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5-1.「その魔女には秘密がある2」

この話からパート5です。

第2部ということで開幕していきます。


 人は誰しも『秘密』を抱えているものだ。

 とは以前にもやったことのある語り出しだと思うけれど、せっかくなのでこの辺りでもう一度。


 ――秘密。


 それはつまり、誰にも打ち明けず自分の内だけに秘めておく隠し事。

 誰かに知られてしまうと、とてもとても困ってしまう『何か』のことだ。


 大抵の人にとってのそれとは、たとえば知られてしまうと恥ずかしいプライベートのこととか、バレるとおとがめを受けてしまうようなイタズラや悪事に覚えがあるとか。


 あるいは秘密基地のように、自分だけのものでなくなってしまうことが口惜くちおしくて内緒にしておくなんてパターンもあるかもしれない。


 人によって目的やスケールも様々で、そうというだけでどこかワクワクした響きを持たせてくれたりもする。それが私の捉える『秘密』というものだ。


 ではなぜいきなりそんな話を持ち出すのかと言えば、他ならぬ私もその持ち主だからである。それもわりとただならないレベルで、バレるとちょっと死活問題となってしまうソレの――。


 思えば、あれからもう数か月にもなる。

 私がゼノンさんと出会い、森の外へ連れ出してもらったあの日から。


 まだそれしか経っていないのかと実感の薄さはあるけれど、いろいろあったなぁと振り返った日々の思い出は濃く、また鮮明だ。ゼノンさんと旅をして、リィゼルちゃんやウィンリィとも出会い、ついにはこのセレスディア王国に足を踏み入れて。


 一時、ゼノンさんとも離れ離れになってしまったときはすごく不安になって、どうしてよいかも分からなかったけれど。


『いや~、それが運とかタイミングがバッチリでね。ちょうどゼノンも手が空いてたし、せっかくだから戻しちゃおうってことになったんだ。ね、ゼノン?』

『あー? まぁそういうこったな』


 そういうことで急遽、また一緒にいられることになったのだ。

 いわゆる人事異動というやつらしい。


 やけにニコニコしているリクニさんの様子が、何か誤魔化してる風に見えたのが少し気にはなったけれど。ともあれ、こうしてまたゼノンさんと過ごせるようになった私である。


 でも実を言うと、それには1つだけ大きな条件があった。

 それはゼノンさんと一緒にいる間、私が『アリシア』であることを誰にも知られないようにすること。


 どうしてそんなことを?と不思議には思ったけれど、「飲めねぇならこの話はなしだ」と突きつけられてしまえば選択の余地はない。


 というわけで基本的にこの頃はもっぱら、『アリス』と偽名を使って過ごしている私である。姿も『イルミナ』時代のように周囲の光をうまいこと曲げて、髪の色や長さが変わるように見せて別人に成りすましていた。


 よってリクニさんによると今の私は『魔封じ』として名高い魔女狩り、ゼノン・ドッカーが連れているナゾの魔女『アリス』みたいな感じになっているらしい。


 少なくとも魔女登録が終わるまではこのまま『アリス』として過ごし、その先のことはおいおい決めていくみたいな感じらしかった。やっぱり何でそんなことをするのかは、よく分からなかったけれど。


 ともかく。

 そんなこんなで抱える秘密が減るどころか、また1つ増えてしまった私である。

 ところで今日という日が、たぶんこれからの私にとっても、とても大事な記念日になろうとしていた。


 その正式通知をついさっき、空から書簡で受け取ったのだ。

 いてもたってもいられず、すかさずピューとゼノンさん宅までかけていく。


「ゼノンさんっ! ゼノンさーん! 見てください、これ! これっ!」

「あんだよ、うっせぇな。いったい何をそんなに騒いで……って、おお?」


 バンとドアを開け、ぴょんぴょん跳ねるようにして見せびらかすとさしものゼノンさんも関心を示した。それはそうだろう。それすなわち魔女登録の2次査定がすべて終わり、無事に通過したことを知らせる通知書だったのだから。


 これで仮登録まで完了。

 思ったより早かったなとお言葉もいただき、えっへんと胸を反らす私だった。

 これであとは本登録を残すのみである。


 ということで――。

 前置きが長くなってしまったけれど改めまして、私はアリシア・アリステリア。


 いまだ行方ゆくえを眩ましたままとなっている謎の魔女『イルミナ』の正体にして、この頃は『アリス』と偽名を名乗ったりもしている。


 もうこれ以上は秘密を増やしたくないなぁと正直、内心ちょっとタジタジしたりもしているお子さま魔女です。

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