6 かっこよき私
「おはようございます!お父様、そしてお兄様。」
「おはよう。」
お父様とお兄様たちが優しく返してくれる。
私って本当に恵まれているわよね。
お母様はおばあさまの具合が悪いから今はいないのだけれど、前世に比べれば良い方達ばかりだわ。
本当に私って幸せ者ね。
「リーナ。お前が1ヶ月続けられたことはアーノルトから聞いている。」
「しかし。続けられたとしても努力しているかどうかはわからない。」
「ええ。ごもっともですわ。」
「だから、今からお前に試練を与える。」
「なんでしょう?」
ゴクリ
どんな試練なのかしら。
「私と戦うのだ。」
「え?」
少しばかり驚いてしまったが、これはいいチャンスだ。
私のかっこよさを見せつけるのに。
「そして、私から一本取るのだ。」
「一本?」
「首を切る直前で止めるのだ。」
これは、確かにいいチャンスだけどまさか対人戦をお父様がやらせるなんて思いもしなかったわ。
いつも、私に甘いお父様だもの。
「父さん!いくらなんでもそれは少しきついと思うんだけど。」
心配そうにアーノルトお兄様がいった。
「俺もそう思う。」
と、ルークお兄様とレアムお兄様も続いた。
しかし、大丈夫よ。お兄様。
「アーノルトお兄様、ルークお兄様、レアムお兄様。心配してくださってありがとう。」
「でも大丈夫ですわ。お父様。」
「それ、私。のりますわ!」
私が言った瞬間お父様がニヤリと笑った。
しかし、お兄様たちはまだ心配している様子。
それに気づいてないようかのようにお父様は声を上げた。
「よく言った。では、早速始めよう。」
念の為、先に準備運動しておいてよかったわ。
というか、私。お父様が運動している姿みたことがないのだけれど。
まあ関係ないわ。私はかっこいいところを見せるだけだもの。
構えは確かこうよね。
お兄様たちの構えを思い出しながら、やってみた。
「一発で決めるわ。」
誰にも聞こえないような小声でそう呟いた。
そして、ルークお兄様が初めの合図を伝えるのと同時にお父様の体が動く。
お父様も一発で決めようとしているのかしら。
お父様の左手が動く。
そして、それを避けるために右側に動く。
すると、お父様の顔がニヤリと笑った。
横を見るとお父様の右手が動いた。
しまった!これはフェイントだ。
こ、これはきついわ。
しかし、お父様の右手が私の首に近づくのと同時に私の姿はお父様の視界から消える。
そして、私の顔には自然と笑みがこぼれる。
お父様が私がいなくなって驚くと途端にルークお兄様が目を丸くする。
そして、私は優雅に体制をただして下から剣をお父様の首に当たる直前で止める。
ルークお兄様が驚きながらも口を開く。
「勝者!リーナ!」
曲げていた足をまっすぐに直して、まだ驚いているお父様の真正面に立つ。
そして笑いながら私は言った。
「これで、条件達成ですね。お父様!」