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乙女地獄で桜咲けり!  作者: 黒檀
第六章
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クリスマスに…… その1

 私の心の腫瘍が破裂したのは、寒い寒い、クリスマスの日でした。


「さ~てェ! 忘年会とクリスマスを祝ってェ~!」


 乾杯の挨拶と共にクラッカーを派手に鳴らすと、元気な色が飛び出します。それらが、それぞれの頭にかかったり、テーブルの上のご馳走に浸ってしまったりなど、後先考えない飛び出しっぷりでした。さらにはポンっとシャンパンを空けます。さすがは千堂、こういうことは上手いことやります。

 今日は瞳ちゃんの一人暮らしには贅沢過ぎるほどのマンションにて、クリスマスパーティーです。忙しい白鷹兄弟がようやく暇をもぎ取ってきた12月25日です。そのため、賑々しい面子になりました。私に、瞳ちゃん、白鷹兄弟、千堂、中川愁一くん、そしてなぜが白鷹睦月。


「ちょっとちょっと君達、クリスマスはカップルに遠慮してくれてもいいんじゃないかな。なんです、この小学生みたいな集いは」

「ぶぁかか。お前と夏生を二人きりにさせてやる訳無いだろ。全力で邪魔するし」


 下品にピザに食いつきながら、上品な顔のお坊ちゃまは、私にも食いかかります。


「何を、このガキンチョめ!」

「甘川、お前は帰ってくれてもいいよ。女の子は瞳ちゃんさえいればオッケーだから」


 その噂の瞳ちゃんは、ミニスカサンタの格好をして可愛いのです。赤いベロアのチューブトップワンピに胸と裾に白いファーがあしらってあって、綺麗な足には黒いニーハイソックス。これまたファーが穿き口に付いています。斜めに被った三角帽子からは、栗色の長い髪がふわりと垂れます。

 ……この衣装、葉月さん作。いつの間にやら……。

 姫草邸は、アメリカンに室内の温度は暖房でほかほかなので、みんな薄着です。


「葉月さんの作った『服』、可愛いですね!」

「……ちょっと、アタシ自体は?」


 これだけ可愛く着こなしてもらえれば、製作者冥利につきるってもんでしょう。……絶対言ってやらんけどな!


「それより千堂、貴方こそこの忙しい時期にバイトはいいんですか!?」

「だーって今日の朝まで働いたんだぜぇ。今夜は休み」


 こんな感じで、方々で絡み酒が発生しつつあります。千堂にいつも絡まれるのは、中川くんなのでした。いちおう、彼は高校生ですからね、慎んでください。


「よう、中川、久しぶりだな。酒飲め、酒」

「か、勘弁してくださいよ」


 さらに、今回からは白鷹睦月までが加わります。


「お前、葉月の恋人なんだって? 俺、白鷹睦月。高校ドコ? 大学何処行く?」

「白鷹兄、中川とデキてんのかよ!」


 千堂の驚きも今更です。

 意気投合してしまった高校生たちは、なんだか和気藹々です。


「宵浜高校です。大学は、慶浜の法で受けようかと、」

「上等。なぁ、俺と一緒に白鷹兄弟の尻拭いしない? つまり、雇ってもらうの」


 そんなてんでばらばらな私達を、夏生ちゃんは王子様の微笑で見ているのです。今は、さびしそうなんかじゃありません。

 そうそう、クリスマスケーキは夏生ちゃんのアルバイト先で注文しました。真っ白なブッシュ・ド・ノエルです。飴細工が繊細で、芸術品のようです。雪化粧が施されたその丸太は、キンと静謐な感じがします。ところが、切り分けてみると、濃いチョコレート色のスポンジ生地が渦巻き、間に通うは栗入りのクリームだったのです。よきかな。





 白鷹兄弟は、今日も実家に帰るので、夜も10時には姫草邸を後にします。

 夏生ちゃんにプレゼントを持ってきたのですが、でも、お迎えが来ていることでしょう、後で渡すとしましょう。みんなで手を振って見送りしました。

 ところが。ドアが閉まった刹那、瞳ちゃんと千堂が、私と中川くんに詰め寄りました。


「ぼけッとしてんな!」

「今すぐ追いかけなさい!」


 呆けた顔をする私と中川くんを、千堂はぐいと玄関へ押し出しました。


「少しでも二人きりで話して来いって言ってんだよ!」

 

 貴方がそんな気を配ってくれるとは。正直、驚きで声が出ませんでした。

 しかし、私と中川くんは心のうちで千堂に感謝をし、目を合わせ頷くと、二人の後を追いかけました。エレベーターを二人並んで待っていると、彼も手にプレゼントを持っていることに気が付きました。


「これ、葉月さんにです。高いのはイヤだって言うし、僕、葉月さんみたいにセンス無いから、選ぶのに困っちゃいました」

「奇遇ですね。僕も同じ事を言われたので、消費できるものにしました」

「またまた奇遇ですね。僕もです。紅茶葉にしました」

「僕も、珈琲豆にしましたよ」


 私達は、くすくすとお互いの恋人のことを思って笑いました。

 一方、瞳ちゃんたちは、まったりと私達の初々しさについて語っていたそうな。雰囲気は親世代ですね。白鷹睦月、彼だけは不機嫌だったことでしょう。というか、君はさっさと帰れ。

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