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【完結】「森に住まうこわ〜い魔女」のフリをしていた私、ボッチの最強魔女狩りに拾われる ~助けてもらったので、なるべく恩返しできるよう頑張りたいと思います~  作者: あなたのはレヴィオサー
10.グランソニア城(決戦編)

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10-35.「おまけ話、そして」


 そのうえであと2つほど、オマケ的に付け加えられたらと思う。

 まずはリィゼルちゃんのことだ。


 全然知らなかったけれど……。

 リィゼルちゃんは少しまえ、ゼノンさんやミレイシアさんと一緒に旅をしていたことがあるらしい。そのときに魔女登録のこととか、このまま一緒にセレスディアに帰ろうねみたいな話をよくしていたそうだ。


 でもリィゼルちゃんにはどうしてもやらなければならないことがあって、結果としてミレイシアさんを置き去るような形を取ってしまった。だから合わせる顔がなかったのだろう。


「ミレイシア……」


 リィゼルちゃんは隠れていた。

 ようやく混乱の収まったグランソニア城の敷地内で、人目に付かないうちにと逃げ出そうとしていた矢先のこと、遠目に彼女を見つけてしまって。


 とっさに身を隠した岩陰からジッと見つめたまま、いつまでも出ていけなかったのはどうしようもなく怖かったからだ。せっかく目をかけてくれていたのに、励ましの言葉だってたくさんもらっていたはずなのに。


 あんな一方的な別れ方で、その優しさを無為むいにした自分をミレイシアさんはどう思っているだろうかと。それこそ浴びせられる非難の言葉を想像するだけで、足がすくんでしまいそうなほどに。


 やるべきことを果たした以上、ここで出ていかない理由はない。

 『ヘンゼル』だってもう壊れてしまったのだ。

 もう何ができるわけでもないのだから、長引かせたところで同じこと。

 だけど……。


『やっぱり……。怒ってるのか、ミレイシア……?』

『あぁー、そりゃもうカンカンだぜ。何が何でも1発ぶん殴ってやんねぇと気が済まないってよ』


 ――無理だ。

 どうしても決心が付かなかった。


 天秤てんびんにかける。

 ここでミレイシアさんに見つかるのと、もう少し長く手足を引きずるのと、どちらが良いか。後者の方が100倍マシだと。


「せめて、ゼノンが帰ってから……」


 結末を先延ばしにするためにそんな言い訳を思いつき、引き返そうとした。

 それを言ったらもう帰ってきてるのだけれど、このときのリィゼルちゃんはまだ知らなかったから。


 ――で。


「おん? なんすか、見ねぇ顔っすね?」

「うわっ!」


 ルーシエさんに見つかった。

 「おかしいっすねぇ、こんな新参者いなかったはずっすが」と持ち帰るつもりで風呂敷に包み、背負っていた『ヘンゼル』の頭ごと持ち上げられる。そのままスンスンと鼻を鳴らされて。


「うーん? でもやっぱり、どっかで嗅いだことのある匂いっすよ、これ。それに、この背負ってるのは……」


 見覚えのあるフルメイルの頭部と匂いから、『ヘンゼル』の中身であることが看破される。はえーまさかこんなお子様だったとはお見それしたっすよと関心されつつ、つーかひどいケガしてるじゃないっすか動いちゃダメっすよとなれば必然、向き先は1つだった。


「ミルっちー、ここにケガ人一丁っすー!」

「えっ? ……なっ!?」


 なんでよりによって……!?

 まさかその呼び名でミレイシアさんが振り向くと思わなかったこともそうだが、とにかくリィゼルちゃんはひどく青ざめた。バタバタと足の付かないままクレーンされつつ、やめろいやだ放せと最後まで抵抗する。


 でも結局、その結末は避けられなかった。

 なけなしでもと『ヘンゼル』の残骸から回収しておいた目晦めくらましの魔道具をどたんばで起動、「んぎゃっ!?」となったルーシエさんの意表を付いてどうにか逃げ出すも「こらっ、待ちなさい!」と走ってくる大人とケガをした子どもの足じゃ競争にもならない。「待ってったら!」と、そのまま腕をガッシリ掴まれて。


「なんで逃げるのっ!? リィゼルちゃん!」

「ッ……!?」


 ともすればもう観念するしかなくて、リィゼルちゃんは必死に謝った。

 ズビズビと泣きながら、ごめんごめんとひたすらに繰り返す。

 だけど実は、これにはちょっとだけ裏がある。


 ゼノンさんだ。

 事情があったとはいえ、魔女狩りが一度保護した魔女をまたリリースするなんて本来あってはならないこと。ゼノンさんもそれなりのリスクを負ったうえで、リィゼルちゃんを行かせることを決めている。


 ただでさえミレイシアさんからも「何考えてるのよ!?」とか「今すぐ連れ戻して来て!!」とかなりガミガミ言われているのだ。だからまぁ、そういうこと。


 言ってしまえば腹いせだった。

 こんくらいのむくいは甘んじて受けてもらわないと割に合わんと、ミレイシアさんがすごいおかんむりみたいなことを吹聴ふいちょうしていたみたいで。そんなしっぺ返しのあったことが泣きながら散々、陳謝を重ねた末に発覚する。


「じゃあ、怒ってないのか……?」

「怒ってないわけないでしょう!? もう、勝手なことして!」

「……っ!?」


 勿論だからと言って、まったくお叱りなしというわけにはいかなかったけれど。それでもリィゼルちゃんが想像していたよりはずっと、よっぽど優しい結末であったことには変わらない。


「とにかく、もう逃げない! もしまた同じことしたら、ぜったい許さないからね!? 分かった!?」

「……うん、分かった。分かってるよぅ、ミレイシア……」

「もう、こんなにケガして。でもとにかく、無事で本当に良かった……」


 もう魔力がないもので、傷の手当ても満足にしてあげられない。

 その代わりに、というわけではないけれど。


「ちゃんと知ってたよ。リィゼルちゃんが何をどうしたかったのか、全部ゼノンから聞いてたから」


 泣きぐずるリィゼルちゃんをギュッと抱きしめ、よしよしとなだめてやりながら。

 精一杯の労いを込め、ミレイシアさんはその言葉を送るのだった。


「1人でよく頑張ったね」




 そんな温かい再会の時間があった、その一方で――。

 こちらが2つ目。

 実はまだ御用とならず、影で逃げ延びている悪人が1人だけ残っていたのである。


 このときのリィゼルちゃんと同じように、彼もどうにかグランソニア城からの脱出を図ろうとしているところだった。おのれここまで来て捕まってたまるか、と。カメレオンみたいな迷彩柄の魔獣、その口内でねちょねちょの唾液だえきまみれとなっても隠れながら。


 男爵さん、もとい――アーガス・ゼルトマン。

 一時はリリーラさんを支配下におくも失敗し、完膚なきまでにスクラップされたのがこの人だが。今になって、しぶとく復活を果たしていたのだ。


 そして彼こそが、さっき割愛した戦犯のもう1人だったりもする。

 実はこの人についてはちょっと事情が複雑だ。元からグランソニア城に収容されていた囚人というわけではないし、じゃあどうして此処にいるのかというと、これまたややこしくて。一息に話すと……。


 どうもこの人、何日も前から実はグランソニア城に潜伏していて、ずっと脱出の機会を伺っていたらしい。そんなの本来、リリーラさんやルーシエさんが気付かないわけがないのだけれど。なんかこの人が昔、リィゼルちゃんが造ったステルス用の魔道具を隠し持っていたとかで。それで気配を消して、姿はこのカメレオン魔獣で隠して、たまにキッチンに忍び込んだりもして、言っちゃ悪いけどそれこそゴキブリのようにカサカサコソコソしていたそうだ。


 そんなある日のこと、私の奪還作戦のことを耳及んで「しめた!」となる。もはやこれに乗るしか助かる道はないと腹を決めて、無限回廊の追いかけっこも実はずっと付いて来てたりもしていた。でも悲しいかな、途中で次元震がボウンとなって。


『そうだ、その意気だぞ魔人ども! もう一度シャバの空気が吸いたいなら、迷わず私に続けッ! 再び自由の身となり、この世を震撼させてやるのだーッ!!!』


 で、こうなったみたいだ。

 天はまだ私を見放してはいなかった!

 やはり私はモっているとばかりに土壇場で、本場のプリズンブレイクを発起ほっきしたとのこと。かなりザックリだけど、大体そんな感じのようで。


 とにかく裏でかなり危ない綱渡りや、難関を搔い潜って此処にいるということだけ分かってもらえればと思う。


 そして今も、彼は思っていた。

 やはり私はモっている、まだ見放されてはいないぞ、と。


 でも結論から言って、彼の悪運もここまでだ。

 確かにその魔道具で、リリーラさんやルーシエさんの目は掻い潜れたのかもしれないけれど(さすがはリィゼルちゃん)。


 出口に向かってジリジリと、細心さいしんの注意を払って進んでいた彼らの気配に気づき、終わりはもう近づいている。テチテチと小さな足音が。


 ――むっ……!? どうした……!? 早く進めっ!


 外の様子がイマイチ分からないもので、彼は戸惑った。

 それまでおっかなビックリでも進んでいたカメレオン魔獣が、いきなり一歩も動かなくなったからだ。まるで何かに怯えたかのように、ガタガタと震え出して。


 そしてこともあろうに、吐き出した。

 ぎゅぽんと涎まみれの主人を差し出し、バタバタと逃げていく。

 それこそトカゲの尻尾きりのように。


 いったい何が起きたというのか。

 訳が分からないまま、彼は見下ろす。

 そこにちょこんとお行儀よくお座りしている、1匹の小型犬を。


 バカなまさかこんなものに恐れを成して逃げ出したとでもいうのかと、状況を呑み込めずにいると。次の瞬間にはそのワンちゃんが魔力をまとい、見上げるほどの巨躯きょくを得る。今度は逆に見下ろされて。


「――は?」


 決着は一瞬だった。

 横合いから見舞われた肉球の一撃に、バコォンと横合いに吹っ飛ばされて。

 昏倒した。秒殺のノックアウト。


 これで雪辱は晴らしたとばかりに、満足げ。

 またシュルシュルともとの小型犬サイズに戻ったところで、せっかくなので言わせてほしい。


 私はその場にいなかったので、あまり偉そうなことは言えないけれど。

 ふっふと伊達メガネをクイする感じで、あなたの敗因は1つですと。


 そう、うちの子は賢いのだ!

 ねっ、ウィンリィ?



 ――アンっ!



 その気高き狼――とってもお利口さんな私の愛犬は軽く一吠え。

 おいここに残党がいるぞと、近くにいた然るべき人たちに捕物劇の成果を報告するのだった。




 というわけで――。以上がおまけ話でした。

 ほかに語り残したことも無し、これにて一件落着~!(1件どころか2、3件くらい一挙に解決~!)ドンドンパフパフ〜!と、そう締めくくりたいところなのだけれど。


 本当に申し訳ない……。実は最後に、もう1つだけある。

 ようやく騒動が収まって兎にも角にもお疲れ様とか祝福ムードが流れるなか、周囲を見回してから目をパチクリ。


「おい、ちょっと待て……」


 最初に気付いてくれたのがゼノンさんだ。

 とにかく今日はもう引き上げるかと、私を探そうとしてくれていたのだけれど。


「アイツ、どこいった……?」


 その私がなんと、行方不明だったりしまして。

以上、せいぜい50話くらいで終わるのかなーと思って始めたら全然終わらなかった、お城を舞台とするパート8~10でした。


次話から最終パートに入ります。

物語を進めていけばそのうち語る機会も巡ろう、と思っていたところが現状、ほぼ何も語れずに終わってまして・・。


予定にはなかったパート11です。

この後に及んで、話数で言うとこのパート10と同じくらいありますが・・。

ちゃんと完結はするので、そこだけはご安心をと。

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