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ユメゴコチ

作者: 華城渚

これは現実ではない。

目の前の出来事をはっきり理解できない。頭も上手く働かないしぼんやりとしている。

自傷することも言葉を発することも難しく感じる。


きっと......だろうか。


現実じゃないなら考えるは一つしかないはずなのにその言葉は出てこない。

誰かに命令されているわけでもない。でも、体は自由に動かせない。


まるでゲームのキャラクターになったような気分だ。

勝手に操られ、物語は進み、終わりを迎える。


この場所で命は無価値に等しいだろう。

生きても死んでもどうせ終わりは来るのだから。


「それでいいのかい?」


声をかけられた。

辺りを見回しても声の主はいない。

実体はなくとも存在していることはなんとなくわかった気がした。


何を言われようとどうすることもできない。

ただ指示された通りに行動する。

それが今できることだろう。


「立ち止まる必要はない。」


「自分で考えていいんだよ。」


「自分がどうしたいのか言ってごらんよ。」


したい......こと......?


ここにいるのは、もう諦めたから?


何に対してだろうか。

考えようにもまともに思考できない。思考させてくれない。


息切れがしてきた。 疲れることなんてしていないのに。

考えるのをやめろと警告されているのだろうか。


ここにいろ。   動くな。   考えるな。   待て。   何もするな。


分かっている。

警告されているわけではない。

ただ体が拒絶している。 


何に?   わからない。 どうして?   わからない。


簡単な言葉すら話せない。考えられない。理解できない。

今抱いている感情は何だろうか......


恐怖? 悲しみ? 妬み? 悩み? 蔑み? 


ああ......これはすごいな。

ネガティブな言葉はすらすら頭に浮かんでくる。理解もできる。


これは、この感情は明確に毒だと分かっている。 でも溺れてしまいたい。

それはそれしかできないからか、それしかやることがないからか、それしか理解できることがないからか。


こんなにも甘ったるくて、濃厚で、一つ飲めばきっと元には戻れない。

それでも......それでいいから......それしか...ないのなら......




もういいんじゃないか。




体は動かない。まるで茨がまとわりついているように。

頭は働かない。まるで最初からなかったかのように。

声は誰にも届かない。話し方も忘れてしまったのだろう。


それでいい。それでいい。それでいい。それでいい。それでいい......



「本当にいいんだね?」


......何が?


「もう諦めるんだね?」


......何を?


「これは......じゃないんだよ?」


......何が言いたい。


「もう目を覚ませ。」



「 「   」の代わりに生きてくれるんだろ? 」




病室にいた。

体は動かせないし頭はよく働かない。

でもここに存在しているとはっきりと分かる。



長い ”夢” から覚めたようだった。

ずっと見ていたいと思ってしまう夢だった。



ああ......でも悲しいな。

きっと記憶には残らない。

いつかは霧散し消えていく。



忘れないなら一つだけ......

もう会えるとは思っていなかった......


いつの日かもらったお守り。

握っていた力をさらに強め、感謝と祈りを捧げた。



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