2-1.「なんかチクチクするのです」
パート2始めていきます!
こうして無事に森からも出られて、晴れて王都に向かうことになった私である。
でも実はゼノンさんにはもう1つ別の用事があったみたいで、まずはそっちに向かうことになった。
つまり成り行きで私も同行することになって、今はその道すがらなのだけれど。ちょっと何だか変な感じがして、手をわきわきさせながら「うーん?」と眉をひそめている私に。
「おい、なにしてんださっきから。どうかしたのか?」
と振り返ったのは、先を歩いていたゼノンさんだった。
どうかしたのかと言われれば、確かにそうなのだけれど。
うまく説明できなくて、私はまた一人で「うーん」となってしまう。
「なんだ。まさかおまえ、まだ何か隠してるのか?」
「い、いえ。そういうわけではないんですけど」
「じゃあなんだよ」
「それが、自分でもよく分からないんですが……。何か、おかしな感じがして」
「おかしな感じ? 手にか?」
「手というよりは、体全体……?」
その何とも言えない違和に、私は片足立ちになって靴裏とかを確認、トントンしながらそう答える。症状を感じたのは今朝がたからだ。なんというか、体のあちこちがチクチクするような感じがする。痺れとは違うし、痛みとかもないのだけれど……。
「なにか、あちこちジンジンする感じがして」
「あぁそういうことか、そりゃたぶんあれだな。あの森から出たからだろ」
「森を出たから……? どういうことですか?」
つまりな、と気だるそうに頭の後ろをガリガリしながらゼノンさんが言う。
「昨日も言った通り、おまえはずっとあの森に魔力を吸われてる状態だったんだ」
「あっはい、そうみたい……ですね?」
「なんで疑問形なんだよ」
「だってそう言われても、あまり実感がなくて」
ジトりとされても、それが正直な感想だった。
たとえるならたぶん虫さんが私という花から蜜を吸ってたとか、樹液に集まってたとかそんな感じなんだと思う。
でも当事者意識がなさすぎて、あまりしっくりはこなかった。
へー取られてたんだぁみたいな、そんな感じがせいぜいだ。
そんな私の反応に「まぁいい、とにかくな」と、付き合いきれない様子でゼノンさんは続ける。
「要はあの森にいる間、お前はずっと全身に負荷がかかってるような状態だったんだ。半年近くもそうだったから、いきなり外に出て変な感じになってんだろ」
「うーん。あっ、つまり時差ボケみたいなものですか?」
「少し違う気もするが、まぁそんなとこだ。どっちかって言うと、気圧が変わって耳がおかしくなってるとかの方が近いかもだけどな」
「おぉ、なるほどー!」
ニュアンスはあってたみたいで、ポンと手を打ちながらほぅほぅと頷く私だった。
ひとまず健康的な不調でないのであれば一安心だ。
「ほっといてもそのうち治んだろ。気になるなら適当に揉んどけよ」
「はーい!」
私はさっそく手のモミモミから始める。
そんな感じで、私たちの旅路はまだ始まったばかりだった。




