始まりの出逢い
かつて、人間の世界に龍がいた。
正体を隠して龍は人々と暮らしていたが、その存在が人間に知れてしまった。
人間は龍を恐れ、迫害した。
このままでは龍族は滅んでしまうと考えた龍族の神はもう1つの世界を作った。
この時、龍の血をひいた人間の力を借りた。
その時、龍の血をひいた人間と龍族の神は契約した。
「もし、そなたの末代まで我々はそなたの子孫を護ろう」
それが龍族使いの始まりである。
「ついにこの日が来たか...」
綺麗な金色の龍の翼を生やした男が呟き、立ち上がる。
「今、行くぞ」
男は翼を拡げ、扉を開けた。
「...牙.....竜.......竜牙!!」
聞き慣れた声に竜牙の意識は覚醒した。
ボーッとする意識で顔をあげる。
目の前には腕組をしていたクラスメイトがいた。
「....?どうした...」
目の前にいるクラスメイト―辰川龍蘭に起こされた。
腕を組んでいる所を見ると怒っている。
すると、龍蘭は溜め息を吐いた。
「今日は大切な儀式だろ?そんなんで、大丈夫なのか」
あぁ、そう言えばそうだったと今更思い出す。
今日は龍を召還する日。
龍族使いの家の者は16になると龍召儀式と呼ばれる物をする。
それを知っているのは竜牙家の人間と親類だけだ。
「大丈夫だ。なんとかなる」
窓の外を見ながら竜牙は呟いた。
竜牙家の次期当主は苗字で呼ばれる。
だからと言って、竜牙は不便だと思っていない。
次期当主の最初の使命は龍召儀式を成功させる事。
...別に竜牙家を継ぐつもりはないんだが...そう思い、溜め息を吐いた。
「そろそろ時間だ。着替えるんだ」
龍蘭にそう言われ、竜牙は頷いた。
自分の部屋へ戻って、龍族が着ると言われている服を着る。
着替え終わった後、剣を腰の帯にさし、祭壇に向かった。
周りには竜牙家の親類がいる。
両親は週数前、死んだ。
だから、竜牙がこの家の当主になるのだ。
帯にさしてある剣を抜き、剣を掲げ、剣先に霊力を溜める。
すると、霊法陣が現れ、光が溢れだした。
光が収まると、一人の男がいた。
長い金髪を1つに束ね、龍族の独特の服を纏い、背中には金色の龍の翼がはえていた。
金色の龍は竜牙の元まで降りた。
「...やっと、見つけた。龍彩」
龍彩と言う名に竜牙は驚いた。
龍彩とは龍族使いの第一人者。
どうして、その名前を知っているのか、解らない。
「忘れてしまったのか?我は神龍。龍彩、約束したであろう。生まれ変わったら、必ず、迎えにくると」
神龍と名乗った龍は竜牙の頬を触れ、その翼で竜牙を包んだ。
「や、止めろ!!」
竜牙は拒むが、神龍は彼の体に腕を回し、空へと飛ぶ。
「竜牙!!」
見ていられなかった龍蘭は走り出した。
「龍蘭!!」
竜牙は龍蘭に手を伸ばすが、届かなかった。
龍蘭の手は空を裂くだけだった。