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41 山を越えられなかった者達

 かつて、開物や魔物、妖精があふれた時代。

 これらに襲われた者達は必死に戦った。

 しかし、騎士団は壊滅、義勇兵達も死に絶え。

 国は壊滅。

 人々は散り散りになって逃げるしかなかった。



 あてもなく逃げるうちに、多くは死に。

 残った者達も身を潜めるしかなかった。

 見つかれば殲滅する事になるのだから。

 そうして逃げた者達のうち、連なる山脈を越えたのがシーン達である。



 だが、全員が山を越えられたわけではない。

 それだけの備えもなく、体力もなく。

 とても険しい山を登り切る力のない者達も多かった。

 そういった者達は、山脈の東側に身を潜める事になった。

 窪地の地下に隠れてた者達のように。



 窪地に逃げ込んだ者達は、どうにかこの場にて居場所を確保。

 生き抜くために死にもの狂いになっていく。

 食べられる木の実や果実、山菜を見つけ。

 鳥や獣を狩って肉を得て。

 遠く離れた川まで水を汲みに出向いた。



 そうしてる間にも多くの同胞が死んでいった。

 そもそもとして食料が乏しい。

 逃げ込んだ全ての人間が食い扶持にありつけるわけではなかった。

 そうなると生き残りの中で盗みあい、奪い合いが始まった。

 時間をおかずに殺し合いにまで発展した。



 昨日まで助け合ってた者達が、今日は憎しみ合う敵になる。

 そんな時期を過ごし、窪地の者達はどうにか落ち着いた。

 食い扶持が皆に行き渡るくらいになるまで減ったところで。



 だが、それからも楽が出来るわけがなかった。

 人数が減った事で労力も減った。

 限られた労力で生活の為に必要なものを作り出すのも大変な事だった。

 頭数が多ければ作業人数も増えるのだが。

 増えればまた食料を巡って殺しあいになる。

 おいそれと人を生んで育てる事も出来なかった。



 そんな状況で地下に穴を掘り。

 身を隠すための避難壕を拡張して住居にし。

 地下に住み込むようになった。



 ここに至るまでに何代もかける事になった。

 その間に様々な技術や知識が失われた。

 伝承する者がいないのだから仕方ない。

 わずかながら今もかつての出来事が言い伝えられてるのが奇跡である。



 出来ればこんな暮らしを抜けだしたい。

 かつてのように、堂々と太陽の下を歩きたい。

 しかし、はびこる開物や魔物、妖精の目を考えるとそれも出来なかった。

 生き残りたいなら息を潜めておくしかない。



 だが、永遠にこうしてるつもりもない。

 かつての伝承によれば、おおくの人間が各地に散り散りに逃げたという。

 ならば、自分たちのように生き残ってる者達もいるかもしれない。

 それらと手を取り合えれば……。

 そう考えて、少しずつ周囲の探索も進めた。

 生き残ってる同胞と合流するために。



 最初はそう簡単にはいかなかった。

 まず、周辺がどうなってるのかすらも分かってなかったのだから。

 生き延びるためにここまでやってきて、それからは長く隠れて住んでいたからだ。

 なので、まずは周囲がどうなってるのか調べる事から始めた。



 苦難は続く。

 なにせは周囲は怪物だらけ。

 かつて人類に襲いかかったゴブリンのような妖精だけでなく。

 木々や草花の姿をした怪物が。

 獣のような魔物がそこかしこにいる。

 これらを凌ぐだけでも大変な労力が必要だった。



 そうした困難を超えて周辺の様子を明らかにしていき。

 かろうじて逃げ延びた者達の里との接触を果たした。



 生き残りの多くは、山地にまで逃げ込んだ者達だった。

 平野にはほぼいない。

 それらは怪物達に見つかり滅んだのだろう。

 行き来が困難な場所だから、魔物の目を避ける事が出来たのだ。

 そんな集落が幾つか見つかり、交流を持つようになった。



 互いに足りない物を与え合う交易も始まった。

 これのおかげで生存性が大きく高まった。

 人口が増える程では無いが、栄養失調などの死亡者は減った。

 そうして生活がある程度安定すると、この先を見るようになる。

 かつて国があった場所は、今はどうなってるのか?

 疑問の答えを求めるようになった。



 調べるために人が送り込まれる事になった。

 この先どうするにしても、相手の事も知っておかねばならない。

 その為に何人かが山をおりていった。

 帰ってこれるかどうかも分からぬ旅のために。



 幸いな事に、出向いた者達は帰還した。

 全員無事に。

 だが、彼等の持ち帰った話は、決して明るいものではなかった。

「地獄だな、言うなれば」

 村長は伝え聞く話をそう評して話を続ける。



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