プロローグ:私と悪魔様 その3
身体から何かが抜け出る感覚・・・・・・
軽い立ち眩みの後、前を見ると俺の前に、黒いオーラの様な物が集まり球体を象っていく、そこから徐々に形状を変化させ、数秒後には見慣れたライフルが宙に浮かんでいた・・・
槍を捨て、咄嗟に掴みとり、トカゲの化け物に向けて構える。
手に馴染む感覚・・・弾も入っている様だ・・・
トカゲは何かを感じ取ったのか、ライフルが現れた時点で槍を片手に襲いかかって来る・・・
ベレッタ(拳銃)で撃った弾が弾かれたこともある、慎重に慎重を重ね、超至近距離で見舞ってやる・・・
トカゲの槍さばきは、お世辞にも上手いとは言えず、簡単に避けることが出来た。
前転しながら避け、トカゲの背後をとる・・・
化け物とはいえ、敵に後ろをとられるとは三流だな・・・残り2匹いる、さっさと片付けよう・・・
トカゲの鱗に銃口を押し当てトリガーを引く・・・
ベレッタ(拳銃)と違い、こちらはトカゲを見事貫通させた・・・否、撃った所がエラいことになった、返り血で俺は血塗れだ・・・この威力なら、ゼロ距離射撃は必要なさそうだな・・・
トカゲを撃ち殺した直後、もう一匹が切り掛かって来た・・・
もうコレは、近付かずに射撃・・・無論、死んだ・・・
残りの一匹は賢明だったようで、最初の仲間が殺された直後から逃げ出していた・・・
コイツの有効射程距離は500mだったか・・・
狙いを定め、遠のいて行くトカゲにトリガーを引いた・・・
HIT・・・
トカゲは力なく倒れ込んだ・・・300mくらいだったか、狙撃は苦手だが当てれてよかった・・・
■
出て来た子供達は例外無く泥だらけだった・・・
全員、暗い顔をしている、一番背の高い男の子が頭を下げて来た・・・
「傭兵の兄ちゃん、俺達を助けてくれてありがとう!!」
ん、ちゃんと礼が言えるのは良いことだ。
俺はあまり言われ慣れてないからこそばゆいがな。
「リリスという女にお前等を探す様に頼まれたからな
怪我をしている奴はいないか?」
子供達の中にいて、唯一、平然としている女の子が答えてくれた。
「メリッサが脚を怪我している・・・」
その娘が指差した方に居た少女は、背の高い男の子の後ろに隠れた。
背の高い男の子が、その子を前に出す。
「ひぃ・・・」
俺を見て小さな悲鳴を上げやがった。
メリッサと呼ばれた娘は、背の高い男の子に助けを求める。
「グレイちゃん、恐いよ・・・」
グレイと呼ばれた、背の高い男の子は、
「でも、お前、怪我しているだろ?
ここで意地張っても何の意味も無いぞ」
「うう・・・」
メリッサの脚を見ると、確かに青い痣が出来ていた。
「解った、メリッサは俺がおぶって行く
え〜と、そこの女の子とグレイ、あと、そこの小っこいの、ちょっとこっちこい」
グレイと、平然通り越して無表情の娘、そして一番幼く泣き続けている男の子がやって来た。
「俺はコレから片手しか使えなくなる、だから、次にあの化け物が出て来たら戦えない・・・
お前等の中で、あの化け物が出て来ても、冷静に真っすぐ睨みつけることの出来る奴は居るか?」
二人の視線が、無表情の女の子に注がれる。
小さいのは仕方ないが、グレイ、お前は情けないぞ・・・
「解った、おい、そこの名前は・・・」
「ヴィヴィアン・・・」
「そうか、ヴィヴィアン、これを持って来れ」
俺が渡したのはベレッタM92・・・
「それの使い方は・・・」
「知ってる、見てた
コレを魔物に向けて、コレを引けば良いんでしょう?」
無表情にそういったヴィヴィアンは、適当な方向に銃口を向けて撃ってみせた・・・
理解が速くて助かるが、無駄弾撃つな!!
他の3人が驚いて固まっているぞ!!
「・・・よし、それでイイが
それを撃てるのは後9回だと思え!!」
ヴィヴィアンは、俺が首から下げているライフルを見つめている。
「そっちの方が威力高い・・・」
「・・・撃ちたいのか?」
コク・・・
この無表情娘、素直に頷きやがった・・・
将来、碌な大人にならんぞ・・・
「この銃はお前の身体には大き過ぎるから駄目だ」
「・・・これは『銃』っていうんだ・・・」
何となく、この娘が解った、
少し笑ったのだ・・・
この娘、トリガーハッピーになる素養があるな・・・
俺がメリッサをおぶると、リリスが隠れる小屋を目指して歩き出した・・・
■
マコトは出て行って数刻後には戻って来ました。
何故か、今度は大きい鉄の塊を肩に下げてましたが・・・
子供達全員を連れて戻って来たのです・・・
「りりす姉ちゃん!!」
最年少のケヴィン君が私に駆け寄り抱きついて来ます。
私はそっと、ケヴィン君の頭を撫でました。
「・・・やどやのお、おじちゃん、しんじゃたぁあああ!!!」
ケヴィン君は驚きの言葉を叫びます。
おもわず、マコトを見ると・・・
「その、オジさんの名前はもしかして『エドウィン・アンドリューズ』か?」
何故、マコトはオッチャンの名前を知っているのでしょう・・・
オッチャンは、私達が街を出るまで元気で・・・私を怒って、いつも通り元気で・・・
私は涙を流しながら頷きました。
「そうか、その子達が隠れていた茂みの前で亡くなっていた
名前はその遺体が持っていた・・・剣に書かれていた」
マコトがそう告げると、グレイ君も、マコトにおぶられたメリッサちゃんも泣き出しました。
マコトはメリッサちゃんを下ろすと、私に告げます。
「少し落ち着いたら、教えてくれ
俺は外を見て来る・・・」
マコトは小屋を出て行きました。
その後をヴィヴィアンが付いて行きましたが、私にそれを止める気力はありませんでした・・・
■
出来るだけ高い場所を目指し歩を進める。
あの連中を安全な場所に連れて行かなければ、碌な話も聞けないと思ったから、近くにあるという街の方角を確認したかったのだ・・・
後ろから付いて来る、ヴィヴィアンに気を使わねばならんのが面倒だったが・・・
バレていないつもりなんだろうな・・・
そこには、大きな岩があった、かなりデカイ、5メートルはありそうな岩だ・・・
どことなく、空に浮いている岩に似ているから、アレが落ちたのか?
コレに上れば街まで見えそうだが・・・
「おい、ヴィヴィアン、俺に何の様だ?」
木陰に隠れながら付けて来ていたヴィヴィアンは素直に姿を現した・・・
「別に、付いて来ただけ」
「なんで、付いて来たんだ?
危ないぞ?」
「大丈夫、マコトは私に気を使ってくれたから・・・」
この娘、聡いな・・・
というか、バレてるの知ってて付けて来たのか・・・
「俺はこれからこの岩を上るぞ?」
岩を指差し告げる。
「大丈夫、私、上れるから」
さいですか・・・
■
本当に上りきったヴィヴィアンに街の方角を教えてもらう。
街を指差したヴィヴィアンの表情が固まった・・・
「そんな・・・なんで?」
俺も苦笑いが出るのを止められなかった・・・
「おいおい、俺は彼奴等を何処に連れて行けば良いんだ?」
その街は燃えていた・・・真っ赤な焔が街を包んでいた・・・
俺に考えられる要因は1つ、
あの小鬼やトカゲの化け物が街を襲ったと言うこと・・・
風に乗せられて、仄かに死臭が漂っている気がした・・・




