第五章
アグルは滅竜について話した。
「今の世では、滅竜は人間や他種族の竜などを殺したり、無差別に自分以外の存在を消そうとしてた存在だと語り継がれているのは知ってるか?」
「知っています…」
アグルは誰も知らないであろうことを聞いた。
「なら…滅竜が何故人間や他種族の竜を殺していたか知ってるか?」
「それは…自分にとって邪魔だったからなのでは?」
イブは静かに、はっきりと答えた。アグルは一瞬、目に殺意の炎を浮かべた。しかし、すぐに思い止まり真実を語った。
「俺はさ、滅竜の子供として育てられてきた。何百年もずっと、ある地で眠っていた滅竜の卵から産まれたんだ。滅竜は人間が使える二つの能力以外にもうひとつの能力を受け継いでる…そんな異質な存在の俺たちの過去や気持ちも知らずに、自分たちの家族や仲間を皆殺しにした奴等の仲間になれなんて…お前はどうかしてるよ!」
イブはアグルの話を聞いて愕然とした…自分はどれだけ浅はかな考えで滅竜に協力を依頼しようとしてたのか思い知らされた。イブは立ち尽くし、アグルは俯いたままだった。アグルは「今話したことと俺のことは忘れろ」と言い残し去っていった。イブは自分の貸家に戻ってさっきの出来事のことを考えていた。
「アグル君のこと、滅竜たちの気持ちも知らないのに何を言っとるんだろう…私はなぜ泣いてるのかな、今まで色んな人にひどいこと言われたり、親に『お前は家の子じゃない!』言われてきたのになんでこんなに苦しいの…誰か教えてよ」
イブはずっと泣いていた。
アグルは一人で宿にいた。学校の準備をしながら考えていた。
(なんであんなこと言ってしまったんだろう…おばさんや村長にしか話したこと無かったのになんであいつには喋ったんだよ…なんで)
アグルはそんなことを考えながら深い眠りについていた。アグルとイブ…二人は布団で同じことを考えていた。