表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】「森に住まうこわ〜い魔女」のフリをしていた私、ボッチの最強魔女狩りに拾われる ~助けてもらったので、なるべく恩返しできるよう頑張りたいと思います~  作者: あなたのはレヴィオサー
10.グランソニア城(決戦編)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

201/253

10-15.「やらかし」


 当初こそ5対1の形勢で幕を開けた、マーレ・グランソニアの迎撃戦だが。


 まさか自身でも思いもよらず、真っ先に落ちた・・・のは戦力の要であるはずのライカンだった。マーレが発した真空波をモロに受け、そのまま場外まで吹っ飛ばされる。気付いたときにはドゴォンと石壁のなかにうずもれていて。


「パパっ!? 大丈夫!?」

「ぬぅ……すまん、不覚を取った。大丈夫だ」


 すかさずと駆け寄ってくれたミレイシアから、またも治癒キュアを施されてしまう始末だった。我ながら情けないとライカンは頭を振り、すぐにも立ち上がろうとする。


 その奮迅ふんじんはミレイシアだけでなく、マーレのためでもあった。

 もうこれ以上、マーレをあのままにはしておけないと。


 だがどうやら、自分が思っていた以上にこの体は消耗しきっていたらしい。

 立ち上がろうとしたところ途端によろめき、ミレイシアから支えられてしまう。


「ダメ、そんな体じゃもう無理だよ! 私の魔力だってもうあまり残ってないの! お願いだからここでジッとしてて!」


 そのうえそうも必死に言いすがられてしまえば、もはや戦線復帰は諦めるしかなかった。口惜しくとも、今ばかりはと踏みとどまる。もしミレイシアの目のまえで自分に何かあったらと、生前にマーレがくれた最後の助言を現実のものとしないためにも。


 それからライカンは戦況を固唾かたずを飲んで注視していた。

 直後にルーシエとジーラがリングアウトしたときは、やはり自分が出るしかないとも思ったが。


 そんなときだ。

 アリシアが起きていると、そのことに気付いたのは。


「リオナさん、離れてくださいっ!」


 初めて見たのは魔女狩り試験のときだったか。

 相変わらず大した出力の魔力砲撃が、戦場を一閃いっせんする。

 マーレには届かなかったが幸い、体勢を立て直すだけの時間稼ぎにはなって。


「アリシアちゃん……! 良かった、目が覚めたんだ」


 ミレイシアもその回復に安堵している様子だった。

 ライカンとしてもそれは吉報で、「そのようだな」と応じるが。


 一方で――。

 これはまずいぞと、事態の深刻さも再認識していた。


 たったいま瓦解がかいしたからだ。

 マーレを迎え撃つためにライカンたちが事前に定めていた作戦、その前提が。


 かなめとなるのは今のリオナが持てる最大火力のはずだった。

 なぜ一度ならず二度までも、マーレが再び『死』から起き上がったのか。以前テグシーが明かした考察が正しければ、すでにマーレから不死性は失われている・・・・・・・・・・と見て良い。


 故に肉体を砕くことがライカンたちの勝利条件だったのだ。

 だが今の魔力砲すら難なく防がれたとなると、話はまったく変わってくる。


 かつてアリシアの魔力砲が、手抜きとはいえリオナの最大火力を相殺していると実績があったからだ。ともすれば今の疲弊したリオナでも、同じ結果になる可能性が極めて高い。


 撃破できないとするなら、せめて無力化にシフトするしかなかった。

 ならばやはり、彼女・・の力は必要不可欠だろう。


 テグシーだ。

 彼女の操る撚糸ねんしは、魔力を介することで伸縮や硬軟も自由自在。

 ねっちょりモッタリさせてトリモチや、頑強なワイヤーのようにもできると優れ物である。本気となったリリーラを無傷で封じ込めるのも、今となっては彼女だけだから。


 気がかりなのはさっきの揺れと爆音。

 地下で何があったか詳細が分からない以上、そこにミレイシアを連れて行くことは避けたかったが……。徐々に形勢の傾きつつある戦況からしても、もはや一刻の猶予もないとライカンは動き出す。


「すまん、ミレイシア。動けるか」


 腕を引き、ともに地下へ向かおうとしたときだった。

 急速に高まりつつある魔力の気配。

 その変調をかたわらから気取り、ハタと振り返ったのは。


「む……?」


 見れば、アリシアだった。

 さっきリオナからすっこんでろとドヤされ、慌てて引っ込んだはずの彼女だが。

 また表に出てきて、マーレに杖先を向けているのである。


 そんなことをしたってさっきの二の舞、同じ結果に終わるだけだ。

 止めようと制止もしかけたが。


「なに……?」


 そこでライカンは目を見張る。

 高まっていくのだ。際限なく。

 アリシアから発される魔力の気配が。


 差し向けた杖先、そこに集まる『光』とともに。

 さっきよりずっと、ずっと大きくなって。


「ねぇちょっと――」


 ブツブツと、とても冷ややかな声音でアリシアが何かを呟く。

 聞き取れないまま次の瞬間、轟音とともに第2撃が炸裂する。

 そのまま並々ならない光量が、佇むマーレにズイと押し寄せて。


「――――」


 一方でマーレも、迫りくる光をただ見上げるばかりではなかった。

 指先に小さく灯した閃光でそれを相殺したのが先のことだが、今度差し向けたのは伸び切らない掌。同等量の光をもって迎撃し、たちまち場に満ちたのはズオンと腹の底に響くような重低音である。


 アリシアとマーレ。

 互いの中間地点でいま、強大な2つの『光』がぶつかり合い、拮抗きっこうするのだった。


 ちなみにこのとき、ある変化が起きていたことにライカンは気付いていない。

 一瞬、それこそ瞬きほど刹那せつなのことではあるが。

 アリシアの姿が確かに、光芒こうぼうの魔女『イルミナ』のものへと変容して。


 というわけで――。



 ◇



 ああああああどうしよおおおっ、やっちゃったああああーッ!!!!!?


 私はいまとんでもなくパニックにおちいっていた。

 とても深かったはずの集中力(たぶんゾーンくらいあった)から一転、というかすっ転げててんやわんやである。それでも絶賛バチバチ中なもので、集中を乱す訳にはいかないというから難易度が高いことこの上ない。


 でもとにかく、やってしまったのだ。

 すぐに気づいたから一瞬だけど。そのはずだけど。

 私の姿はいま確かに、『イルミナ』のそれに変わってしまっていたはずで。


 不注意だった。

 成りきることに必死だったとはいえ、まさか。

 まさか無意識のうちに『変幻術』まで発動してるだなんて!


 あああああああーっ!!!!

 目をグルグルさせながら、心の中で大いに絶叫する。

 それからようやく落ち着け落ち着けと言い聞かせ、周囲の状況を確認した。


 ライカンさん、ミレイシアさん。光を見ている、気付いた様子なし!

 ルーシエさん、ひっくり返ってるから大丈夫そう!

 ジーラさん、岩人形だから分かりづらいけど頭の向き的には大丈夫!

 アニタさんも遠いし、見ているのは光のところだ!


 あとはリオナさんだが……。

 見当たらない。なんで、ついさっきまでそこにいたのに!?

 いったいどこに行ったのかと思えば。


「でかした、そのままゆるめんなよ!!!」


 思いもよらず、その声は頭上から。

 メラメラと燃え盛る特大隕石メテオを、リオナさんが押し上げるように持ち構えていて。


「合わせろッ、ライカンッ!!!」


 またもズオンと衝撃音が轟く。

 リオナさんが渾身の力で撃ち落とした隕石と、地上から上空にも放たれた2本目・・・の『光』が衝突したのだ。


 正面と頭上からの挟み撃ち。

 対応されたときはまさかと思ったけれど。


 でもおかげで私にかかる負荷は明らかに軽くなっていた。

 ライカンさんの重力支援も加わり、相手の人はさらに隕石への対処に注力せざるを得なくなる。


 だからともかく今はと、私も切り替えた。

 きっと誰も見てなかったうん大丈夫そういうことにしようと、そう自身に言い聞かせてから。


「うぅ……く、あああああーっ!!!」


 あとはもう押し切るだけと、杖先にありったけの魔力をつぎ込んで。


 だけどその均衡も長くは続かなかった。

 ピシりと先に不穏な音を響かせたのは、中空で拮抗していた隕石メテオの方になる。

 破壊は表面から広がり、やがてはビキビキと中心部のコアにまで達して。


 巻き起こったのはとんでもない爆発フレアだ。

 上空で大きくぜ、巻き起こったとてつもない爆風に足元からすくわれる。


「わっ!?」


 幸いだったのはその爆風で、私側の拮抗きっこうも打ち切られたことだ。

 もしそのままだったら、あっという間に押し負けていたはずだから。


 でもだからってピンチには変わらなかった。

 投げ出されて、顔を上げたとき、辺りはモクモクと立ち込める土埃でいっぱいだったけれど。


 向こうに、もうまた別の『光』が見えている。

 すでに狙われていて。


「ダメ……! アリシアちゃん、逃げて……!」


 誰かがそう、懸命に教えてくれている。

 迎撃は……ちょっと間に合いそうもなかった。


 だから走って逃げようとした。

 でも転んでしまって、這って避けきれるような大きさでもなくて、『光』が迫って。


 終わったと思った。

 とにかく私は目を閉じて、耳を塞いで、なるべく手足を小さくしながらヒィイとなっていたのだ。でもこない。訪れると思っていた衝撃が、終わりが、いつまで経っても。


 やがておっかなびっくり目を開ける。

 自分が無傷なこともそうだけれど、やけに辺りが暗いと思ったら。


「……えっ?」


 目の前にあったのは大きくて分厚い壁だ。

 いや、違う。それは手だった。

 人のものとは思えないくらい、とてつもなく大きな掌。


「り、リリーラさん……!?」


 見上げたかたわらに、ずんぐりと彼女が居座っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ