プロローグ:私と悪魔様 その2
俺にとって『命』とは奪うモノだ・・・
今更、善人ぶって『命を大切にしましょう』なんて言えない・・・そんな奇麗ごとじゃ、済まされない数の人間を殺めて来たからだ・・・それについて後悔は無い、俺には『まとも』な罪悪感が無いからだ・・・
それは、当たり前のことである。
例えば、飛んでいる蚊を殺して罪悪感に苛まれる人間は少数派だろう、それと同じである。
しかし、極端な例だが、『生き物を殺してはいけません』と育てられた子供なら、何かの拍子に『生き物』を殺した時に罪悪感が芽生えるだろう・・・俺はそれを習ってない、習ったのは『邪魔になる人間は殺しなさい』だ・・・
故に、罪悪感とは無縁の人生を歩んで来た・・・俺が初めて罪悪感を知ったのは、組織を抜ける前だった。
その時の標的は『子供』だった。
10歳にも満たない、小さな女の子・・・
俺はそれまで『子供』を殺める機会がなかった。
相手にして来たのは、欲に溺れた大人ばかりだったのだ。
なんでその娘が殺されなければならなかったのかは知らない・・・
なんで、殺されないといけないの?
その娘が目で訴えている気がした・・・
俺は馬鹿げたことに、その娘を殺すことが出来なかった・・・
その娘を逃がしてしまった、組織には死んだことにしておいた・・・
今まで確実に仕事をこなして来た俺がだ・・・馬鹿だろう?・・・そのおかげで、報告は信用されたがな。
俺はその娘と、自分とを比べてしまったのだ。
俺は、物心付く前に組織に『暗殺者』として育てられていた、碌な子供時代を歩んでいない・・・
不幸だったのは、俺が普通の子供達を羨ましいと感じる『心』があったこと、そして、なまじ才能にも恵まれていたことか・・・自分で言うのもアレだが、俺は殺しの天才だと思う、今まで殺ろうと思って殺せなかった人間は居ない・・・
滑稽だと思うだろ?
自分の子供時代と、その娘を、俺は重ねたんだ・・・
自分でも馬鹿だと思う・・・
俺はそれ以来・・・昔からか・・・俺は『子供』を殺したことが無い。
むしろ、助けている・・・と、言ったら語弊があるな、子供を道具として扱う糞野郎を殺して回ったことがあったが・・・『悪魔』と呼ばれた俺にしたら滑稽な話だろ?
■
あの小屋から少し離れた茂みの中・・・それを見つけた・・・
腕を捥がれた男の死体・・・年齢は30代くらいか?・・・中世物のゲームに出て来る村人的な服装、そして剣を握っている所を見るに、近くにあると言う村からリリスか子供達を助けに来た大人だろう・・・
まぁ、健闘虚しく何かに殺された様だが・・・身元はリリスに聞けば割れるかもしれないな・・・
俺は、その男が持っていた剣を拝借し、軽く振ってみる・・・瞬間、何か電流の走った様な感覚があった・・・
【エドウィン・アンドリューズのブロンズ・ソード、をINDEXに追加しました・・・】
!?
急に頭に浮かぶ文章・・・何だコレ?!
エドウィン・アンドリューズ?
人名か?
俺の知っている人間に同じ名前の奴は居ない。
ふと、剣の刀身に見慣れない文字で何か書かれていた・・・何故か、読むことが出来た・・・
『エドウィン・アンドリューズ』・・・
訳が解らない、気色悪いから剣は捨てておこう。
俺はホラーなんか信じないが、流石に気色悪過ぎる・・・
俺は考えることを放棄した・・・
ガサ・・・
茂みで何かが動いた音がした。
咄嗟に銃を抜き構える・・・
先程から見かけなかったが、またあの小鬼共かもしれない・・・
茂みの中から声が聞こえる・・・
「大丈夫、人だ」
「グレイちゃん、本当に大丈夫?
見かけない人だよ?・・・」
「もしかしたら、冒険者ギルドからの救助かもしれねぇだろ!!」
「・・・村に居る冒険者に、あんな人居ない・・・」
「ひっく、ひっく・・・おじさんが死んじゃった・・・」
「おい、誰かケヴィンを黙らせろ
モンスターが来るかもしれねぇだろ・・・」
「グレイ、それは無茶、私も泣きたい・・・」
「ヴィヴィアンまで泣き言うなよぉ・・・俺も泣きたいの我慢してんだぁ・・・」
声から人数は4人と推測。
リリスから聞いてた人数と一致する・・・全員無事だったのか・・・
死んでいる男を見る・・・コイツが守ったのか・・・
だとしたら、コイツを殺した奴は何処へ・・・刺し違えたなら、死体が転がっている筈だ・・・
俺は茂みに声を掛ける。
「おい、ガキ共、今は危ねぇから少しソコに・・・」
「危ない、傭兵の兄ちゃん!!
後ろだ!!」
!?
後ろだ、と言われて後ろを振り向く奴は馬鹿だ、
注意されている時点で危険、なら、即座に避けるべき・・・
とりあえず、前方に転がる様に回避行動をとり『何か』を避ける・・・
俺の居た場所に突き刺さる槍・・・
それを放ったのはトカゲ型の化け物だった・・・それも3体・・・
なんだよコレ?
モンスター大集合かよ!?
銃を抜き引き金を引く、響き渡る銃声・・・
しかし、トカゲの化け物は、狼や小鬼と違い、その固い鱗で覆われた頭は銃弾を弾いてみせた・・・
流石に、無傷と言う訳にはいかずダメージは喰らっているようだが・・・
おいおい、マジかよ・・・
俺にとって、銃は必殺の武器である、少なくともヘッドショット当てて殺せなかった奴は居ない・・・
それを耐えるとか、クッソ・・・折角、『どら焼き』という手がかりを見つけたのに、みすみす死ねるかよ!!!
俺は地面に突き刺さる槍を手に取り構えた。
また、電流の走る様な感覚・・・
【刃こぼれしたリザードマンの槍、をINDEXに追加しました・・・】
今回は人名が出なかったな、その代わり『刃こぼれした』が付いた・・・
確かに槍には、地面に突き刺さった時に欠けたであろう刃こぼれが目についた・・・
だが、これである仮設が浮上した・・・コレは所謂、スキルというヤツではないか?・・・
今の所、持った武器の名前が頭を過るだけだが・・・
それにしても【INDEX】ってなんだ? 索引? 目次?・・・
INDEXについて悩んでいると、頭の中に【OPEN?】と出て来た・・・何コレ、恐!!
OPEN・・・・・・
トカゲの化け物が襲って来ないことを良いことに、オープンしてみるか?・・・
どうやら、俺の持ってる銃を警戒しているらしいし・・・
その辺り、小鬼とかより利口なんだろうな・・・
「お、オープン・・・」
とりあえず呟いてみた・・・そしたら・・・
頭に次々に浮かぶ、銃器の名前とその画像、その武器の詳細が書かれた文章・・・いや、銃器だけじゃないな、刃物も混ざってるし、火炎瓶も見えたぞ・・・戦車なんかもある・・・今持ってる槍も見つけた・・・
端っこの方に見えるパラメーターはなんだ?
とりあえず、今は無視だな・・・
武器の映像の中で、昔良く使っていたライフルを見つけた・・・そのライフルに意識を集中してみる・・・
【名称:ベレッタAR70/90 消費MP:500・・・造りますか? 造りませんか?】
よく観察すると、端っこにある青いゲージが半分近く変色している・・・ゲージには【MP】と書かれていた・・・まるで、ゲームだな・・・
俺は迷わず、MP500pt消費して、【造ります】を選択した・・・




