9 フボル家 長女 リーナ
「お兄様。私、馬に乗りたいです。」
お兄様の体から手を離して、笑顔でそう言った。
「リーナ。」
さすがのお兄様も二回目となるともう呆れてしまっているわ。
今回はダメかしら?いえ。可能性を信じるのよ。リーナ!
「わかった。でも、念の為父さんにも伝えておくよ。」
え?いいの?まじで?
「本当ですか?やったーー!!ありがとうございます!アーノルトお兄様大好き!!」
想像と反対のことを言われて少し驚いたが、まさか許してくれるなんて。。。やった!
「おい。アーノルト。顔がにやけてるぞ。」
誰かしら?アーノルトお兄様やルークお兄様、レアムお兄様よりも低い声。
声のする方へ振り向くと。。。
「馬に乗るのはいいけど。教えるのは俺じゃないよ?」
少しだけ意地悪な笑みを浮かべながらアーノルトお兄様が言った。
「え?ちょっと待って。オリヴァー様?え?それに、え?」
「はあ。リーナが困ってるだろ?いきなり出てくるなよ。」
少し呆れ気味にアーノルトお兄様が言った。
「すまん。すまん。あ!ルーク!レアム!久しぶり!」
な、なんでオリヴァー様がここにいるの?
え?ちょっと待って。なんでカロレイド様やシロル様まで。。。
は?え?ちょっ?
彼らはお兄様たちの友達。
そして、我らフボル家含む四大貴族の御子息達だ。。。
「リーナちゃんも久しぶり!っていうかあんまり話したことないよね?」
オリヴァー様が様子を伺うようにして聞いてくる。
「は、はい。オリヴァー様お久しぶりです。」
いきなり顔を近づけるなんて反則すぎる!!
そして、カロレイド様やシロル様などに囲まれてしまって今にも意識が飛びそうだ。。。
てか、私の近くにいる人なんでこんなに美形なのよ〜!!!!
心臓に悪すぎるわ!ただでさえ、お兄様達だけでもダメなのに!
そして、この六人が仲良く喋り始めるともう眩しすぎてみてられないわ!
「リーナちゃん?大丈夫?」
カロレイド様が顔を覗き込むようにして心配そうに聞いてくる。
「全然大丈夫じゃないですわ。皆さんが揃ってしまうと明るすぎてみられませんわ。。。」
あ。心の声が漏れて。。。
顔を真っ赤かにしながらそう答えた。
「なにそれ?確かにそうかもしれないけれど、リーナちゃんも充分美人だよ?」
「あ、ありがとうございます。。。」
てか、認めるんだ。。。
ふふっとからかうようにしてカロレイド様が顔を離す。
「お、お兄様あ。」
もう心臓が死ぬので助けを求めるようにして、お兄様のシャツを軽く引っ張る。
それに気づいたのか、アーノルトお兄様が口を開いた。
「お前達。そろそろからかうのはやめろ?リーナが怖がってるじゃないか。」
「ごめんな。別にそう言うつもりはなかったんだけどな〜。」
呑気そうにオリヴァー様が言う。
「そういえば、さっきリーナちゃんおじさんと戦ってたよね?」
と、シロル様が初めて口を開いた。
「あ、はい。」
おじさんって私のお父様のことよね。
「あれ、すごかったよ〜俺たち、目を丸くしてみてたからな。」
少しだけ、笑いながらオリヴァー様が言う。
「え?ちょっと待ってください。いつからみてたんですか?」
「えっと、多分最初からだと思う?」
意地悪そうな笑みを浮かべてシロル様が答えた。
「本当か?さすがに俺も気づかなかったよ。」
と、レアムお兄様。
う、うそでしょ。確かに完璧にできたと思ってるけど誰かに見られるのはちょっと。。。
「それで?俺たちになにをして欲しいの?」
オリヴァー様が興味ありげに聞いてくる。
「話が早くて助かる。リーナが馬に乗りたいらしいんだ。」
と、アーノルトお兄様が答える。
「馬か。剣の次に馬か。。。まるで男の子のようだな。」
あ、オリヴァー様女の子にむかってそう言うこと言わない方が宜しいと思うのですが。。。
「おい。オリヴァー。リーナちゃんは女の子だぞ?」
と、シロル様。
「あれ?ごめん。女の子に向かって言う言葉ではなかったな。すまん。」
「別に大丈夫ですわ。私は気にしてないので!」
これは本当よ!全く気にしていないわ。むしろ嬉しい!男の子=かっこいいですからね!
「そうか、それならよかった。でも、なんで俺たちに頼むんだ?」
「それが、一緒にやりたいけど、俺たちはこれから入学手続きに行かなきゃいけないんだよ。。。」
ものすごく残念そうにお兄様が言った。
入学手続き?そっか、お兄様たちは12歳だから来年の9月からもう学校が始まるのか。
学校は確か13歳から16歳までの三年間よね?まあ。よくわからないわ。
「あー。あれか。めんどくさいから頑張れよ?」
「ああ。頑張る。それで、リーナを頼んだぞ。」
え?それって、私だけ置いてけぼりってこと?それは、少しハードルが。。。
「もう行くのか?まあ。いい。」
口角を少しあげ、オリヴァー様が悪魔のような微笑みを浮かべた。
「その分きちんと代償を払ってもらうけどね?」
だ、代償?生贄とか。。。?ひぃ。こわっ。
「そこまで怖がる必要はない。からっかっているだけだ。」
と、シロル様が言う。
「だ、代償とは。。。?」
ごくりと唾を飲み込みながらオリヴァー様に聞く。
「んー。なんでもいいよ?あ!得意なことってある?」
軽いわね。。。さっきの緊張を返して欲しいわ。
「えっと、趣味は絵を描くことと歌を歌うことです。」
後者の方は言いたくなかったんだけど。かっこいいレディは何事にも自信を持つのよ。
「ふ〜ん。絵を描くことが好きな人なんてあまりみたことがないから楽しみにしてるね?」
「はい。期待に応えられるように頑張ります。」
この世界は令嬢が絵を描くなんてことはあまりないのかしら?まあ。そっちの方がいいし別にいいわ。
「歌ってなんの歌が歌えるの?というか、まずどんな歌があるの?」
不思議そうにカロレイド様が聞いてきた。
この世界の貴族は歌もないのかしら?なんか、そう言うのは庶民のものだと聞いたことはあるような。。。
「私の一番好きな曲です。どんな歌かはお楽しみです。」
「ふ〜ん。んじゃ。期待してるよ?」
「は、はい。」
大したものじゃないから期待しないでほしいけれど、かっこいいレディになるためには頑張るしかないわ。
あと、ジュリが言ってたのだけれど前世の英語はこの世界の外国語らしい。
前世では、私、洋楽が好きだったんだけれどそれでいいよね?まず、それしか歌えないし。それしか聞いてなかったし。
四大貴族の男よ?それくらいできてないとダメよ。多分。
それに、お兄様達が家庭教師の人と英語で喋ってることが確かあったわ。
なんとかなるわよ。
私、英語だけは話せるのよね。英才教育受けてたからな。前世。
てか、あんまり話したことのない人に向かって歌を歌うのはかなり恥ずかしい気がするのは気のせいかしら?
これが、まさかの代償ってやつ。。?
そしたら、オリヴァー様かなり腹黒いお方なのでは。。。?
そうして、私は緊張しながらもオリヴァー様やカロレイド様、シロル様に馬の乗り方を教えられながらお兄様達の帰りを待っていたのだった。
ブックマーク、評価本当にありがとうございます。
感謝しかないです!!