04 ロイ
耳につけたイヤホンから流れるノイズ、スイッチを押さなくても音声が通るイヤホンなので仕方がないと言われればそうなのかもしれないが、この不快感だけはどうにかしたかった。
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服の胸ポケットにいれた無線機を取り出し、イヤホンとの接触部分を回してみる。
〈----------プツッ----プツッ---〉
「?」
〈--------プツッ………………………………〉
「あ、直った」
〈バリッ!…………聴こえますか?ロイさん〉
「ああ、うん 聴こえるよ?しっかり」
おそらくノイズの向こう側でずっと喋りかけて来ていたのだろうオペレーターの声が少しイライラしているように感じる。
「で、俺は何をすればいいの?」
〈……………ロイさん、話聞いてませんでしたね?〉
「うん、ノイズが邪魔してて」
〈あなたは我々が雇ってるんです、しっかり仕事をしてくださいよ……〉
結構キレてるのは間違い無さそうだった。無線機を胸ポケットに戻し、伸びをしながら見上げた空は煙が漂い、赤くなってもおかしくない時間帯の空が灰色に変わっている。
「ん~……………あ、言ってたこと思い出した。あれ落とせば良いんでしょ?確か」
〈あれ?〉
「あの~………何だっけ、そう!戦闘機!!」
〈そうです、合ってます。ただ、味方の戦闘機は落とさないようにしてくださいよ?〉
「分かった分かった。まぁでもおじさん手加減とか下手くそだから落としちゃったら許してね?」
肩からずり落ちた、何度も選択して色もあせた茶色のロングコートをしっかりと着直し、ボサボサになった天然パーマを指で鋤く。
〈普通なら許しませんが……あなたの魔法なら仕方がないです、戦闘を開始してください〉
「はいよ」
我が物顔で空をゆっくり進む戦闘機に手を伸ばす。
「お前ら今からどの街を焼きにいくんだ?その前にちょっとおじさんと遊ぼうよ」
聞こえる筈がないのは自分でもわかっているが、楽しく戦う為のルーティーンだ。多少痛々しくても仕方がない。
足元の地面が抉れるほど踏み込み大きく跳躍し、魔法を使う。
「level1《散骨》」
これで空中浮遊している状態での移動ができるようになった。
あとは高度を上げながら距離を詰めるだけだ。
そして、やっと自分のことを敵対視した戦闘機が速度を上げ、機銃を撃ってくる。
「level1≪燃え尽きた墓標≫」
しかしその弾の全てが自分に当たる前に粉に変わる。
そして戦闘機に手が触れた瞬間、
「level9≪名の無い王の墓≫」
操縦士もろとも戦闘機が『灰』に変わった。