緋イ刃 ト黒イ霧
初めてだ。
実に[不覚]の二文字に尽きる。
その冷たくとげとげしいモノを
僕の後頭部に突きつけたまま。
前に立つ東洋人風の男が口を開いた。
「俺のコードネームは《黒子》。急に悪いな。」
全くだ。
「それでだな。お前の腕が必要なんだ。戻ってこい」
この男は話の仕方をしらないのたろうか。。
「《黒子》?」
「あぁ、コレを見せるのを忘れていたな。」
腑に落ちなそうな顔をした僕に
男は高々と掲げた左手を僕に向けて見せた。
黒い薔薇の指輪・・・。何度見ても趣味が悪い。
「ルガーノの人間ですか.....。」
渋い顔をしたように見えたのだろうか。
まぁ、実際そうしたのかもしれない。
兎に角、男は[困った] そういう顔をした。
「そう嫌な顔するなよ」
ところで、余談ではあるが、
男があれこれと話す裏で、
女が僕に突きつけたその銃は
依然、 動くことはない。
「 仕方がない。」
そう言うと、男は見苦しいほどにビカビカと光る
黒いスーツの中に手を入れ、なにか取り出して見せた。
「これを見ろ。誰だかわかるな。」
目を疑った。
男が取り出した携帯の画像に写った人は、
僕が一生の中で、唯一《父》と慕う人。
そして、3年前に亡くなったとされるヒト。