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学校が始まらないのは嬉しいがいかんせん暇だ

「ついに始まらなかったな」

「始まんなかったねー」


 ポテトチップスのサクサクという音が部屋中に鳴り響く。由香が部屋の中で菓子を食べ散らかしているのだ。

 俺もその音を聞いてごく自然に袋の中に手を伸ばそうとするが、由香が袋の口を自分の方に向けたので俺の手は空を切った。

 俺はポチ太がニヤニヤとこちらを見つめているのに気づいて、そっと手を引いた。


「こたつが熱い」

「おにーちゃんが温度下げれば良いじゃん」

「お前の方がどうみても近いだろ」


 日本晴れの中、俺達は季節外れになりそうなこたつでうずくまる。

 つい先日、学校の開校が延期になることが決定した。理由はもちろん新型コロナウイルスのせいである。

 俺達はそれを聞いた瞬間は飛び上がる程喜んだものの、外に出る事も出来ず何もすることがないまま過ごしている。

 今は雨姫が食料品の買い出しに行くと言って出掛けたのを待っている状態だ。

 何もしてはいけないと言われているわけではないが、周りがこんな雰囲気だと何もする気が起こらなくなる。


「あ、うたかちゃん帰ってきたね」

「そーだな」


 玄関先でガタゴトと音がして雨姫が帰ってきたことを悟る。

 俺は振り返る気力も失せていたが、小走りにやって来て背中をチョンチョンとつついた雨姫にいつもとは違う雰囲気を感じて、のっそりと振り返る。

 俺は雨姫の手に持たれていた物を見て目を疑った。


「お前、それ......」

「買ってきた」


 雨姫の手に握られていたのは、巷で話題のFPSゲーム。つまるところ、本格的なアクションゲームだったのである。


 --------------------


 FPSゲーム。

 ファーストパーソン・シューティングゲームと呼ばれるソレは、ゲームの中でも比較的ガチ勢の集まるゲームとされている。

 一人称視点、つまり自分が見ているような目線でプレイすることが出来るゲームであり、探索ゲームやアクションゲームなど様々なゲームがあるが、FPSと呼ばれるそれらは一般的に対人戦を目的としたシューティングゲームとされている。

 自分で銃の種類を選び、豊富なマップで相手との殺し合いを目的とするゲーム。過激なゲームのうちのほとんどがこういうゲーム......というのは俺の単なる先入観である。

 対人戦特有の豊富な駆け引き、それをするのに求められるゲーム技術力の高さからFPSは男性向けゲームで、それも初心者を寄せ付けない特有の雰囲気を放っていた。


 --------------------


 それゆえに飽き性の俺にはハードルが高く、雨姫が持つそのゲームはこの家の中でも異色の雰囲気を放っていた。


「何でそれ買ってきたんだ?」

「むねとしが......サバイバルゲームするって言ってたから。それに退屈そうだったし......」

「あ、そういうこと」


 それで納得がいった。

 俺は小日向さんに誘われてサバイバルゲームをしようとして、由香の所属している社会人サークルにメールを送った。そして帰ってきたメールは「来る者拒まず、去る者追わずで大歓迎! 一緒にサバゲ道を歩んでいきましょう!」と書いてあり、自分の思った以上の返答がもらえた。

 だが、練習をしようにも何から手を付けて良いのか分からず、手をこまねいていたのだった。


「それにしても何でこんなゲームに行きついたんだ?」

「それは......私が、昔やってた」

「意外だな。引きこもり前か?」

「うん」


 雨姫はチートの能力の制御が効かずにおよそ16年間、真っ白い部屋の中で閉じ込められていたという経歴を持つ。

 実年齢や戸籍は33歳ということになるが、昔の戸籍は失踪判定で死亡しており年も取っていないので転入という形で高校生活をやり直しているわけである。

 そのため言葉遣いが著しく退化していたり振る舞いが引っ込み思案だったりするのだが、この頃は少しずつ回復して来たみたいで、積極的になり始めていた。

 そんな雨姫が昔はFPSをしていたというのが少し驚きだ。


「20年前のFPSか想像もつかないな」

「年寄り扱い......しないで」

「ああ、ごめん」


 気付かないところで逆鱗に触れることがある。

 昔のゲームはオンラインにも対応していないようなゲームばかりだったのかもしれない。バイオハザードの2か3ぐらいがちょうどその頃くらいなのかと勘繰った。

 そう考えると雨姫はちょっとした浦島太郎のようなことを体験しているのかもしれない。


「とりあえずやってみるか」


 俺は自室からゲームの本体を引っ張り出し、ソフトをセットしてテレビにつないだ。

 テレビの番組を変えられて不機嫌になるかと思いきや、意外にも由香は乗り気である。「うたかちゃんがその気なら私もやっちゃうよー!」と意気込んでいる。

 久しぶりにゲームを起動をしてみたが上手く起動できたらしい。異音を発しているのはご愛敬だろう。

 俺達はコタツを囲み一斉に声を発した。


「「「ゲームスタート!」」」

いやー、大変ですね。

春休み明けは普通に始まると思っていたのですが中々学校は始まらず、遅いところだとゴールデンウィーク明けになるとか。

自粛疲れしないように頑張りましょうね。

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