脱線
子カラスのカアは、仲間といるのが嫌だった。
黒いし、怖いし、たくさんいるし、うるさいし。
カラスのカアは、1人になりたくて、木を、1つ2つ、建物を1つ2つ、越えて、空き地に出た。
人間の子どもたちが何人かでボールを蹴っていた。
カラスのカアは黙って見ていた。
人間の子どもたちは、時に声を出し、笑い、触れ合う。
カラスのカアは、人間とカラスが大して違わないように感じた。
人間の子どもたちがそれぞれ違う方へ別れて行く。
帰るのかな、とカラスのカアは思った。
細い煙が立ち上る。
カラスのカアは臭くてたまらない。
羽をバサッと揺らした。
しわしわの人間が、座って、口に棒を咥えている。そこからフワフワと臭い煙が出ていた。
カラスのカアは、バサッバサッと羽を揺らした。
何故、こんな臭いものを。
カラスのカアが見ているとしわくちゃな人間は、棒をくしゃくしゃと何かに入れて、家に入った。
家の前でこんなものをどうにかしているなんてどうにかしている。
カラスのカアは、コホンと咳をした。
カラスのカアは、夕焼けに飛んだ。
人間はカアを見ると遠ざかる。
カアを見ると鳥も遠ざかる。
尖ったクチバシで、カアと鳴いた。
一人ぼっちでカアと鳴いた。
エサの取り方も知らない。
カアは、鳴いた。
カラスのカアは、みんなの木へ帰った。
カラスは怖いけれど、カアは嫌な感じの人間のようには、なりたくなかったのかもしれない。それはカアの複雑な気持ち。