最終話
街の中央広場で逮捕されてから数日。
俺は魔法が使えない特殊な留置場の中に入れられている。
そんな中、俺は薄暗い留置場の中で絶望と後悔に苛まれていた。
今にして本当に思う。
どうして、あんな女に騙されて本当に大切な人を捨ててしまったのだろう。
アリス。
心の底から愛していたアリス。
魔法で心を奪われていたとはいえ、こんなことになったのは俺にも責任がある。
この留置場に入れられたあと、俺は〈魅了〉の魔法について思い出したのだ。
淫魔などの魔族が使う〈魅了〉の魔法は強力だが、人間の使う〈魅了〉の魔法には条件がある。
それは〈魅了〉の魔法を掛けられた人間に恋人がいた場合、少しでも別の人間に対する浮気心があれば掛けられてしまうこと。
つまり、俺にはアリスを本気で愛している心がなかったのだ。
くそっくそっくそっくそっくそっくそっくそっ――――ッ!
俺は硬く握った拳で床を何度も殴りつけた。
などと後悔しても、もう遅い。
しかし、それでも後悔の波が怒涛のように押し寄せてくる。
同時にアリスの顔が浮かんだ。
せめてもう一度、アリスの顔が見たい。
それが無理でも声が聞きたい。
声すらも聞けないのなら、せめてアリスの書いた文字が読みたい。
何でもいい。
とにかく、今はアリスと何でもいいから触れ合いたかった。
と、俺が両目に涙を浮かばせたときだ。
「おい、テリー・ダマスカス。お前に手紙だぞ」
いつの間にか、看守が鉄格子の前に立っていた。
その手には1通の手紙を持っている。
「て、手紙? 誰から?」
「そこまでは知らん。だが、女だったらしいぞ」
まさか、と俺は思った!
俺は震えた手で看守から手紙を受け取った。
間違いない、手紙をくれたのはアリスだ!
俺のことを聞きつけて、こうして手紙をくれたんだ!
きっと留置所から出たら色々と話し合いたい、とかの内容なんだ!
ああ、アリス。
ごめんよ、アリス。
いきなり許して貰えるとは思っていないが、ここから出たら2人でゆっくりと話し合おう。
俺は震える手で中身を見た。
しかし、つい数秒前までの俺の期待は一瞬で打ち砕かれた。
手紙の送り主はアリスじゃなかったのだ。
――――――――――――――――――――――――――――――
あなたと一緒にいた時間は、私の人生で大いに無駄でした
身体を許した分の慰謝料を請求したいところですがやめておきます
あなたは本当に冒険者を解雇されることになったらしいですよ
私の新たな恋人になったギルド・マスターが言っていました
なので、あなたはそこから出たら無職どころか犯罪者として見られます
くれぐれも、街中で私に会っても話しかけないでくださいね
追伸、アリスさんも冒険者を辞めて別の街へ行ったそうですよ
マイア・クローバー
――――――――――――――――――――――――――――――
手紙を読み終わったとき、俺の心の中にあった糸がぷつりと切れた。
「あははははははははははははははは」
同時に俺は腹の底から笑った。
俺は何て馬鹿なんだ。
あんなひどい一方的な別れ方をしてしまったアリスが、俺に手紙なんてくれるはずもなかったのに。
気づいても、もう遅い。
絶望しても、もう遅い。
懺悔しても、もう遅い。
そしてどれだけ後悔しても、もう遅すぎる。
これも因果応報なんだ。
俺はぐしゃりと手紙を握り潰すと、両目から溢れている涙を拭いもせずに、喉が枯れるほど笑った。
いつまでもいつまでもいつまでも――。
~完~
新作のハイファンタジーの作品を始めました。
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