5 妖精さんを見つけました
早速僕は手頃な木の枝を拾ってきて、魚に頭から刺した。
次に落ち葉と枯れ枝を集め、火炎を吐いて火を起こし少し距離を開けて魚の付いた枝を地面に刺した。
デザートに木苺が食べたいと思ったけど、もう辺りは真っ暗になっていて川まで行くのは怖かったので、今日は我慢することにした。
「明日は木苺を摘んで持って帰ってこよう」
今まではその場で食べるしかなかったが、この手があれば寝ぐらに運んでくる事も出来る。
「♪♪〜〜」
明日からの事を考えると楽しくなり、自然と鼻歌が漏れてくる。
鼻歌を歌いながら魚をクルクルと動かしていると、段々いい匂いがしてきた。
両面に丁度良い具合に焦げ目が付き、魚から出てきていた水分も出なくなった。
どれ位焼けば良いのか分からないけど、お腹も空いてるしソロソロ食べてみよう。
「美味しい♪」
初めて自分の力で手に入れた魚は、今まで食べた中で一番美味しく感じた。
「!?」
アグアグと魚にかじりついていると、背後から視線を感じた。振り返ってみるけれど、何もいない。
気の所為かと思い再び食べ始めるが、再び視線を感じる。振り返ってもやはり何もない。
そんな事を何度か繰り返していると、段々怖くなってきた。
お化けかもしれない!!
そう思ったらもう食事どころではなくなってしまい、大方は食べた魚を火の中に突っ込み、慌てて寝ぐらに潜り込んで毛布に頭まで包まった。
暫くはギュッと目を閉じて震えていたが、疲れと満腹感から直ぐに眠ってしまった。
翌朝、違和感を感じて目を覚ました。
毛布の中で何かが動いている。
恐る恐る毛布をめくってみると、背中に羽の生えた15cm程の妖精が僕にしがみ付いて寝ていた。
「この子・・・何?」
昨夜、寝る前までは何もいなかったよね?
魚を捕まえてる時も食べてる時も、妖精は見かけなかった・・・・・・・・って。
ああーーーーーーーーっ!!
あの、お化け!!!
あの時の視線はこの子だったんじゃないかな!?
「ねぇっ、ねえって。」
そっと小さな体を揺すりながら声をかける。
可哀想だけど、起きてもらって確認しなくちゃ。どこから来たのか、いつ来たのか聞かないと。
昨日の視線がこの子じゃないなら、その正体を調べないと。・・・怖いけど。
この大樹に魔物が寄ってくるとは思ってないけど、今まで無かったからって本当にこの樹の側に魔物が来ないって解ってる訳じゃないしね。
それにしても、いくら揺すっても起きない。
大丈夫だろうか?もしかして、弱ってるとかじゃ無いよね?
もし弱ってたらどうしよう!僕何もできないよ!?
「うぅ〜ん、おにゃかしゅいたよ〜。ムニャムニャ」
オロオロしてたら、何か聞こえてきた。
寝言?寝言なの?
って事は、ただ寝てるだけって事だね。
「よかったぁ」
ホッとしたよ。例え弱ってても僕は何も出来ないから、そしたらこの子死んじゃうもんね。
それにしても、何て言ったんだろう?’’おにゃか’’って何だろう?
とにかく、早くおきてもらわなくっちゃ。
僕は、取って置きの手段を使うことにした。