2 お腹が空きました
近距離にある川まで歩くのも、今の僕には辛かった。
たどり着いた川岸にヘロヘロと座り込み、水をガブ飲みしてからそのまま覗き込む。
「あ、魚がいる。どうにかして捕まえられないかなぁ」
小川の中に魚がいる事は知っていた。しかし、この3日間一度も捕まえれたことはなかった。
山にいた頃も自分では一度も捕まえられなくて、ベビードラゴンの仲間達にも良く馬鹿にされていた。
・・・・・・・・・僕はとっても不器用なんだ。
取り敢えず頑張ってみよう。
火炎を吐いてみた。
小川の水が熱くなった。でも、流れに攪拌されて直ぐに元に戻った。
尖った木の枝を拾い、水の中に入って魚を狙って突いてみた。
自分の足に刺さった。
ガムシャラに手掴みに挑戦した。
疲れ果てて、力尽きた。勿論収穫はない。
だ、ダメだ。もう動けない。
半日頑張ったが、何も収穫は無く余分な体力を使っただけだった。
僕は水の中から岸に上がり、力尽きてその場に倒れこんだ。
このまま餓死するしかないのかな・・・
ペッタリと地面にうつ伏せで横たわり、そんな事を考えている僕の視界の隅に、何か赤いものが映った。
何だろうと、そちらを見てみると、小川の近くにある低木の下の方に、赤い実がなっている。
僕は力を振り絞り、低木のそばまで這って行った。
低木に実る果実をよく見てみると、それは木苺だった。
僕は、すぐに貪るようにそれを食べた。
僕が引きこもっていた洞からは、死角になる位置にその木はあったのだ。
もっと早くに小川の側を探検していれば、こんなにひもじい思いはしなくて済んだのに・・・
「本当に僕って、不器用な上にタイミングが悪いよね。」
勇者さまと一緒にいた頃にも良く戦闘中に、
「おまっ!!、今かよ!!??」
って言われたっけ。
思い出すと涙が・・・
どうして勇者さまは僕を置き去りにしたんだろう・・・
感傷に浸りながら、マグマグと木苺を食べる。
木苺は沢山実っていたので、お腹いっぱい食べることが出来た。
しかも、まだ沢山実っている。
僕はまだベビーなので、食べる量はかなり少ない。
今実っている量があれば、控えめに食べれば2週間はもつ。
その間に何とか魚を捕まえられるようになれば・・・・・・
今日はもう直ぐ日が暮れるので、魚捕りは明日また挑戦することにして、寝ぐらの洞に戻った。