プロローグ
初めて恋愛作品を書いてみました。
全5話構成で今日中に全部投稿します。
あたたかい目で読んでいただければ幸いです。
とある冒険者ギルドの個室にて――。
「アリス、悪いが今日で君はこのパーティーから抜けて貰う。正直なところ、君の実力では今後も俺たちのパーティーでやっていくことは難しいだろう。このままだと君は確実に大怪我するか、最悪だと死に至るかもしれない」
俺は他のパーティー仲間がいる前で、テーブルを挟んだ対面にいる茶髪の少女――アリス・マーガレットに意を決して告げた。
「テリー、理由を聞かせて貰ってもいい?」
彼女は怒るどころか、どこか寂し気な表情で尋ねてくる。
ズキン、と俺の心臓に痛みが走った。
「理由は君にも分かるだろう? ようやく俺たち【飛竜の牙】は、国から勇者パーティー候補として認められるまでになったんだ。しかし、君はずっとレベルが上がらないまま……しかもこの国では珍しい魔法が使えない剣士だ。それでも君は君なりに一生懸命にパーティーに尽くしてくれた。それはリーダーとして本当に感謝している。だが――」
俺は早くこの話を終わらせようと早口でまくし立てる。
そうしないとアリスの悲しそうな顔に耐えられない。
「やはり、これ以上は無理だ。これから先はAランクの魔物討伐も視野に入れている。Aランクの冒険者となった俺たち以外で、君だけは未だにCランクのままだ……残念だがいくら幼馴染とはいえ、君をこれ以上危険な目に遭わせられない」
本心だった。
けれど本音ではなかった。
やがてアリスは、俺と俺の隣にいる僧侶のマイアを見て笑みを浮かべた。
しかし、その両目には薄っすらと涙がにじんでいる。
「……うん、分かったよ。そうだよね。これ以上、足手まといの私がいたら皆の迷惑だもん。ごめんね、テリー。今までずっと嫌だったんだよね?」
ズキン、とまたしても俺の心臓に鋭い痛みが走った。
本当は違う。
魔法が使えないやレベルが上がらないなんてどうでもいい。
ましてや嫌っていたなど微塵もない。
しかし、だからこそこれ以上はアリスをパーティーに置いておくわけにはいかないのだ。
「すまない、アリス。もちろん、君の新たな転職先の手伝いはさせて貰う。退職金もそれ相応の額は出す。だから……」
「ううん、いいよ。無理しないで、テリー」
アリスは立ち上がると、俺とマイアを見て「お幸せにね」と告げて去っていく。
そんなアリスの声色には、まったく憎しみなどの感情はなかった。
アリスはすべてを悟った上で、俺たちのことを本当に祝福して去ったのだ。
正直に言おう。
このときの俺はどうかしていた。
本当にどうかしていた。
気立ても良く、剣術もそれなりに出来て、しかもいつも俺のことを最優先に考えてくれたアリス。
俺からの告白を顔を赤らめて了承してくれたアリス。
だが、どれだけ悔いても時間は戻せない。
もう、俺の前にアリスはいないからだ。
当然だよな。
俺の身勝手で馬鹿な一時の気の迷いで、自分からアリスという恋人だった女性を捨てたのだから。
だからこそ、俺はこのときの俺に言いたい。
お前は何て馬鹿なことをしたんだ――。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
読んでみて面白いと思われた方、是非とも広告の下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にさせる評価ボタンがありますので、ブックマークの登録とともにこの作品への応援などをよろしくお願いいたします。