1 途方に暮れました
僕は今、途方に暮れている。
憧れていた勇者さまからのあまりに酷いこの仕打ち。
「ここ、何処なんだろう・・・」
どこに向かっているのかも教えられず、冒険について行っていた僕は今いる場所も自分の住んでいた山の方角も分からなかった。
僕が大人の竜だったなら、’’帰巣本能’’や’’方向感覚’’で山の方角も解り、力強い羽であっという間に家に帰れた筈だが、何しろ僕はまだ’’ベビー’’だ。
空もパタパタと浮く程度にしか飛べないし、ブレスは火炎のみ。
「これからどうしよう・・・」
今まで勇者さまの仲間だった僕は、この辺りの魔物に敵と認識されている。
火炎しか吐けず、装備も何もない僕ではこの辺りの魔物には絶対に勝てない。
・・・・・・詰んでいる。
産まれてから10年。
短い人生だったなぁ・・・
せめてキッズドラゴンにまでは成長したかった・・・・
「お腹、空いたなぁ。何か食べたいなぁ」
今いる場所は、魔物に襲われることも無い不思議な安全地帯だ。
樹齢2000年は経っているだろう、大きく立派な木の根元にある洞の中で、僕はこの3日間をボンヤリと過ごしていた。
朝露が沢山付くし、木のすぐ近くに小さな川が流れているので、水には困らなかった。
しかし、何日もまともな食事をしていない僕は、とっても空腹だった。
今の僕にある選択肢は、①このまま餓死するのを待つ ②魔物に遭遇する危険を承知で、食べ物を探しに行く という二つしかない。
どちらを選んでもバッドエンドになりそうだ。
側の川には、魚が泳いでるけど捕まえられる自信は無いんだよなぁ・・ ・
でも、この不思議な大樹から離れるのは危険すぎる。
取り敢えず水も飲みたいし、’’魚捕り’’頑張ってみようかな。
僕はキュルキュル鳴るお腹を摩りながら洞を出て、2メートル程の距離にある川までポテポテと歩いて行った。