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29 森の協力者達

「何とかなるかもしれません」

 思い思いの意見を出し合ったあと。

 サイトはそうこぼした。

「上手くいくかどうかはわかりませんが」

「いや、それでいい」

 成功率をゲールは問う事はなかった。



 なにせ急ごしらえの作戦だ。

 完璧なぞ求めようがない。

 まずもって、情報も戦力もない。

 これで効果的な作戦など作れるわけがない。

 それでも無理を通していく。

 目の前の問題を片づけるために。

 少なくとも、被害の拡大は何とか止めたい。

 そのきっかけだけでも作っておきたかった。



「ただ、どうしても人手は必要になります。

 森の民の皆さんに協力が得られればいいのですが」

「どうかな?」

 この中にいる森の民に聞いてみる。

「話を聞いてみないとなんとも言えないよ」

「それもそうだな」

 というわけでゲールは話を促す。

 何をするのかを。



 作戦は実に大雑把なものだった。

 そして大がかりなものだった。

 成功すれば効果は大きい。

 だが、被害が拡大する可能性もある。

 しかし、少ない人数でどうにかするならこれが一番だろうとも思えた。

 少ないとはいえ、それなりの人数も必要だが。



「それしかないか」

 話を聞いたゲールは作戦を採用するつもりでいる。

 他に良い方法があるわけでもないからだ。

 上手い方法があれば、ゲールもそちらを選ぶ。

 だが、今のところそんなものはない。

「他に何か考えはあるか?

 あるなら今のうちに聞いておきたい」

 返事は無い。

 皆、首を横に振っている。

「なら、サイトの案でいこう」

 やる事は決まった。



 作戦の第一段階。

 まずはシーンによる森への呼びかけが始まった。

「森よ、木々よ。

 お願いを聞いて」

 祈願をするシーンの思いは木々を通じて森の隅々に至る。

 そこからあらゆる協力者が次々にあらわれる。

 その全ては森の中で生きるもの。

 やってきた巨大虫やゴブリンに脅威を感じていたものである。



 熊に、鹿に、リス。

 様々な動物。

 それらがシーンの願いを聞いて集まってきた。

 そして、立ち枯れしてる木々に群がっていく。



 リスは木々の根っこにかじりつき、木々が倒れやすくする。

 ある程度作業が進むと、クマが木々を倒していく。

 倒れた木々をクマは運び、まだ生きてる木々との間に距離を作る。



 鹿は背中にリスをのせて運ぶ。

 リスは次々にやってきて、木々の根っこを削っていく。

 それが終わると鹿は、立ち枯れしてる木々の下に生えてる草を貪っていく。

 空腹を満たすのと同時に、今後の作業の為に。



 枯れた木々の外縁。

 そことまだ生きてる森の間に空白が生まれていく。

 怪物や魔物、妖精との空間を隔てるように。



 こうした作業が進められてる間に、ゲールも動いていく。

 狙うのは周辺に出回ってる巨大虫とゴブリン。

 これらを見つけて次々に倒していく。

 こいつらは更に多くの樹液を集めるために周辺に出回っている。

 放っておけば枯れた樹木を増やす事になる。

 生かしておくわけにはいかなかった。



 見つけるのは簡単だ。

 木々からシーンが話を聞き出すのだから。

 居場所はすぐに分かる。

 それらに奇襲をかけて次々に撃破する。



 移動も簡単だ。

 熊や鹿が背中を貸してくれる。

 これらに乗ればあっという間に移動する事が出きっる。

 これらの先頭に快速号に乗ったゲールがいる。

 即席の騎兵隊は、森の中を所狭しと駆け巡っていった。



 見つければ即座に突撃していく。

 ゲールの手にする長剣が駆け抜けながら巨大虫を、ゴブリンを切りつけていく。

 一撃離脱の高速戦法は騎士ならではだ。

 馬の突進力と、長剣の鋭利さがあわさる。

 巨大虫もゴブリンも、その威力に体を両断されていく。



 生き残りは慌てて逃げようとするが、そうもいかない。

 ゲールに続くカイルが慌てふためく者を切っていく。

 騎乗戦闘は初めてのはずなのに、カイルは的確に怪物である妖精を斬り殺していく。

 それを逃れても終わらない。

 遠く離れてもエドの弓が狙っている。

 木々の影に隠れるよりも早く、熊の背中にのるエドが射貫いていく。

 こうして巨大虫やゴブリンはゲール達が片づけていく。



 森も協力してくれる。

 戦闘の間、草や蔦が怪物達の足に絡みつき。

 枝葉が揺れて飛んでる巨大虫を妨げる。

 更に木々がざわめき騒音をたてる事で、怪物達の声をかき消していく。

 騒動が外に伝わる事はない。

 森のざわめきはさすがに分かってしまうが。

 そこで何が起こってるかは伝わらない。

 小石隠すにゃ砂利の中。

 より大きな騒ぎがあれば、小さな問題は見つかりにくい。

 おかげで枯れた木々の中にいる魔物の妖精達には何も伝わらない。

 正確な情報が伝わらない事が怪物・魔物である妖精達に焦燥感をおぼえさせる。



 枯れた木々の中の虫の巣は大騒ぎになっていく。

 生きてる森の木々からたちのぼるざわめき。

 それは巨大な巣を囲うように包んでいる。

 その大音声が虫に焦燥と危機感をおぼえさせる。

 そんな彼等は巣に籠もっていった。

 ある意味、籠城と言えるかもしれない。



 だが、籠もるにしてもするべき事はある。

 何が起こってるのかを確かめる。

 偵察や調査は必要である。

 状況を確かめる事は必要不可欠だ。

 虫の巣に籠もる者達はこれを怠った。



 それか、さっさと逃げてしまえば良かった。

 危険があるのは分かってるのだ。

 ならば、その場から即座に逃げる。

 これが一番良い。

 何も得られないが、損害が増える事はない。

 強いていうなら、作りあげた巨大な巣が損失になるだろう。

 しかし、命を失うよりは良い。



 巣の中にいる者達はこのどちらも行わなかった。

 兵力の温存という意味では間違ってないかもしれない。

 だが、あまりにも消極的に過ぎた。

 慎重とすら言えないほどに。

 怪物達は何もしてない。

 様子見や静観すらも。

 なにせ、何も見ようともしないのだから。



 ただ、一部はそうではない。

 虫の巣の周辺に住んでるゴブリンだ。

 これらは周りの騒ぎを聞きつけて動きだす。

 この場から逃げ出していく。



 ゴブリンの性質は矮小で残虐。

 勝てるとなればどこまでも増長し。

 負けると思えばへりくだるか逃げ出す。

 今、何が起こってるか分からない危険な状況で、その場に留まったりはしない。

 危ないと思えば即座に逃げる。

 もはや種族的本能としてゴブリンの心魂にはこういった行動が刻まれている。



 もちろん、全員一斉にとはいかない。

 普段一緒につるんでる連中でだ。

 大勢で一丸となって動く印象のあるゴブリンだが、実態はそうではない。

 普段は気の合う数匹でまとまっている。

 何かしら行動する場合、この数匹単位で動くのが常だ。

 なお、単独行動はほとんどない。

 一匹で生きていけないほど弱い事と、多数になれば横暴を働きやすくなる事を察知してるのだろう。

 今回もこの数匹一組の単位で抜けだしていく。



 もちろん、上手くいかない。

 籠もってるとはいえ、巣の付近にはそれなりの数の巨大虫がうろついている。

 これらに見つかれば脱走として扱われ、虫の餌になっていく。

 虫は樹液なども数が、ゴブリンのような動物も食料にする雑食だ。

 籠もってエサの備蓄が減っていく中で、脱走者は丁度良い食料になっていった。



 そこを掻い潜ってもだ。

 今度は周辺で作業してる動植物が行く手を阻む。

 さすがにリスはともかくだ。

 木々をなぎ倒し、これを運んでる熊にゴブリンがかなうわけもない。

 また、更に森の中には狼なども徘徊している。

 ゲール以外にもこうした者達が出歩いてる怪物どもを相手にしている。

 空に浮く巨大虫相手では分が悪いが。

 しかし、ゴブリンが相手なら十分に戦う事ができる。



 こうして巨大虫とゴブリン共は着実に数を減らしていった。

 ゲールにとってこれは有利に働く要素になった。

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