38 ここにいないモノ
森の願いを叶え、先へと進むゲール達。
しかし、山を越えてすぐの出来事は、この先の困難さを予想させた。
その思いをゲールは短い言葉であらわす。
「とんでもない所に来たな」
その言葉通り、その後もとんでもないものに巡りあってしまう。
木々や草花に似た魔物は言うまでもなく。
川にはトビウオのように空を飛び、人に襲いかかる怪魚が。
沼には肉食の巨大なカエルが。
空には腕の代わりに翼を持つ妖精、ハーピーが。
そして、木々の間から毒を吐くトカゲや、二つの頭を持つ狼などが迫ってくる。
様々な怪物がゲール達に襲いかかってくる。
敵だらけなのは想像していたが。
その猛攻は予想を超えた。
もちろん、これらが組織だって襲ってくるわけではない。
ただ、人間を攻撃するという習性にしたがってやってくるだけだ。
それでも、回数が多い。
一斉に襲ってこないのは良いが、何度も何度もやってくるのは面倒でしょうがない。
「さすが妖精共の世界だ」
人が制圧され、怪物と魔物の巣窟になった。
そうは聞いていたが、まさかここまでとは思ってもいなかった。
ただ、襲ってくるモノ達におかしな所がある。
「ゴブリンがいません」
気付いたのはサイトだった。
彼の観察眼はここでも発揮された。
「襲ってくるのは自然の怪物ばかり。
いってみれば、野生の動物のようなものです。
それにしては物騒ですけど」
そう言ってサイトは考えを口にしていく。
「怪物だらけの場所なのはそうですが。
でも、ゴブリン達がいません。
オークやオーガなども。
こういう、なんて言うんでしょうか。
人の姿に近いというか。
多少は智慧をもつものがいません」
サイトが気付いたのはここだった。
言われてみれば確かにそうだ。
襲ってきたのは野生の動物のようなものだけ。
ゴブリンのように、多少なりとも社会を作ってるような連中は見てない。
「何かあるのかな?」
「分かりません」
サイトは率直に答えた。
分からないのだから分からないと正直に。
「ただ、もしかしたらですけど」
「なんだ?」
「もしかしたら怪物や魔物、妖精にも違いがあるのかもしれません。
人と動物のように」
人も動物の一種である。
だが、智慧があり、道具を使う。
この違いで他の獣との間に一線を引いている。
同じように、怪物や魔物に妖精も違いがあるのかもしれない。
動物のようなものと、人間のようなものとに。
森にいたようなものが、いわゆる動物のようなもので。
ゴブリンやオーク、オーガなどは人類のように智慧があるのかもしれない。
少なくとも道具を使い、それなりに社会的な行動をとってる。
「だから、森の中にはいないと?」
「もしかたらそうなのかもしれません」
正解かどうかは分からない。
だが、考えの一つではあるかもしれない。
「なら、ゴブリンとかがいないのは──」
「町を作ってそこで暮らしてるのかも」
まさかと思う。
だが、否定は出来ない。
今は様々な可能性がありえる。
確かめるまで結論は出せない。
「そうでないと良いんだけど」
もしサイトの予想通りなら、とてつもなく面倒になる。
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