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【完結】「森に住まうこわ〜い魔女」のフリをしていた私、ボッチの最強魔女狩りに拾われる ~助けてもらったので、なるべく恩返しできるよう頑張りたいと思います~  作者: あなたのはレヴィオサー
10.グランソニア城(決戦編)

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10-20.「イッツミー?」


 思い当たる節はすぐにもあったが、さておき。


「え……? ちょっと待ってください、それって……!?」


 ふいを突かれて驚く私に「順を追って話すね」とミルさんは続ける。

 語られたのは改めて、どうしてリリーラさんが私をグランソニア城に引き込んだのか、その経緯と真相だ。


 時系列順にまとめると、つまりはこういうことらしい。

 まずリリーラさんがアリシア=『アリス』というイコール式に気付いてしまったのは、さっき話してもらった通りの経緯だ。それでもなお『自分ルール』が発動して、私を強引に城内に引き込んだわけだが。


 実を言うとそうなる直前、リリーラさんと魔女狩り協会の人たちとの間でひと悶着あったのだ。それが例の、定員オーバーの件になる。


 魔女狩り1人につき魔女1人か多くても2人というのが、セレスディアにおけるおおよその基準になるのだけれど。その時点ですでにリリーラさんはたった1人で10人以上の魔女さんたちをこの城にかくまい、管理していた。


 だからもうこれ以上はダメだと、再三の勧告もあったのだが……。

 結局リリーラさんはそれを無視し、踏み倒す形で強行してしまう。

 私を強引にかっさらってしまう。


 ちなみに通常であれば、こういうときは大体テグシーさんの出番だそうだ。

 ミルさんは言う。リリーラさんがギャイギャイと文句を言って、それをあっけらかんとテグシーさんがかわすみたいなやり取りはもう、昔からのお馴染なじみなのだと。


『まぁまぁリリィ、落ち着いて。確かにキミの言い分はもっともだけど、一方で私はこうも思うんだ』


 そんな感じでテグシーさんがドウドウとやれば、『確かに……言われてみりゃあそれもそうか……?』となんだかんだでリリーラさんも考え直し、言うことを聞くそうだ。言いくるめて、一応は丸く収まるというのがいつもの流れ。


 けれど、今回はそうならなかった。

 何故なら――。


「怒ってた……?」


 そうとミルさんは頷く。

 そんなちゃっかりやり手系のテグシーさんの説得にもまったく耳を貸さないほど、今回のリリーラさんは憤慨ふんがいしていたのだと。その理由は――。


「実はその……テグシーがリリーラに、ちょっとウソを付いちゃってたみたいでね」

「ウソ、ですか……?」


 なんだろうと思う。


「ミルさん……?」


 続けて不可解だったのは、なんだかミルさんが歯切れ悪そうにしていることだ。何か言いづらいことでもあるかのように苦笑いし、頬をポリポリと掻いていて。


 そして、ミルさんは言うのだ。

 困ったような笑顔で、思いがけないことを私に尋ねてくる。


「あの、それでなんだけど。アリシアちゃん……」


 やけに気まずそうにしながら。


「あの事件のことで、最初に何か……。テグシーに違うこと言っちゃったり、しなかった……?」


 違うこと……?

 それはつまりウソということだろうか。


 あの事件のことで、私がテグシーさんに付いた嘘。

 思い当たる節と言えば1つしかない。


「……へっ?」


 途端にヘンな声が出たのは、さっき出てきた魔女さんの名前も踏まえて、私のなかで電撃的に繋がることがあったからだ。話の流れから察するに、つまり……。つまり……?


「まさか……!?」


 確かめてみたら、そのまさかだった。

 あぁやっぱりそうなんだと困ったようになりながら、ミルさんは話を続ける。


 そう、つまりはこういうことだ。

 あの事件があってからというもの、私はちょっと、以前より何かと『水の音』に敏感になっていると、それは事実になる。


 もう心配かけたくなかったし、わざわざ蒸し返すような話でもない。

 何よりもう終わったことだと気持ちから、私は最初そのことを誰にも打ち明けずにいた。結果としてゼノンさんやテグシーさんに看破される運びとなるわけだけれど……。


 どうやらそこがターニングポイントだったらしい。

 リリーラさんも後から気付いてしまったのだ。

 私を拉致ったあと、どうも私に水を怖がっている節がありそうだと、そのことに。


「リリーラさんが……?」

「うん。と言っても、最初に気付いたのはウルさんなんだけどね。でもそんなこととは知らないから、リリーラに相談もしてたみたい」

「ウルさん……?」

「……ん? そうだよ、ウルさん」


 どうして「知ってるでしょ?」風に聞き返されたのだろう。

 面識のない魔女さんのはずなのだが(そういえば名前だけならルーシエさんから聞いたこともあったか……?)、ともかく。


 そんなことがあって、どういうことだとリリーラさんはテグシーさんを問い詰める。一方でテグシーさんも、こればかりは言い訳が利かなかった。


 だってリリーラさんは魔女狩り試験のときにしかと目撃しているからだ。

 乱入してきたリリーラさんの特大インパルスをかわすため、小癪こしゃくにも水中に飛び込み避難する私を。そして――。



「じゃあ、あの夜に見た夢・・・・・・・は……」



 すでに他の確証もあったから、テグシーさんも白状するしかなくなってしまう。

 つまりは私が後出しした真相を、そこで初めてリリーラさんにも打ち明けて。


 それで決定的に崩壊してしまったのだ。

 『話が違ぇじゃねぇかッ!?』とリリーラさんが激高して、せっかくまとまりかけていた話もぜんぶ白紙に戻って。


 それっきりもう、リリーラさんは誰の言葉にも耳を傾けなくなってしまった。

 誰が何を言っても聞く耳持たずで、「うるせぇアタシのやり方に口を出すな誰が何と言おうともうアイツはアタシのもんだここで面倒を見る!」と門前払い。


 よほど業を煮やしたか、テグシーさんに至っては出禁できん状態として締め出してしまう。そうして籠城ろうじょうにも近いかたくなな体制を譲らず、堅持し続けて。


「テグシー、言ってたよ。何をされたらあんなことになるのかって……リリーラからすごい怒られちゃったんだって」


 たとえるなら、我が子を守ろうと警戒心マックスでグルルルする母熊状態になっていたそうだ。ミレイシアさんも説得してくれていて、やっぱり私を返そうかと迷っていた矢先の出来事だったからこそムキになってしまった。


 だから何が何でも、私を奪い返されたくなくて。

 無限回廊でもあんなに追いかけてきたと。


「そんな……」


 そんな顛末を聞かされて、私はただただ呆気に取られるしかなかった。


 じゃあ……。

 ということは今回の騒動の発端は……。

 元の元を辿れば……。


 (いろいろ言いたいことはあるにせよ、いったんは呑み込んで。)


「私……?」

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