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27 森の気配の異常、ゴブリンともう一つ

「森がざわついてる」

 山に近付くほどシーンはそう呟く事が増えていった。

 ゲールには聞こえないが、森の加護を受けてる彼女には何かが伝わるのだろう。

「何かあるのか?」

「分からないけど、でも、凄く嫌な感じ」

 怖気を感じたシーンは身震いをする。



「その気配……かどうかは分からんが。

 おぞましい何かというのは、どの方向から感じる?」

「あっちの方」

 迷わず示すのは、山の方向。

「向こう側に通じる峠がある場所」

「ゴブリンが通ってきた道か?」

「そこまでは分からないけど。

 そうなっててもおかしくない」

 ならば、ゴブリンにまつわる何かがいる可能性もある。



「調べてみるか」

 危険に近付くのは避けたいのだが。

 調査なのでそうも言ってられない。

 危険を覚悟で近付いて、何があるのかを探っておく必要がある。

 もちろん、損害を出さないようにしながらだが。



 そんなゲール達は、シーンの示す方向を頼りに進んでいく。

 先頭を探知や察知にすぐれたエドに任せ。

 何メートルか離れたところをゲールとサイトが。

 更にそこから何メートルか離れてカイルとシーンがついていく。

 距離をあけてるのは、敵の襲撃を一斉に受けて全滅しないようにするためだ。



 そして、もっとも危険な先頭を歩くエドだが。

 警戒しつつも大胆に進んでいく。

 まだ分かりやすい危険はないのだろう。

 本当に危なかったら、エドはもっと慎重になる。

 狩人としての直観は草木に潜む鳥や獣を見つけるほどだ。

 そんなエドが特に問題もなく進んでるのだから、今はまだ安全のはずだ。



 だが、その足が少しずつ遅くなっていく。

 疲れによるものではない。

 警戒心が強くなってるのだ。

「何かあるのか……」

 後ろから見てるゲールもそれを感じ取っていく。



 兆候はすぐに見えてきた。

 木々の合間をぬってそれは動いている。

「いるよ」

 駆け寄ってきたシーンが伝えてくる。

 前にいるエドも手を振って合図を送ってくる。

 それが示すものは一つ。

「ゴブリン、何匹かいる」

 合図の示す意味と同じ事をシーンが声にした。



 おかしな事ではない。

 ゴブリンがやってきた方向に進んでいるのだ。

 途中で遭遇する事もありえる。

 だが、実際に遭遇すると緊張をおぼえる。



 更に厄介な事に、いたのはゴブリンだけではない。

 数匹のゴブリンと共に行動してるものがいる。

 それはブーンという羽音をたてて空に漂っていた。

 隠れてみていたゲール達は、初めてみるそれに驚く。

「…………虫?」



 前後にゴブリンを配置して進むもの。

 羽音を立てて空に浮かぶもの。

 それは全長100センチはあろうかという、巨大な虫だった。

「なんだアレは……」

 初めて見る怪物である。

 ゲール達は驚きながら浮かぶ虫を見ていた。



 ただ、シーンだけは反応が違う。

 悔しげに、苦しげに顔をしかめる。

 彼女の耳に、心に周囲の木々の声が届くからだ。

 それらは告げている。

「あれが」

「あれこそが」

「我らを蝕む怨敵」

 木々がシーンに告げてくる。

 怒り、恨み、憎しみを。

 それらを受け、それらの気持ちと同調し、シーンの気持ちも揺れる。



 祈祷師の弱みだった。

 自然と同調し、その力をふるう事ができるのは強い。

 だが、それ故に自然の気持ちに自分の左右されてしまう。

 特に加護をもたらされる程の者ならば。

 加護を与えた存在に気持ちを引き摺られてしまう。

 今のシーンがそうなっていた。



「一旦引き上げよう」

 シーンの様子に気付いたゲールは、この場から離れる事にした。

 何が起こってるのかは分からない。

 しかし、ここに居続ける事は危険だろうと。

 ゲール達は静かにゆっくりと、見つからないように退いていった。

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