02 奴隷船襲撃
『魔法は5つの属性しかない』
遥か昔、魔法を作り上げた神様が言った言葉だとされている。
それから230年経った今でもその言葉通り、5属性しか確認されてこなかった。
私の父、アニマ帝国5代目の国王も歴代最強といわれる魔法使いだった。
それでも炎と岩の魔法しか使わなかった。
そして私の前に現れた3人の魔法使いがたとえどんな魔法を使っても、私はそれを信じない。
収穫の月の20日、隣国であるホールスターク帝国の11代皇帝就任パーティーのさなか、その事件は起こった。
ここ数年で最大のレベルまで引き上げられた魔導警備員58名を瞬殺し、堂々と最上階のホールまで侵入してきたそいつらは各国要人、合計23人を拉致した。
前代未聞のこの事件の首謀者はアニマ帝国元暗殺部隊による待遇改善を求めるクーデターだった。
このグループの要求をすべて受諾したアニマ帝国は全ての要人の解放を要求したが、その頃私たちは遥か遠くのエンゼマ海の奴隷船に積み込まれていた。
「おい、飯が不味いっていう苦情が来てたぜ」
「ああ!?どこのどいつだ、言ってみろ!!」
「元《・》ワーセル国の元外務大臣だってよ!!」
「よし!連れてこい!元大臣様にはお勉強を教えてもらわなきゃなぁ!!」
下品な笑い声が響き、牢屋の近くにいた男が泣き叫ぶ外務大臣を連れていく。これで5人目だ。ここに詰め込まれてから7日目。どうしようもない言いがかりをつけられて、航海のイライラを発散しているのだろう。
最初の頃は泣き叫ぶ要人もいたが、ここまで来ると最早誰もが諦めていた。
「なぁ、あんた、あんた」
「え?」
「ここって奴隷船だよな?」
何を言っているのか分からなかった。7日目で遂に頭がおかしくなったと思った。
「申し訳ございません、どなたか私も存じませんが、もう少しの辛抱です、頑張りましょう!」
「いや、そんなこと言えって言ってるんじゃないから、ここがどこか言え」
何が言いたいのかわからない。
「奴隷船、ですけど……」
「じゃあ、合ってるんだな、よし」
そう言うと男は立ち上がり、見張りの男に声をかけ始めた。
「おい、ちょっと、これ開けてくれないか?」
「なっ!?」
「ば、馬鹿だ、あいつ何をしてるのかわかっているのか!?」
牢屋内が騒然とし、今まで何度も感じた緊張感が生まれる。
「おい!何をしている!!……ん?そいつの手錠はどうした?」
「なんだ、ここに入るには手錠が必要なのか?………じゃあほら」
鉄格子の隙間から両手を出し、手首を合わせる。
最初からそうだが、何がしたいのか全くわからない。
だが
「お前、何者だ……?」
船員の問いかけに
「ああ、俺はこの船を沈めに来た」
「貴様っ!!」
正直に答え
「グホッ………」
「邪魔をするなら容赦はしない、船長を呼べ」
見たこともない魔法で船員の頭を潰した男はゆっくりと手錠、及び鉄格子を壊して牢屋から出ていった。




