第九章
アグルはライガを連れて空き教室に来た。アグルはライガに自分が村から出て来た目的を話した。
「実は、天神龍と魔神龍が戦争をする可能性があるって話が出ていただろ?」
「ああ、去年の夏に発表されていたな」
「ああ、でも他の種族も力をつけて…戦争を起こそうとしているところがあるらしい」
ライガは目を丸くして驚いた。
「な…それは本当なのか?でも、魔神龍と天神龍様の力に対抗できる奴なんてほとんどいないだろ?」
「獄神龍…死神龍…堕天神龍なら対抗できるだろうな…でもそれは個々の力の話だろ?ほかの種族は同盟を組んでる可能性があるってことだ」
「お前…そんな情報どこで聞いたんだよ…」
「村の村長達が話しているのを聞いたんだよ」
「……もしその話が本当ならどうするんだよ?」
アグルはライガに自分の本当の目的と正体を言うか言わないか考えていた。確かに子供の頃は仲が良くって信頼もできる。ーそれが今も続いているのならー しかし、本当に信用出来るのかと言われると五分五分だった。ライガはアグルの考えを読み取ったのか言葉を続けた。
「お前がまだ俺を100%信じた訳ではないとわかっている…でも、そんなこと言ってる暇はないだろ?」
ライガの言っていることはもっともだった。アグルは笑みを浮かべると自分の目的を話始めた。
「俺はどの種族にも入らない新しい種族だ…と言っても大昔に滅んだはずの種族だけどな。俺は自分の種族の生き残りを探して新しい国を作るつもりだよ…」
ライガは驚いた。ーこいつ…正気かよ…ー それもそうだ。今の世では魔神龍と天神龍は歴史上最強と言われている。そんな存在と戦うのは相当な力が必要になるだろう。
「本気なんだな?…」
「当たり前だろ?」
アグルは何をバカなことを…という顔でライガを見た。ライガは笑いながらアグルに向かって手を差し出した。
「俺もお前についていくよ…そのバカげた話が本当になるまでな…」
「お前ならそう言うと思ってたよ!…そうだ、もう一人この目的を話してる奴がいるんだ」
「え?…誰だよ?」
「…ロゼット…」
ライガは再び驚いた。それもそうだ、ロゼットは村に住んでいる中で最強の竜使いだ。ロゼットはアグルに忠誠を誓っているがまさか味方につけているとは思いもよらなかった。
「そりゃあ心強いな…」
「ああ…とりあえず、他にも滅竜がいないか探さないとな…」
「多分この学校にはいないだろうな…居たら俺が気づいてるよ」
アグルは考え込むと笑いながら「とりあえず、後々考えるとするか」と言ってライガと空き教室を後にした。アグルとライガが戻るとリッドがライガの仲間と組手をしていた。二人はそれを見て笑いながら話していた。
アグル達がアンデッドと同盟を組んでから三日が経っていた。その三日間で【星空の竜使い】は学校で有名なグループになっていた。それもそうだ、この前あったグループ代表による場所取りの話し合いと言う名の公式戦が行われた。アグルはその中で生徒会の代表のジンを退けて場所を確保し、リッドが生徒会のNo.2を倒して実力を見せつけた。アグルとリッドが教室に戻ってくるとイブとルカは飲み物を二人に渡した。
「リッド、アグルさん。お疲れさまでした。」
「ありがとう…ルカ」
リッドはそう言うと飲み物を飲み始めた。アグルはー強くなったなー と思いながらリッドを見ていた。すると、ライガが入ってきた。
「お前らすっかり有名人だなぁ…」
「まぁな、けどあんな奴等に負けたら拍子抜けだろ?」
「がははは、確かにそうだな」
ライガはそう言うと二人にある話題を持ち込んだ。
「お前らさ、俺と一緒に大会に出ないか?」
「え?なんの大会ですか?」
リッドが?マークを浮かべて首を傾げていた。ライガはそんなリッドを見かねて説明をした。
「三人で一チームで、戦闘能力や機動力等を見る大会だ。学校から二つのチームが全国大会に出れるんだけど…予選が行われることになって、お前ら二人を誘いに来たってわけだよ!」
「マジっすか?俺はもちろんOKですよー!」
「アグルはどうだ?出るか?」
アグルは不敵な笑みを浮かべて
「当たり前だろ?やってやるよ」
と言った。ライガは「そうこなくっちゃっ」と言って二人にルールと競技を伝えて出ていった。
「リッド…明日から練習を厳しくするからな!」
「わかりました!俺、やってやりますよ!」
アグルとリッド、ライガのチームがここに誕生した。全国大会の権利は二つのチームしかもらえないと知ると、アグルはリッドを徹底的に鍛えることにした。