7 語り合いました
イサはそれから3時間以上自分の事を語った。どこに住んでいたのか・両親の話・此処まで連れて来た人たちとの出会いから、別れまでの旅の話。果ては自分の趣味や好きな食べ物嫌いな食べ物まで。
僕も最初の方はちゃんと話を聞いていたんだけど、途中で意識が無くなっていた部分も沢山ある。それ位長い話だったんだよ。しかも僕が「もういいよ」って止めても全然止まらなかった。お腹が空いてきたみたいで、再び木苺を食べ始めてやっとお喋りが止まったんだ。
僕だって普段は長い話だって、難しい話だってちゃんと聴くよ。・・・眠くはなるけどね。
でも、イサの話って聞いてると凄く疲れてくるんだよね。なんでだろ?
で、彼女の話を聞いて分かった事をまとめてみると。
イサは此処からずーっと東にある’’フィール’’って村の側にある妖精の里に住んでたんだって。両親はその里で一番偉い人らしい。
両親の頼みで冒険者達に預けられ、イサが持つ不思議な力を抑えることが出来る此処に連れて来られたらしい。
本当は、イサの力が抑えられるまでその人たちも一緒に過ごすはずだったのに、何故かイサだけを置いて行ってしまったらしい。
以上が、彼女の長い話の中で僕が理解できた事だ。他にも沢山話してたけど、よく覚えてなかったり解らない事もあるみたいで、聞いてる僕も理解できなかったんだ。
イサの話を聞いたので、僕も自分の話をした方が良いのかなって思うんだけど。木苺に夢中のイサに話して聞いてくれるかな?
取り敢えず、イサが黙ってるうちに話し始めた方が良いよね。
「僕はね、」
「あ、あなたの話は聞かなくて良いわ。」
話し始めると直ぐに遮られる。片手を「シッシ」って感じに振りながらだ。
・・・・・・チョット泣きそう。
「勇者に置いて行かれたんでしょう?聞いたから知ってるわ。」
イサが、なんでもない事みたいに言う。
え?ソレってどういう事?聞いたって誰からなの?
イサの言葉に僕の頭の中は「?」が一杯になってしまう。僕の表情を見て、イサが「ふふふふ」っと得意げに笑う。
「私がこの辺りに着いた時、居たのよ。勇者の一行が。・・・・・・あっ、コレ黙ってて欲しいって言われてたんだわ。」
口を押さえながら「今のなし!忘れて忘れて!!!」って騒いでいる。
イサって何か・・・。出会ってから数時間だけど、僕は凄く疲れた。
勇者さま達とどの辺りで会ったのか、どんな話をしたのかを聞きたいけど、この様子じゃきっと教えてくれないよね。この側に居たのかな?それとも近くの街に居たんだろうか?
まだこの辺りにいるって事は、僕の事を気にしてくれてるのかな?
勝手な想像だけど、何だか嬉しくなってきた。僕、勇者さまに嫌われてるわけじゃ無いのかもしれない!
イサと話して疲れたけど、勇者さまの話が少しでも聞けたのは本当に良かったと思う。もしかしたら、此処で待ってたらその内迎えに来てくれるかもしれないね。
ちょっと希望を持って、此処で頑張ろう!迎えに来てくれた時、勇者さまの役に立てるようになってたら、喜んでくれるかな?
その為にも、竜人化の練習を頑張らなきゃ!
イサのお陰で僕は目標を持つ事が出来た。