01 3人の悪魔と1人の教師
よろしくお願いします
俺はセンセイを....
産まれたころから親の顔を見たことがない俺は、自分が何者なのかも知らずに生きていた。
施設の中でも暗い部類だったし、年相応の活発性は無かった。だが、生まれつきの高い魔力から常に魔法学の成績が良く同期の中では頭一つ抜きん出ていた。
無口なうえに行動力もない、そんな奴が自分たちよりも成績がいい。そのせいで俺を変な目で見る奴も増え、俺は完全に孤立していた。
そしてある日、ついにイジメが始まった。俺を「汚らわしい」、「醜い」と言い、特出した魔力を悪魔の力だと言い始めた。
そしてイジメが始まって3か月が経ったころ、ついに俺は人を殺した。魔法を使った模擬戦中の休憩時間、教師たちが目を離した隙に集団で俺に襲い掛かってきたのだ。
そして気が付けば俺の右手は胴体と繋がっていない頭部を5つ掴んでいた。
ほんの一瞬だったようにも、長い時間だったようにも感じた。
おびただしい量の返り血を浴びた俺に恐怖した教師達は、1人で敵う相手ではないと知っていたのか10人がかりだった。
そして俺は退学となった。
だが、9年間過ごした施設からも追い出され身寄りも行く当てもなくなった俺を、”センセイ”が拾ってくれた。
人を殺したあの瞬間がフラッシュバックしても、”センセイ”はいつも1人で俺を受け止めてくれた。
あの人には感謝しかない。
ボクはセンセイを....
貴族の家庭に生まれた僕は、何1つ不自由の無い生活が当たり前だった。
父が事業に失敗するまでは。
変わってしまった生活の質、環境、他人からの目は両親をじわじわと蝕み、ゆっくりと食い殺した。
それはボクも同じだった。性格は破綻し、思想もおかしくなった。
貴族層が通う学校では魔法のセンスが無いと判断され、最底辺のクラスに落とされたが、それがボクを変えていった。
魔法の質が上がり、細かい操作も簡単になった。
掌を返した教師たちは一番上のクラスに戻し、特別待遇を設けた。
だが、少し遅かったようだ。壊れ切ったボクの‘心‘は卒業式の日に暴れだした。
その年の卒業生103人、その父兄226人、教師15人。その全てを食い尽くし、ボクは”センセイ”に保護された。
あの人への感謝は尽きなかった。
俺はセンセイを....
ゴミを漁り、人を騙し、スリをしてその日を凌ぐ。それが俺の知ってる生き方だった。
そんなある日の標的が”センセイ”だった。
あの人は喜んで俺に金の入った財布を渡してきた。
あの人は悲しみながら俺の話を聞いてくれた。
あの人は楽しんで俺に魔法を教えてくれた。
そしてあの人は俺に家族をくれた。
別々の日に”センセイ”が連れてきた2人の子供達。不安そうな目と、心に宿る熱い精神は今思い出してもすごいものだった。
「今日から君の弟になるんだ」
あの日の言葉は今でも忘れない。
”センセイ”....
貴女はこの世界で生きていて楽しかったですか?
心残りはありませんでしたか?
貴女の墓の前で泣く俺たちを見て、貴女は何を言いたいですか?
貴女が付けた俺たちの”名前”。
貴女はどんな思いで呼んでいましたか?
貴女がいつか、また俺たちの名前を笑いながら呼ぶ日まで、
”センセイ”....俺達は....