3 魚が捕れました
洞に戻ると、僕は早速寝る準備を始めた。
勇者さまと別れた時に、唯一僕に残された荷物ー毛布に包まるってだけなんだけどね。
夜は結構寒いから、しっかり包まっておかないとね。
僕は変な癖があって、寝てる時に寒さを感じると、無意識に火炎を吐いちゃうらしいんだ。
本能なんだろうね。
僕がその癖を知ったのは、勇者さまと冒険に出てからだった。
山にいた時は、夜寝るときには何時もママが僕を抱えてくれてたから、寒さなんて感じた事がなかったんだ。
「ここで火炎なんか吐いちゃったら、不思議な大樹が燃えちゃうもんね。」
今の僕にとっては大切なお家だ。
しっかり気を付けないとね。
宿屋を火事にしちゃった時みたいな事は、絶対に避けないと。
でも、この大樹なら大丈夫だとは思うんだけどね。
朝になったら毎回、洞の中の落ち葉や地面が焦げているけど、大樹が焦げていたことは無いからさ。
さ、明日は魚捕りを頑張らなきゃいけないし、そろそろ寝よう。
夜中に誰かが洞の中を覗き込んだ気がした。
でも、僕は今日の探検で疲れ切っていたから、目を開けることもできなかったんだ。
キュルキュルキュル〜
翌朝、僕は自分のお腹が鳴る音で目が覚めた。
「ふわあぁぁ。とってもよく寝たなぁ。夜中に誰か来た気がするけど・・・気のせいかなぁ?」
それより、お腹が空いたなぁ・・・
僕は洞から出ると、パタパタと飛びながら、大樹に付いた朝露を飲む。
この大樹は本当に不思議で、朝露を飲むと疲労が回復し身体が楽になる。
空腹もマシになる。
僕が3日間何も食べずにいられたのは、この朝露のおかげだ。
朝露で小腹を満たした僕は、早速小川に向かった。
まず、昨日見つけた木苺で朝食だ。
ゆっくり時間をかけて朝食を食べる。
僕は食べるのも遅いんだよね。
マグマグと木苺を頬張りながら川の方を何気なく見ていた僕は、不思議な光景を発見した。
小川の中に石で囲まれた、小さな生け簀の様なものがあるのだ。
「??」
昨日はあんなのなかったよね?
食べるのを中断して、川を覗きに行く。
生け簀の様な岩の囲いの中には、数匹の魚がいた。
「うわぁぁ!これなら僕でも捕まえられるかも!?」
バシャンと水の中にに飛び込み 、夢中で魚を掴みに行く。
浅い小川なので溺れる心配もない。
飛び跳ねるようにして、魚を追いかけた。
数時間掛けて、ようやく一匹だけ捕まえることが出来た。
まだまだ捕まえたいけど、この一匹を捕まえただけで、僕は疲れ果ててしまった。
「明日また頑張ろう!」
残りの魚たちには、明日また挑戦することにした。
漸く捕まえた大切な魚を抱えて、僕は寝ぐらに戻った。