4 変化しました
洞に戻ってきた僕は、魚を前に悩んでいた。
「これ、どうやって食べよう・・・」
野生のドラゴンとしては、生で食べるのが正解なんだろうけど・・・
「お腹壊しそうだよね・・・」
火炎で焼くのが良いんだろうけど、不器用な僕じゃ消し炭にしちゃう未来しか見えない。
勇者さま達は、野宿の時ってどうやって魚を料理してたっけ?
一生懸命思い出そうと頑張ったけど、僕は毎回、火炎を吐いて火を起こした後は、キャンプの近くで遊んでいたので、料理している姿を見ていない。
じゃあ、出された料理はどんな物だっただろう・・・
確か、木の枝に頭から串刺しにされていた。
・・・・・・絶望的だ。
僕は不器用なドラゴンだ。
魚を串刺しにするなんて、人間には簡単な事でも、僕には難しすぎる。
どうしよう・・・
僕がキッズドラゴンだったら、’’竜人化’’して串刺しなんて簡単に出来るのに・・・
山にいた同じ年頃のベビー達は、殆どが’’一部変化’’出来てたけど、僕はそれさえも出来ない。
僕たちドラゴンは、2つの形態を使い分けながら暮らしている。
’’ドラゴン形態’’ と’’竜人形態’’だ。
ベビーの頃から、仲間たちと遊びながら練習し、一部変化から覚えていく。
そして完全な’’竜人化’’が出来ると、’’キッズドラゴン’’になれるのだ。
「ちゃんと’’竜人化’’の練習しておけば良かった・・・」
勇者さまの仲間になってからは、全く練習をしていなかったので、僕は未だに’’一部変化’’すら出来ないままである。
何とか’’手’’だけでも変化できれば・・・
僕は勇者さま達の姿を思い出し、手を変化させる様に意識を集中した。
「ゔぅぅぅぅ〜」
目を閉じてイメージを膨らませなていく。
頭を撫でてもらった時の’’手’’の感触、道具を使っていた時の’’指’’の動き。
思い出したそれらを自分の手に変化するようイメージする。
「変わらないなぁ。」
なんども挑戦するが、やはり簡単には出来ない。
しかし!頑張って捕まえた魚を諦めることは出来ない!!
ここで諦めたら、’’餓死’’のフラグが立ってしまう!
僕は、日が暮れるまで’’一部変化’’に挑戦し続けた。
頑張った甲斐もあり、徐々に見慣れた手から少し歪だけど、’’人間の手’’に変化して来た。
もう料理ぐらいなら出来そうだけど、折角こんなに頑張ったんだから、どうせなら完璧を目指したい。
僕は更に集中力を高めて’’手’’の変化を進めてみた。
「やったぁ!!」
目の前には’’5歳くらいの子供の手’’に変化した自分の手が。
とうとう成功したのだ!
今までこんなに必死に練習した事ってなかったよなぁ。
変化した’’手’’を感慨深く見つめる。
もっと早くから頑張って練習しておけば良かったな。
’’自分には出来ない’’って決めつけて何もしなかった’’今までの自分’’が悔やまれる。
これからは毎日いっぱい練習して、早く’’竜人化’’出来るように頑張ろう!
決意を新たにした所で、本題の魚料理に取り掛かることにした。