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デイズ【戻らない綺麗な日】

どうも瀬木御 ゆうやです。

こちらは本編『デイズ』の番外編という形で書いてますので設定はそちらの方から見た方がわかりやすいかと。



今年最後の小説投稿になりますが、今年も私の活躍を応援してくださり皆様には感謝しております。

本当にありがとうございます。


来年もどうぞこの瀬木御 ゆうやをよろしくお願いします(^。^)

年末大晦日。

寒い空は陽が落ちて黒く染まって街の風景は淡い光で光り、除夜の鐘の音が凍えた大気に乗って街中に響き渡る。


誰もが今年の締めを静かに過ごし、新たな年を迎える日。

けれど僕の家、僕の自室はそんな静かな外とは違って少しうるさい。



「つまりこれは今年最後の挑戦ってわけね!ちょっと緊張しちゃうかも!!」


僕が視線を向ける先で小学生からの幼馴染である千愛がふんふんっと鼻を鳴らして興奮していた。


「挑戦って…ただみかんの皮をどれぐらい長く剥けるかってだけだろ」


「それじゃダメだよショウくん! みかんの皮でもリンゴの皮でも自己ベストを超えるのが記録を塗り替えるってことなんだから!」


「それよりも君は剥いたみかんを全部食べるのかい? これだけ食べれば明日のおせちも食べられないぞ」


「…一緒に食べよ?」


「挑戦するならそれなりの代償は必要だろ」


ブーブーと頬を膨らませて文句を言う千愛(ちお)を横目で見ながら僕は自室のコタツで物思いに耽る。



僕は宮本 翔一(しょういち)

どこも変わった特徴もない高校二年生。

特技も勉強も平均より少し上であり、それといって明記することもない少し暗い人間だ。


目の前でみかんをくるくる回して皮を丁寧に剥いている彼女は僕の幼馴染で大切な人物、小笠原千愛だ。

彼女はとても明るくて、すぐに人気者になってしまうほどのムードメーカでもある。


僕らは不似合いの仲だが2人だけにしかないある共通点があった。

その共通点は僕と彼女が超能力者だということだ。


超能力といっても物を動かしたりするくらいで、僕は身内や彼女の前でしか使わず。逆に千愛は誰が見ていても関わらずイタズラ程度に超能力を使っていたりする。


「…そもそも…今年こそ名前で呼んだって良いのにさ……いじわる…」


「あーはいはい、来年こそは名前で呼ぶよ多分」


「去年の最後もそう言って結局言わなかったじゃん!」


と、そんな特殊な力を持つ千愛が真面目な顔でムキムキと細かく慎重に皮を剥きながらボソリと僕に文句を言う千愛に返事を返したら。急に声を張り上げて剥いていたみかんを投げて僕に抗議してきた。

むくれる彼女に僕は慌てて弁明をする。


「いやさ、言っておくけど僕は君みたいに明るくて器用じゃない。そりゃ名前で呼んだって良いよ、でもそれは僕の不得手なんだよ。それを含めて僕のことが…その…す、好きなんだろ君は」


あぁもう。

やっぱり僕は不器用だ。


名前を呼ぶのが恥ずかしいと言ってしまうとさらに恥ずかしい。

そりゃ君のことが好きだ。

愛しているし、何よりも大切な人でもある。

でも…『君は僕が好き』なんて自己中心的な事を言うか普通。

僕の失言と赤面の前に、なぜか千愛も顔を赤くながら慌てて手を振って否定してくる。


「そ、そりゃショウ君のこと大好きだ……ッ いや、好きだからこそ! その…私の欲求不満というか…何というか……ぁぁあああー!!もうこの話やめやめ!!今年も最後まで名前で呼ばなくて良いから! いつか、ね?」


最後の方は指を鼻に押し付けてきて僕に念を押すように言いかける。

僕はそれにコクン、と首を縦に振るしかなかった。

千愛はそれに満足したのか赤面しながらそっぽを向く。


僕も話が終わり、何だか釈然としないまま自室においてあるテレビをつけて千愛と一緒に年越しまで時間を潰すことにした。






23時58分。


いよいよ新しい年を迎える。

僕と千愛はコタツで今年最後の時間とその名残惜しさを感じつつ時が来るのを待つ。


「ねぇ、ショウ君は将来は何になりたいの?」


不意に僕に尋ねてくる千愛に僕は「公務員」と答えるとそれに吹き出すように笑い出す。


「なぜ笑う」


僕の質問に君は「いやさ」と言って笑い涙を拭うと僕の顔にずいっと近づいてきた。

顔が近く、今にも唇が届き……いや、僕はまだ千愛とはそういう関係にはなっちゃ……!


と僕は理性を強くしようとした時、君は僕に向かって言ってくれた。


「頼り甲斐のある旦那さんだね」


そう言ったのと同時に、点けていたテレビから「時刻は午前0時 明けましておめでとうございます」とアナウンサーの声が響いた。

千愛はふふっと不敵に微笑むと僕から顔を離して頭を下げた。


「明けましておめでとうございます」


「……あ、明けましておめでとう…」


僕は千愛にさっきのことを聞こうとしたが、咄嗟にそれは無粋だと思って新年の挨拶を交わす。


顔を上げた君の……千愛の笑顔はとても綺麗で、いつも救われてきた笑顔だ。

僕は何を躊躇っていたんだろう。

新年を迎え、僕は新しい目標を携えながら来年の受験を頑張ろうと決心する。


君を幸せにする。

それが僕の使命だ。







今日は戻らない。

それでも明日がある。


たとえ2人の運命が絶望の輪で血塗られようと、それでもそれは過ぎるもの。


二人の意思は、誰かが引き継ぐ。


きっと、誰かが……




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