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42 怪物と魔物が統べる、妖精の国

 物影を伝って移動を続けた調査隊。

 彼等は山を下って初めてみる平野へと辿り着いた。

 昔話で聞いた、先祖が住んでいた場所。

 そこを初めて見た彼等は感動に震えたという。



 だが、気分が高揚したのはこの時だけだった。

 進むにつれ、様々な物を見聞きするにつれ、気分は沈む一方となった。



 そこは地獄だった。

 かつて人が住んでいたその場所は、妖精がはびこる異郷となっていた。

 住人の多くは、ゴブリンやオーク、オーガといった人間型の妖精共。

 それらの中心に虫型の妖精がいた。



 地域によっては獣型の怪物が屯していた。

 これらには人の体に獣の頭という、いわゆる獣人と呼ぶべき者達も混じっていた。



 そんな異形の者共が支配するのが平野だった。

 そこに人の国があったという面影を探す事は出来なかったという。

 人々の記憶の中にだけある思い出。

 そんな形の無い残骸だけが、人の世の根拠だった。



 ただ、人が全くいないわけではない。

 それらはまだ存在していた。

 怪物共に囲まれながらも。

 ただし、人らしく生きてるとはとても言えなかった。



 それを見たのはとある集落の中央にあった祭壇の上。

 引き摺られてきた人間がその上に供えられた時だ。

 獣のように暴れ騒ぐその姿は、とても理性的とはいえない。

 だが、姿形は紛れもなく人間だったという。

 ろくに教育も受けられずに生まれ育ち、言葉すらも失っていたのだろう。

 そんな人間が人間型の妖精──オーガであったという。

 それに連れられ、祭壇の上に置かれた。



 置かれた人間の前に、おそらくは祭司であろうオーガが立つ。

 それは詠唱のような言葉をうたいあげ。

 手にしたナイフを人間に突き立てた。

 貫かれた人間はナイフが突き刺さった所から急速に干からびていった。

 同行した祈祷師によれば、

「霊魂がナイフからこぼれ落ち、祭壇に吸収されてる」

と感じたという。

 その祭壇は大地につながり、吸収した霊魂を流していった。

「間違いない、あれは生け贄の儀式だ」

 その為の供物として人間が使われていた。



 別の所では、大量の人間が巨大虫によって運ばれていたという。

 おおきな倉庫のような建物から次々に運び出される人間。

 それらは巨大虫の尻から出た針に突き刺されて動きを止めて。

 蚕の繭をおさめる枠のような虫の巣に押し込まれた。

 そして虫が吐き出す糸によって繭にされ。

 その繭の中に卵が産み付けられていった。

 おそらく、卵から孵化した幼虫の餌にされるのだろう。

 見ている者達はそう予想した。



 これらより幾分マシな扱いをされてる者達もいた。

 田畑で労働に住持させられてる者達。

 作業場で道具を作らされてる者達。

 これらは生け贄や虫の餌にされてる者達と違い、言葉を喋り智慧もあるように見えた。

 作業用の奴隷として最低限の能力が必要だからだろう。

 幸せとはとてもいないが、生け贄や虫の餌よりはマシなのかもしれない。



 そんな同胞達の姿を見て、調査隊は帰還した。

 人間の扱いのあまりの酷さに怒りをおぼえながら。

 しかし、それらを打破するだけの力もなく。

 出来る事は何もない。

 ならば、今はとにかく情報を持ち帰ろうと。

 山をおりた者達は泣く泣く帰還する事にした。

 虐げられてる者達を見捨てて。



 その後も何度か山をおりて様子を見に行く事はあった。

 しかし、出てくる結果はいずれも同じ。

 妖精共の支配する世界がそこにあり。

 人々はその下で苦難というのも生ぬるい日々を送っていた。



「酷いな」

 話を聞いたゲールはむかつきをおさえかねていた。

 悲惨な事になってるとは思ったが。

 実際に見てきたという話は予想を簡単に超えてきた。

「そう、酷い話だ」

 村長も頷く。

「これで終われば酷い話で終わっただろう」

「…………どういう事なんですか?」

「話には続きがある。

 やりきれない事がな」

 忌々しげに村長は続きを話した。



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