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騎士ゲール・ホッドによる討伐伝 ~あるいは、一人の騎士が英雄になるまでのサーガ~  作者: よぎそーと
四章

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49 敵の苦悩と苦労

「とんでもない事になったな」

 山狩りにやってきた部隊の司令部。

 そこで損害報告を受けた指揮官はため息を漏らした。

「まあ、死んだのはゴブリンだからかまわんが」

「露払いとしては上出来かと」

 側に控える司祭服を着た者が意見を述べる。

 損害は大きいが気にする事は無いと。

「まあ、確かにな」

 指揮官とてそれは分かってる。



 ゴブリンなど彼等からしても使い捨ての駒でしかない。

 低脳無能で非力。

 使い道のないゴミで、使えない雑魚。

 それが妖精共の中でのゴブリンの評価だ。

 敵対する人間からだけでなく、共に生きる者達からも邪魔者扱いされていた。



 それも当然だ。

 ゴブリンはとにかく問題をおこす。

 これがゴブリン居留地や居住区の中でなら問題は無い。

 同族同士で殺し合おうが盗み・奪い合おうが、だまし合おうが。

 それは同族内での問題だ。

 ゴブリンの中で解決するべき事だ。



 だが、ゴブリンが問題なのは、これを他の種族の居場所でも行う事だ。

 何を考えてるのか、異種族が共に暮らす都市や、種族毎に居留地や居住区。

 こういった場所にまでやってきて騒ぎを起こす。

 強盗強奪に暴行傷害殺人。

 とにかく様々な問題をおこす。



 これは種族の特性である。

 確かに低脳非力なゴブリンだが、一応は智慧はある。

 思考能力はある。

 しかし、そんなもの以前に性質という部分に問題がある。

 種族としてもってる行動指針というべきだろうか。

 ゴブリンのこれはとにかく衝動的で刹那的で快楽欲求しかない。



 面白い事がしたい、楽しい事がしたい。

 自分の思い通りにしたい。

 好き勝手にしたい。

 他人などどうでもいい。

 自分さえ良ければそれで良い。

 なおかつ、自分が一番上でなければ納得しない。

 これらが満たされなければ発狂する。



 我が儘なガキという冪だろうか、一言でいうならば。

 思い通りにならなければ癇癪を起こす。

 そんな性質をゴブリンは例外なく誰もが持っている。

 この為、思い通りにするために最も手っ取り早い手段に出る。

 暴力だ。



 かすかにもってる思考能力もこの為に使う。

 如何に上手く騙すか。

 如何に上手く盗むか。

 どうやって相手を痛め付けるか。

 こんな事ばかり考える。



 そこに仲良くやっていこうという考えはない。

 もともと協調や協力という性質がないからだ。

 無いから思い付かない、周りを見ても気付く事がない。

 他の種族が何らかの形で種族内や種族間で折り合いを付けていてもだ。

 ゴブリンだけはこれが出来ない。



 こんなゴブリンを大人しくさせる方法は一つ。

 圧倒的な力で叩き潰す。

 恐怖でひれ伏させる。

 こうした時、ようやくゴブリンは大人しくなる。

 暴威をもってあたってくる者達に恐怖を抱いて。



 ただし、これも正解かというとそうでもない。

 かなわない相手にゴブリンは恨みを抱く。

 自分たちを抑圧する者達の寝首をかこうと狙いはじめる。

 そんなゴブリン達の思考はこうだ。

「俺達を虐げたあいつらに目に物みせてやる」

 この時、自分たちゴブリンが相手に損害を与えてるという事実は抜けている。

 抜けてるというより、そんな事を全く考えてない。

 ゴブリンからすれば、何一つ損害など与えてないという事になってるからだ。



 これはゴブリンの加害性というか嗜虐性による。

 自分たちは何をやっても許される。

 欲しいものがあれば奪い取る、それの何が悪いのか?

 これが基本的なゴブリンの考えだ。

 相手の苦痛や損害など一切考慮しない。

 悪い事をしてるという考えもない。



 そんなゴブリンが反撃をくらったらどうなるか?

 悪い事をしてないのに暴虐をうけたと考える。

 ゴブリンは自分たちを被害者だと考える。

 危害を加えていた加害者であるという事実に気付く事も無いからだ。



 このため、ゴブリンは様々な種族から敵視されている。

 油断をしたら背後から刺される、それを当たり前としてる連中だと。

 実際、そういった事件が覆い。



 だからこそ扱いに困っていた。

 さっさと絶滅させれば良いのだが。

 それも出来ないのが現状だ。

 彼等の崇める神が禁止してるからだ。

「あらゆる者達に生きる権利がある、か」

 崇める神の教えを口にする指揮官。

 吐き捨てるように呟くその顔は苦々しげに歪んでいる。

 このお題目のせいで、邪魔でしかないゴブリンを駆逐も出来ない。

 おかげで様々な場所で被害が出ている。



 さすがに罪を犯したゴブリンへの処分は神も許している。

 だが、種族の絶滅までは認めてない。

 このチグハグさが多くの種族をいらだたせる。

 そんな彼等にとって戦場でゴブリンに無謀な突撃をさせるのは効果的な処分手段だった。

 これなら神も黙認してくれる。



「神の御心にかなうのも大変だ」

「心中、お察しします」

 側にいる司祭もいたわりの言葉をかける。

 神に仕える身であるが、同族の苦境を考えると神の教えを前面に出す事も出来ない。

 教義と現実の間で、司祭も苦労と苦悩を重ねているだ。



 ただ、これで邪魔者を大きく削減する事が出来た。

 それはありがたい。

 ついでに邪魔な妖精・魔物の森も処分が出来た。

 人を襲う妖樹や妖花は妖精達からしても邪魔なものだ。

 人里近くにあると面倒な事になる。

 だが、これも神のお教えのせいで駆除もままならない。

 せめてもの意趣返しにと、この山の中にある怪物植物の森にゴブリンを突っ込ませて。

 共倒れになれば万々歳と。

 こんな山の中の怪物植物を根絶やしにしても、生活圏の邪魔な森が消えるわけではないが。



 だが、邪魔者はこれで消えた。

 航空戦力のハーピーと巨大虫も消えたのは痛いが。

 これらは指揮官の指揮下にあるわけではない。

 あくまでも協力者というか増援である。

 指揮官ではなく、派遣してきた者達が指導して指揮をしている。

 なので、指揮官の言うとおりにはならない。



 だからこそ効果的な連携がとれなかった。

 出来るならば、指揮官もこういった航空戦力を有効活用したかった。

 ゲールが考えたように、損害がでた時点で撤退。

 地上戦力と共に前進させ、敵を空と陸の両方から攻撃したかった。

 好き気ままに動いて命令を無視するハーピーにも。

 同族の女王虫などの指示しか受け付けない巨大虫にも。

 そんな協力的な行動など求めようがないが。

 指揮官からすれば、これらもゴブリンと同じようなものだった。



 なので、これらの動きを利用するしかなかった。

 勝手に動いて損害をうけようと、それは指揮官の責任ではない。

 損害をうけたなら、そこから何かを読みとり、今後に活かす。

 そうやって利用するしかなかった。

 まあ、多少は目撃情報を提供してくれるが。

 それだけしか協力してくれないのだ。

 ならば、心配も手助けも無用というものだ。



 そうして邪魔をする連中が大幅に減り。

 指揮官はようやく指揮官らしい仕事が出来るようになる。

 足を引っ張るゴブリンもハーピーも巨大虫もいない。

 残ったのは指揮官の指示に従う正規兵。

 ようやく軍隊らしい行動がとれる。



「では、行こうか」

「はい」

 機は熟した。

 指揮官は待機してる兵達の所へと向かう。

 率いる軍勢に命令を出すために。



 今、彼の前にはそうそうたる顔ぶれが並んでる。

 力に優れたブタ頭のオーク兵。

 頭に角の生えた巨漢といったオーガ兵。

 体力はないものの、魔術が使える人間の兵。

 これらが指揮官であるオーガの前に並んでいる。



「行くぞ!」

 短い号令。

 それを聞いた正規兵達は、

「おおう!」

 大声で返事をする。



 怒号は轟きとなって風をふるわせ。

 風はそれを祈祷師に届けた。

 受け取った祈祷師は仲間にそれを伝える。

 受け取った者の一人であるゲールは瞬時に察した。

 こいつはこれまでの敵と違うと。



「来るぞ」

 自然と顔と気持ちが引き締まる。

 迫る強敵の存在を確かに感じ取り、ゲールは身震いをおぼえた。



気に入ってくれたら、ブックマークと、「いいね」を


 ファンティアにて新しい話を出してる。

 時代劇っぽい何か

 見本は活動報告にもあげてるので、そちらをまずは見てもらえれば


 ↓


時代劇風味のお話「 一子相伝 」の販売開始、および見本

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/719397/blogkey/3344443/

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 ファンティアへのリンクはこちら↓


【よぎそーとのネグラ 】
https://fantia.jp/fanclubs/478732


 投げ銭・チップを弾んでくれるとありがたい。
登録が必要なので、手間だとは思うが。

これまでの活動へ。
これからの執筆のために。

お話も少しだけ置いてある。
手にとってもらえるとありがたい。


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