が指を指している。その先にあったのは銃身の長い銃だった。射的に使うコルクガンによく似ている。

雨姫はそれを勝手に持ってきていた。

そんなことをして良いのだろうかと思ったが、屈強な男がとがめることは無かった。

銃を固定する三脚のような物を立て、しっかりと狙いを定めている。


「ふっ」


小さく息をする音と同時に、弾が発射される音が鳴り響く。

見事、的の中心を貫いていた。

夏祭りの時の射的の事を思い出す。そういえば雨姫はかなりこういうのが上手かった。


「......動かない的。外す方がおかしい」


ボソリとそう呟いてこちらに戻って来る姿は、さながら標的を仕留めた暗殺者のようでもある。

俺は屈強な男がどういうのかワクワクしながら見ていた。


「......行こう」


屈強な男は狼狽えるかと思いきやそんなこともなく、何事もなかったかのようにその出来事をスルーした。

それと同じころに周りの人たちもチュートリアルが終わったみたいだ。続々と屈強な男達が集まってくる。何だかターミネーターみたいだと思いながらその様子を見ていた。


「佐々木君?」


聞き慣れた声に思わず耳を傾ける。

振り返ってそこに居たのは、小日向さんだった。


「やっぱり佐々木君じゃないですか!」


しかも少し緩い服装。もしかしてこれは......


「小日向さん。それってもしかして、部屋着じゃないですか?」

「いやっ! これは、そのですね......見ないで下さい!!」


小日向さんが頬を赤らめてこちらから目を逸らす。俺は心の中で全力でガッツポーズをする。

何だか良く分からんが、グッジョブこのゲーム!!

きゃーささきくんのえっちー(棒)

ということで何だか良く分からないままゲーム編がスタートしてしまいました!

コロナウイルスの関係で時事ネタやり続けるのはしんど(げふんげふん)

果たして佐々木君はゲームから出ることが出来るのか!?

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