7-12.「雨のち晴れ」
その後のことについては、さらっとだけ……。
次に目を覚ましたとき、私が寝かされていたのは普段ゼノンさんが使っているベッドのうえだった。
「あれ……?」
これは後から分かったことだけれど。
どうやら私はあれから泣き疲れて、そのまま眠ってしまったらしい。
それでゼノンさんのベッドが急遽、貸し出されることになったそうだ。
屋根に近い私の部屋より、そっちの方が気も休まるだろうからとの計らいで。
当然そんなこととは露ほども知らない私の頭上には、クエスチョンマークが大いに躍り出る。
「あれあれ、なんで?? ここってゼノンさんの部屋だよね???」となる。だけどもう時間も遅かったし、まだまだ寝たりなかったりでさっさと思考をポイ捨てしてしまった。
眠れない夜が続いていたのもあったし、たぶん半分くらい寝ぼけていたんだと思う。
ぼふっと体を倒したら、我ながらすさまじい入眠速度でスヤァとなって。
ちなみにそのとき雨音が止んでいたのは(私はそれにも気付いていなかったけれど)、テグシーさんが生糸を編み込んで即席の雨除けをかけてくれたからだ。おかげでまだ雨は降っていたにも関わらず、その音はちっとも私に届かなくなっていた。
そうして数日ぶりにぐっすり寝られて、すべてを知ったのがだいぶ寝坊した翌朝のことになる。
泣き疲れて寝てしまったなんて、そんなことを聞かされたときは途端に恥ずかしくなったし、ベッドを借り切っちゃってすみませんとゼノンさんにペコペコするところから始まったけれど。(ちなみにこれ2回目。)
「別にいい。気にすんな」
結局それからもしばらくは、ゼノンさんのベッドを借り受けさせてもらうことと相成った。雨はまだ降っているものの音は殆ど聞こえないし、自分の部屋でも大丈夫とは申し出たものの、ゼノンさんは「使っとけ」と言ってくれる。
「本当にすみません……」
なんて、表向きはしおらしくしている一方で。
「やったぁー!」と内心でちょっとウキウキしている私もいた。
心なしか、そっちの方がずっと寝やすいのだ。
ゼノンさんの匂いでいっぱいのベッドはとても安心できる。
自分のよりずっと寝心地がよかったから。
さらに我がままを言うと、一緒に寝てもらえるのが一番だったけれど。
「あ、良かったら一緒に寝ます?」
「良いわけねぇだろ。バカ言ってねぇでさっさと寝ろ」
それだけはやっぱり、どうしてもダメみたいでフられてしまった。
ついでにパチンと電気を消され、ちぇとなりながらボフンと体を倒す。
目を閉じるまえには必ず、「明日こそは……」とてるてる坊主さんにお願いをして。
そうして少しずつ、私は日々の平穏さを取り戻していった。
そんな、あくる日の朝のこと。
小鳥のさえずりとともに、グッと伸びをしてから起き出す。
シャっと開いたカーテンの向こうからは、眩しいくらいいっぱいの日差しが差し込んできて。
「わぁ~っ!」
ようやく晴れ渡ってくれた空模様に、パァと表情を輝かせる私だった。