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28 巨大虫の巣

「大丈夫か?」

 ある程度離れてから。

 ゴブリンや虫に見つからないと思える場所で、ゲールは声をかける。

 サイトにカイル、エドには周りを見張ってもらいながら。



 問われたシーンは無言で頷いて。

 それから静かにゆっくりと呼吸をしながら気持ちを落ち着けていく。

 それでもまだ気分は悪そうだったが、

「ごめん、もう大丈夫」

 青い顔で気丈に振る舞っていく。



「あいつら、あれが…………森を蝕んでる」

 ポツポツとシーンは語っていく。

「あのでかい虫。

 あれが森を、木々を貪ってる。

 そのせいで、森が死んでいってる」

「……いったい何が?」

 面くらいながらもゲールは話に耳を傾けていく。



 全ては木々が語りかけてくる事。

 それをシーンは口にしていく。

 ある日、山の向こうから悪鬼がやってきた。

 ゴブリンを初めとした怪物・魔物・妖精が。

 それらは森の中を嵐ながら進んでいった。



 その中で、巨大な虫は木々から樹液をすすっていった。

 虫が木々にたかるのは珍しくはないが。

 なにせ大きさが大きさである。

 一匹だけでも、樹木を立ち枯らせるには十分だった。

 それが何匹も集まってるのだ。

 被害は何本かの木々で終わる事はなかった。



 そして立ち枯れた場所に巨大虫は巣を作っていった。

 それは蜂の巣のように綺麗な六角形を組み合わせた。

 蟻塚のように巨大な城だった。

 そこに虫が居座り。

 その周囲にゴブリンが住み着いていった。



 ゴブリンの住居は、これも虫が用意していったという。

 倒れた木々や土、虫が吐き出す唾などによって。

 そうして出来た住居は、虫を守る防壁にもなってるという。



 そんな巣を中心にして巨大虫は周囲の木々を巡っていく。

 樹液などを集めるために。

 これが蜂などなら、花の蜜を集めるだけで済むのだろうが。

 全長100センチにもなる巨大虫だとそうもいかない。

 周囲の木々を食い散らかしていく事になる。

 かくて森の一角は枯れた木々が立ち並ぶだけの不毛の地になった。



「────森がそう言ってる」

 嘆きと共に語られるこれまでの出来事。

 その気持ちが押しよせるのか、シーンは怖気をおぼえてるようだ。

「なるほどな」

 聞き終えたゲールは嘆息を吐き出すしかない。



 厄介な事になっている。

 ゴブリンだけで事が終わるとは思ってなかったが。

 やはりもっと面倒な存在がいた。

「どうするかな」

 放置するのも気が引ける。

 しかし、今の人数では撃破も難しい。

 迂闊に仕掛けると確実に全滅する。



 かといって応援を呼ぶのも困難だ。

 戻って兵士を引き連れてくるとなれば時間がかかる。

 そもそも、人数を集めるのも難しい。

 集められないから承認図での調査を実施してるのだし。

 何かやるにしても、ここにいる人間だけでやらねばならない。



「念のために聞きたいんだが」

「なに?」

「森の民を集める事はできるか?

 虫やゴブリンを倒すために」

「やれない事はないだろうけど」

 シーンは浮かない顔をする。

 虫やゴブリンとは別の理由で。

「みんな仕事もあるし。

 ボクが声をかければどうにかなるだろうけど、あんまり無理をさせられない」

「なるほど」



 祈祷師としての権威で無理矢理動員は出来る。

 だが、それによって人々の生活に影響が出る。

 それは避けたいのだろう。

 気持ちはゲールも痛いほど分かる。

 民を無理矢理徴用すれば、収穫に影響が出る。

 貴族として苦悩する父の姿を見ておぼえた事だ。

 森の民もこういった部分は同じなのだ。



「けど、放っておくわけにもいかないか」

 シーンの話を聞くに、このままにしておくのも得策ではなさそうだった。

 巣を作ってるという事は、そこで新たな巨大虫が生まれているはず。

 それらが成長して増大すれば、今後より厄介な事になる。

 片づけるなら今のうちが良い。



 だとしてどうするか?

 この人数で何が出来るのか?

「どうする?」

 周りの者達にも声をかける。

 今の自分たちに出来る事で、この状況を解決出来るかどうかを。

 答えを期待してるわけではない。

 だが、ちょっとした一言が解決の糸口になるかもしれない。

 わずかなその可能性をゲールは求めた。

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